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まさに正当派英国怪奇小説。『本邦初の文庫傑作選』と帯で謳っていますが偽りなし。収録作どれも素晴らしい。
面白い本には2パターンあって、ページをめくる手が止まらず徹夜してでも一気読みしてしまうモノと、もう一つは面白くて一気読みなんて勿体なくて、毎日少しずつ堪能しながらゆっくり味わいながら読むモノ。この本は明らかに後者のパターン。
1編1編の満足度が高くて、1日に2~3編も読めばもうお腹いっぱい。続きは明日、という嬉しい気分にさせてくれる短編集でした。
個人的お気に入りはどれも優劣つけがたいですが、あえて選ぶなら『ゴースト・ハント』、『“彼の者現れて後去るべし”』、『中心人物』。
魅力的な怪奇現象の提示からぐっと読者を掴んで話を盛り上げて行き、ラストでスパーンと決めてくれます。
英国怪奇小説、堪能させていただきました。
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タイトルから小野不由美さんの小説を彷彿したので、買ってしまった。
読了。
まさに「怪奇小説」。面白かった!
イギリスの地方にある陰鬱な館のイメージがリアルに感じられました。特に「ゴーストハント」のひたひたと忍び寄る恐怖が何ともいえず秀逸。
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「最後のゴースト・ストーリー作家」ウェイクフィールドによる、本邦初訳作品を含む傑作選。
恐怖の対象そのものを具体的に描写せず、クライマックスで惨劇なり悲劇なりが起ったところで唐突に終わるというパターンが多い。
初期の作品「赤い館」や表題作、「目隠し遊び」から晩年の「暗黒の場所」と、曰く付きの屋敷にまつわる怪異譚が多いのも特徴か。
これが後半期の作品になると、純粋な心霊恐怖譚からサイコ・ホラーに通じるような……語り手なり登場人物の異常心理や妄執が呼び起こす恐怖(と思しきもの)を描いた内容になっていくのも時代性なのかな、と。
詳しくはこちらに。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2012-09-09
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現代風のホラーとは一味違った恐怖が愉しめる短篇集。幽霊屋敷ものや、最後まで怪異の正体が判然としない作品が多いのも、古き良き英国風の幽霊譚という感じ。「ポーナル教授の見損じ」、「ゴースト・ハント」、「最後の一束」辺りがお気に入り。
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気づいたら10年積読していた……。後書を読むと短編のあちらこちらに著者の姿が写り込んでいるようで(編集者、牧師など)面白い。
「赤い館」などはゴシック・ホラーものだが、ホラーの枠に収まらない作品や現代的な筆致も見られる。「赤い館」、「チャレルの谷」が印象に残った。
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・H・R・ウェイクフィールド「ゴースト・ ハント」(創元推理文庫)はその名の通り、幽霊譚、怪談の短篇集である。この人は本場 英国の人で、「M・R・ジェイムズが事実上筆を断った一九二〇年代に颯爽と登場し、ゴースト・ストーリーの伝統を継承しつつ現代的な作風 で一世を風靡した作家で」(鈴木克昌「最後のゴースト・ストーリー作家」445頁)ある。1888年生まれ、1964年死去、ただし第二 次大戦後は発表の場に恵まれず、例のオーガスト・ダーレスが米国での発表の場を提供してくれてゐたとか。正統派怪談の書き手であつたがゆ ゑに時代遅れとでも思はれたのであらうか。ウェイクフィールド自身、時代の嗜好と怪談の限界を知つてをり、晩年は「世捨て人同然の暮らし ぶりだったと」(同前452頁)か。正に「最後のゴースト・ストーリー作家」であつた。わざわざこんなことを書いたのは、本書収録の18 編からウェイクフィールドが正統派の怪談の書き手であると如実に知れるからである。極端なことを言へば、この人は英国怪談黄金期の文壇に 君臨したと言つても通りさうである。それほど見事な書き手であつた。ダーレスがウェイクフィールドに発表の場を与へ、アーカムハウスから その作品集を出版したのも、こんな事情からに違ひない。ちなみに、本書収録作の大半は既訳である。本書のための新訳は6篇、3分の1は新 訳であつた。ただし初訳かどうかは記してない。
