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・なぜ東大が30%の節電に成功したのか?
前提条件として、地震の一年前に節電の実証プロジェクトがスタートしていたことと、東大の構成員がボトムアップで節電に取り組める資質(プライドを持って節電に取り組む。あとそれなりに優秀?)を持っていたことがまず重要であろう。
手法面から見ると、オープン化(見せる化)とクラウドが大きく取り上げられている。
特に前者は筆者の考え方の根底になっており、(節電に留まらない文脈で)その重要性が強く主張されている。
オープン化によって節電が達成できた理由は「自律性」に求められる。
電力の使用状況を構成員に示すことで、構成員が自律的に節電に取り組む(構成員への委託)。
節電の手法については下位レベルに任せたほうが効率的な場合も多い。
・この本からわからないこと
やはり東大だからできたのではないか?という疑念が拭えない。
冒頭には「東大でもできた」と書かれているが、どう考えても上述の前提条件が効いている気がする。
自宅でのスマートメータ導入について書かれているが、自律的な節電のメカニズムをプライドに求めた(p129)こととの対応が見えない。
もう一つ決定的にわからないのは節電のコストである。
ポジティブ・スパイラルの節電は素晴らしいのかもしれないが、結局コストとの兼ね合いではないか。
システム導入のコストについて殆ど触れられていないのは片手落ちの印象を受けた。
・その他
発明は必要の母という話はなかなか興味深かった。
生み出されたシステムは他の分野に転用できるポテンシャルがあり、持続的なイノベーションを導きうる(エクスペリエンス・デザイン)。
ユーザーイノベーションの対になる概念として位置づけられるかもしれない。
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東日本大震災の後の節電ブーム(あえてこう書こう)のときに、東大の電力消費がものすごいということを聞き驚くと同時に納得しました。この本によると、年間の電気料金は50億円にのぼると。これを削減し、削減分を研究費にあてれば幸せだ、という本。勘違いしていましたが、震災後に急遽30%削った、という本ではなくて、すでに進めてきた活動の成果として、30%削減ができた、という話です。キーワードは見せる化とクラウド化、そして節電を新たな産業にするという意欲、そして強力でスピードのあるリーダーシップ。
〇〇だから一律で××だ、というような日本型のスタイルをとっていないことに、ちょっと驚いた。節電そのもの技術的な話よりも、ファシリテートの本といった趣です。
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データの可視化こそが、自発的な節約を促すということの実証。ダイエットや家計簿も同じだな。
一つだけ気になったのが、クラウドでサーバを外部に出した場合、東大キャンパスとしては節電になるけど、関東圏全体では同じ(厳密に言うと効率が上がった分は節電だが)なので、そこを100%カウントしているとしたら、やや過大評価なのでは、という点。