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上巻はこれまでの石油を巡る世界の歴史と米国のシェールガス革命。
あと電気の歴史が少し。
エネルギーが豊富に採掘できる資源国はそれを利用して莫大な経済的利益を上げることが可能だが、それ以外の産業や企業の発展を阻害し人々はそこから生み出される富に群がる。それはエネルギー価格が下落し、これまでの分配が不可能となっても続くため、政府の財政を圧迫する。
かつて起こった戦争の原因もほとんどがエネルギー問題に絡んだものである。
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2000年代に投機熱など複雑な要因が重なり原油価格が高騰したが、それでも政府が価格統制をおこなうよりはずっとましであることを、歴史は証明している(そして、我々は歴史から学ばない)。
中国は中央アジアなどの資源開発に多額の資金を投入しているが、中国に直接運ばれる石油はごく一部であり、その他は国際市場に投入されている。中国のような巨大経済国家が国際的な資源開発に関わるのは、むしろ自然である。
グローバル経済に組みこまれることにより、政治・経済の安定が(結果的に)もたらされる。こうした意味で、イランは現在のエネルギー情勢において、最大の危険要因である(彼らがホルムズ海峡を封鎖できないにしても)。
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池田信夫氏がエネルギー問題の入門書としてはベストと書いていたので購入してみた。
なるほど、これは入門書だ。エネルギー問題を考える上でまず知って置かなければならないことが書かれている。
エネルギー資源、就中化石燃料によって世界の国々がいかに多くの紛争を引き起こしてきたかがよくわかる。
軽々しく脱原発なんて言えなくなるだろう。
資源のない国日本の国民として興味深く読んだのは、石油のある国が決して国家として良い方向に進んでいるわけではないという事実についての記述だ。
「石油国家」という言葉で揶揄されているが、石油が出たことで国も国民も自助努力を忘れてしまう。
財政規律はなくなり、技術革新への意欲は失われ、産業は育たず、国はますます石油に依存していく。
石油に溺れてしまうわけだ。
「ある」ことにも「ない」ことにもそれぞれ良い点、悪い点があって、どちらか一方にばかり目が行っていると気づいた時には抜け出せない底なし沼に足を取られてしまっているなんてことになりかねない。
コインには表だけでなく裏もある。表だけや裏だけ手に入れることなど出来やしないということを肝に銘じなきゃいかんなぁと、そんなことを考えさせられた。
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作者はエネルギーに関する世界的な権威のダニエル・ヤーギン
序文は同時期に世界のエネルギー事情に大きく影響を与えた二つの出来事から始まる。福島原発とアラブの春だ。
石油をはじめとするエネルギーに関わる過去の出来事を網羅し、最後には未来への提言がされている。
第一部 石油の新世界
ソ連崩壊後カスピ海周辺の新国家は石油だけでなくパイプラインそのものが政治や安全保障に直結する事態を迎えた。
産出国アゼルバイジャンからすると例えばロシアルートだけにすると石油が供給できるかどうかをロシアに握られてしまう。供給を受ける側からも同様だ。初期はロシアルートに加えグルジア経由の黒海ルートが建設されたが黒海はボスポラス海峡と言う地理的な制約が有るため、メインルートはトルコから地中海に抜けるルートが採択された。ロシアの過度の影響を避け、又一番安いイランルートはそもそも中東依存の低下と言う条件に合わないため比較的コストが高いルートが安全保障上の理由で決められた。
2006年にはベネズエラの算出引き締め、ナイジェリアの民族紛争、アメリカの石油基地を破壊したカトリーナとリタ、そしてイラク戦争により供給の安定性が揺すぶられ、一方で中国、インドをはじめとする新興国の需要の拡大が続く。
これらの前提に投資先を探す豊富な資金が流れ込み暴騰したのが2008年だがリーマンショック後も高値が続いている。
第二部 供給の安全保障
石油は無くなるのかという問いに対してはヤーギンは現在供給量は増大を続けており、しばらくは高原状態が続くとして明確に否定している。イノベーションにより経済合理性を伴った石油の産出の増加を見込んでいる。例えば深海油田の探索はメキシコ湾事故や環境問題は有る物の開発が進んでいる。
シェールガス革命などもあり共有の多様化は天然ガスコストの引き下げに働く。
第三部 電気時代
エジソンによる交流電流の実用化からはじまり原子力の勃興まで。
この章が書かれていたのは福島事故以前らしくこの影響は述べられていない。と言う所で下巻に続く・・・
エネルギーにまつわる一般常識はほぼ網羅されていると言うのが上巻の感想。
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「エネルギー」を知るための入門書として最適といえる。
いま、日本の「エネルギー」に対する議論は、迷走しているが、
この原因は、何より「エネルギー」の歴史や現状を認識していない輩が、自分の見識のみにおいて、意見を述べるからだと思う。
「エネルギー」について、意見を述べるのであれば、最低限、このような本を熟読し、熟考してほしい。
本書を読めば、産油国の血で血を洗う紛争に手を突っ込まなければ、輸入国は豊かな生活が送れないことが理解できる。それでも、なお、脱原発という人がいるなら、もう手の施しようがない平和ボケであろう。
「エネルギー」なくして、人の生活はありえない。命がけであることを改めに理解させてもらった。
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石油メジャー、各産油国の石油の歴史がよく分かる。
しかし長過ぎて情報量多過ぎて、一度じゃ頭に入らない。。今後思い出す必要がでてきたら教科書的に引っ張り出して読み直すんだろうな。。。
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現在のエネルギーシステムが、どのように構築されたのか。
100年以上に及ぶ歴史的エピソードを紡ぎ合わせながら、その全体像を描くことを試みる。
テーマは網羅的で、専門家としての自分にも有効。
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新聞などでもエネルギー関連についてよくコメントが求められる、エネルギーの大家が著したもの。「市場対国家」も著者。
もっと早く読もうと思っていたのだが、上下巻合わせて1000ページを超えており、年末まで持ち越してしまった。
上巻は、石油、供給の安全保障(非在来型、天然ガス含む)、電気について。エネルギーの切り口とした歴史の教科書として、これほどよくまとめられているものはおそらくないだろう。
下巻も期待したい。