・巻頭の「赤い館」はウェイクフィールドの実体験に基づく作品である(同前455頁)らしい。主人公が赤い館に住むやうになつて知つた不 快感、恐怖感と、そこでの何人もの自殺者の話である。抑へた筆致でそれを淡々と述べる。主人公自らのから始めて、妻、息子、そして更には 隣人の話に及ぶ。奇を衒はない。正に正統的な怪談である。これだけでもその力量が知れるといふものである。次の「ボーナル教授の見損じ」 はライバルをやつつけたがといふ幽霊譚である。教授とライバルはとにかく頭が良かつた。学問だけでなくチェスでもそれは同様であつた。た だし教授は常にライバルの後塵を拝してゐた。そこでライバルを殺してしまつたのである。それは完全犯罪と見えたが、そこに幽霊が登場して 教授は破滅する……とまあ、ある意味ではごくありふれた幽霊譚である。しかしそこはウェイクフィールド、人物造形がしつかりしてゐるから か、教授の手記で語られる物語は型通りの恐怖を醸していく。表題作「ゴースト・ハント」は幽霊屋敷探索のラジオ実況放送である。かういふ 発想は古い人にはできない。テレビでないから古いとは言へるが、怪談黄金期からすればラジオは十分に新しい。現在ならばテレビでの LiveとかUStream中継とかになるであらう物語である。それゆゑにか、いささか軽い。語弊はあらうが、滑稽味の勝つた幽霊譚と言へよう。有名な ゴーストハンターとその実況中継者がその家(の幽霊)に殺され捕らへられるといふだけの話である。だから、初めはのんびりしてゐる。それ が進むにつれて徐々に切迫感を増し……これは手記ではなくLiveである。そのあたりが違ふ。「湿ったシーツ」は幽霊による復讐譚であ る。殺された男が殺された方法で殺し返す、それだけの話である。最初から先が見えてゐるやうな話である。このやうに一つ一つ 書いていけば切りがない。いかにもそれらしい話が並んでゐる。それにもかかはらず、かういふ古き良き怪談の書き手たるウェイクフィールド にも怪談は「滅びゆく芸術」(同前456頁)であつた。科学と相容れないと考へたらしい。現代人である。「最後のゴースト・ストーリー作 家」らしいと言へよう。
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ラジオアナウンサーが喋り続け、正気から狂気に移行する様が格別で、思わず朗読したくなる・・・というワタクシゴトはどうでもいいけど、ホントにどこかでドラマ化してくれませんか。激希望です。
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H. R. Wakefieldの怪奇小説の短篇集。"ゴースト・ハント"や"赤い館"など幽霊屋敷にまつわる話が多かったです。作品は少し古くさい感じがありますが、それでもゾクゾクきました。怪奇の内容は、具体的な内容が書かれておらず、読者の想像に委ねている部分があり、最近の怪奇小説やホラー小説になれていると面白みが感じられないかもしれません。ただ、ゴシックの雰囲気はかなり良いです。これはどう頑張っても真似できないものです。いい意味においても悪い意味においても、古き良き英国の雰囲気を伝えている作品だと思います。
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怪奇小説、というモノにはお国柄が現れるらしい。
ざっくり分類して幽霊・妖怪・黒魔術。
中国であれば聊斎志異。
怪奇小説と括っていいのか分かりませんが、アメリカならクトゥルフ神話。
日本だと四谷怪談とか真景累ヶ淵などでしょうか。
もちろん、全部が全部そうというわけでもないのですけれど。
で、このゴースト・ハント。
怪奇小説全18篇を収めた短編小説集なのですが、概ね『館に潜む悪意あるモノ』や『死者の報復』が基本的なパターンか。
流石に名手と記されているだけあって、何れも良質な怪談話でした。
個人的には『ケルン』『ゴースト・ハント』『目隠し遊び』『最初の一束』『悲哀の湖』が面白いと思いましたね。
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小野不由美さんの同名小説のようなものをイメージしていただけに、短編だったことに驚きました。通販は便利だけれど、大切なところで情報が足らなくていけないですね。
それはさておき、怪奇小説としては王道です。
館ものなんかはとくに、昨今では使い古されたオチが多く少々もの足りない。ケルンのような出先での伝承なんかは、何が起こったのか読者は情報が少なく想像するしかないのでモヤモヤが残ります。
ハッキリと表現された物が好きなので一編が十数ページではモヤモヤとしたものが残ります。
そういったものが好きな人には向くかもしれないですが、私には不向きでした。
しかしながら、このモヤモヤ感こそが怪奇小説に必要な要素だと思うのです。まさに名作、傑作。英国でも忘れ去れた名手の作品はじっとり暑苦しい夏の夜、寝る前に一編ずつ読んでいきたい。
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怪談短編集。どれも陰湿でじわじわとした恐怖を感じられる作品ばかり。たぶん、一気に読むのはかなり厳しいものがあるかも。少しずつ夜更けに読むのがお勧め?
