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フランス人の著者が世界105か国1200人以上にインタビューして、大衆文化(マスカルチャー)とメディアについて地政学的にまとめた本。
世界を席巻するアメリカのメインストリーム文化を支えるのは、アメリカ国内における文化的序列のパラダイムシフトと強固な多様性の推進である。「高尚な芸術か低俗な大衆文化か」という文化的境界線が崩壊し「クールかスクエアか」へという序列へ移行した。大手映画会社とミニスタジオの関係や大手出版会社とインプリントの関係に見られるように、大手が資金を出し、多数の製作プロダクションが作品製作を競い合うことで、多様性を確保している。
一方、他の国では、国ごとの文化はそれぞれに豊かで、質も高く、国内では人気も高いのだけれど、国外には広まらない。その国の文化「以外」にはアメリカ文化しか存在せず選択肢はその二つだけという状態になっている。
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コンテンツは世界でどんなふうに商売に使われているか、という本。アメリカナイズだけの本ではなく、世界中のグローバルとローカルのうにうにと混ざったメディア戦争が書かれていて、ちょっと嫌気を覚えながらもまあまあ面白い。結論に、「沈みゆく国々?」として日本が少し紹介されている。 本文中の角川の社長の言葉の、「日本的であり続ける」ということが、まあ僕もそれでいいと思うのだけど、それがいわゆるガラパゴスといわれる所以か。そもそも、今度のクールジャパン担当大臣は、Jポップや漫画、アニメを技術とコンテンツの渾然一体、として理解し推進できるのか? なんだか世界に置いてけぼりをくって、悔しいやら嬉しいやら。
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フレデリック・マルテル『メインストリーム』岩波書店、読了。
テーマは世界の文化とメディアの地政学。メインストリームとは多様な消費文化を指すが、「みんなが好きな文化」のこと。エンターテイメントを巡りアメリカの覇権とそれに挑戦する新興勢力台頭の現状を世界各地の調査から報告する。
筆者の調査は世界30カ国5年に及ぶ。各国の急速な台頭にもかかわらずアメリカの文化支配は圧倒的だ。第一部はその経緯を明らかにする。それはハードとソフトの両面で世界に通用するモデルを提示し続け、発信元の現場を大切にするからである。
そして、アメリカ文化の源泉は「教育・人材育成、イノベーション、リスク負担、創造性、大胆さ」。一人一人の創作者の文化的な創造性を保証するところに強さがある。またアメリカの一人勝ちは、押しつけではなく状況対応に迅速であることも理由の一つである。
アメリカの強さが資金や物質的な豊かさにのみに見出すことこそ警戒すべきであろう。第二部は、「文化とメディアの世界戦争」。コンテンツをめぐる熾烈な「世界戦争」の現象が紹介。アラブや南米など各国の地域文化に基づく挑戦も興味深い。
著者はフランス人。ただし嫌米的な冷淡さは全くなくクールに現状をレポートするし、アメリカ的画一化との展望は退け、将来に対しても悲観的ではない。デジタル化とグロバール化は、文化の細分化と画一化の両方をもたらすからだ。
「国境の内側に引きこもり、単一のアイデンティティを堅持したところで自分たちの影響力を増すことなどできるはずがない」。確かにアメリカ文化は圧倒的だ。しかし唯一のメインストリームを創る国ではなくなるだろう、と結ぶ。文化産業の現状を詳細に概観する興味深い一冊、了。
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メインストリームはUSAの娯楽が世界標準となっていくということである。最初の部分は、USAのことなのでたいしたことはないが、後半からアラブとアフリカのことが書いてあり他の本ではないので注目に値する。オーストリアリアやニュージーランドには言及していないし、ベトナムやタイも見ていないので、一部分が不足であるが、中東とアフリカの一部がフランスから見たらということでは意味がある。イタリアとドイツが全くないのは、無関係ということであろうか。