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松井今朝子の「銀座開化おもかげ草子」シリーズの前段に当る作品。
同シリーズは2010年10月刊行の「西南の嵐」で遂に完結となってしまったのだが大好きなシリーズ。本書もそして「銀座開化おもかげ草子」シリーズも共に既に単行本では読んでいたのは記憶にあったものの再購入・再読。
読んでみると結構内容を忘れていたもので、予想以上に楽しめた作品だ。例えば、「銀座開化おもかげ草子」では口数こそ少ないもののなかなか爽やかな印象を与える宗一郎だが、デビューの舞台である本書では武士を捨てられそうで捨てられない旗本次男坊として屈折する随分とややこしい性格に描かれているのに今更ながら気が付いた。
その後の宗一郎の姿を知って読んでいるだけに先々の展開と比較hしながら読むという贅沢な味わいを堪能した。
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同じ作者の「銀座開化おもかげ草紙」という作品が気になっていたのですが、本作がその前日譚と知りまずはこちらから読む事に。幕末を題材にした小説というと激動の只中に飛び込む主人公を想像しがちですが、この作品では一歩引いた位置から時代の波に呑まれる若者達の姿がじっくりと描かれています。早々に武士であることを捨てた宗八郎にノンポリという古い言葉を思い浮かべてしまいました。私はその世代ではないのですが、学生運動の時代を経験された方にはどことなく懐かしさを感じる小説かもしれません。長いお話ですが、テンポ良く読めました。
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幕末から明治維新にかけて、二人の旗本の次男坊が時代の波に翻弄される物語。
ベースとしてその時代の歌舞伎を裏側から描くことにより、江戸の町の幕末の雰囲気を明らかにしながら、名も無い若者が、武士の存在価値がなくなっていくその時代を生き抜こうとする姿を、交互に描く。そして最後に二人が交差する。
自分が選んだ生き方を悔いる。青春はいつでも後悔ばかり。
この先に明るい未来があると良いのだが。
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旗本の次男坊、宗八郎は武士に嫌気がさして狂言作者の道に入り、どうしようもない兄を持つ源之助は幼なじみの許嫁を待たせつつ創設されたばかりの陸軍に志願する。時代に翻弄された、あどれさん(フランス語で若者の意)を描く。
読み始めたら止まらない。江戸から明治にかけて、刻々と変わっていく江戸と日本と市井の人々の生活。男は勝手で、それに振り回される女。貧乏武家なんて、当時こんな風になってたのかもな。哀しい。
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三部作「銀座開化おもかげ草紙」の前日譚。主人公がとても面倒くさい男である。時代の流れと、どの時代でも共通の若者の悩みがミックスしてあって共感できる作品。