お気に入りは「最初の一束」。なんとなく想像がつくだけに、さらに嫌さを感じさせられる一作。
「目隠し遊び」もいいなあ。非常にシンプルで短い作品。何が起こったのかもはっきりと分からないだけに何かと怖い。そしてラント氏の返答がまた……!
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再読。というか文庫本版を出た時に買っておいたのだけれど読んでいなかった。怖いよー怖いよー。「赤い館」ばりの怖いホラーって、あまり他に思い浮かばない。かつ、文章が流れるように美しく、稚拙な文章で現実に戻されることもないため、ドップリ。
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ホラーというより、「怪奇小説」と言った方がしっくりくる、一昔前の王道を行く短編集。セリフや描写が、原題の読み手からすると、まわりくどかったりするけれども、それも魅力のひとつ。全体として、行ってはならぬ場所へ足を踏み入れてしまった者の恐怖が大きなテーマになっている。
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図書館より
怪奇小説18作品を収録した短編集。
収録作品はどれも正当派のゴーストストーリー。ドストレートすぎてもはや書かれなくなった、という表現が正しいのかどうか分かりませんが、それだけゴシックな雰囲気が漂っています。
個人的な問題として文体との相性が良くなかったです…。展開はどれも面白そうだったのですが、海外の古い作品となるとどうしても、そういう問題が出てきてしまうなあ。
印象的なのは表題作の「ゴースト・ハント」ラジオのリポーターが幽霊屋敷のリポートを実況中継する短編。
これはリポーターが実況のようにずっとしゃべり続けているので、地の文がないので読みやすかったです。
そして徐々に一貫性がなくなり、人間性が変化していくリポーターの実況の恐ろしさたるや…。宮部みゆきさんがホラー系のアンソロジーで選んでいた作品なのですが、今回改めて読んでもやっぱり怖かったです。
「目隠し遊び」も数ページの掌編で読みやすく怖かったです。農夫が頑なに一つの言葉を繰り返すラストは、下手な恐怖シーンの描写よりよっぽど想像力が喚起され、怖くなります。
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なにか謂れのある場所に忠告を無視して行く→死亡のパターンが多い。それでも話としてはそれぞれ違う。ラジオ番組の話が独特だった。
"いやあ、これはみなさん、こんばんは。あなた方は教授をどうしちゃったんですか?教授が死んだことは知ってますよ。手についた血は教授のですが、見えますか。教授をどうしちゃったんですか?ちょっと場所を空けてください。みなさん、失礼、教授をどうしちゃったんですか?おや、わたしに歌って欲しいんですか、ラーララー。
スイッチを切れったら、くそやろう。
こりゃしかし何とも傑作じゃないですか、はっはっはっはっ、わたしはいま笑っていますね、みなさん。
ああ、これは教授であるはずがない。教授の髭は赤くなかった。あまりくっつかないでくれよ、くっつくなって言ってるだろう。いったいおれに何をさせたいんだ、川へ行かせたいんだろう、そうじゃないのか、はっはっは、いますぐかい?君たちも一緒にくるかい?だったらこいよ、川へ行こう。さあ、川へ行こう。"