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低線量汚染地域であるウクライナなどの取材の報告。チェルノブイリ原発事故から26年たっても決して終わってはいない。
甲状腺がんの発症も4年後から増え始め、今も頭打ちになってはいない。現実を知ること。この先、福島第一原発事故の影響が小さなものだと見過ごすことのほうが考えにくい事だが、「科学的に」因果関係が認められるとしても時間がかかる。きちんと知り、今後を考えていくことが大切と認識を新たにさせられる。
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この本を読むまで放射能汚染について声高に訴えている方々に対して、(何をヒステリックに)と冷やかに見ていましたが、26年後のチェルノブイリの゛今゛を知り背筋が寒くなりました 未来の地球に生きるすべての生命の為に、原発は無くさないといけません そのために先ずは自分が考えて行動してみたいと思います
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チェルノブイリ事故で、移住が必須でない程度の低線量汚染地域における影響についてのリポート。癌・白血病のような致死性の高い病気じゃなくたって、様々な身体的不調にずっと悩まされなければならないんだって、その人のQOLに多大な影響があるよなあ。特に成長期に体力がない→集中して勉強も運動も難しいために学習量が制限されることにより、その後の人生まで制約を受けることになるなんて。
国際機関が要求する科学「的」手順による疫学的データを採取するのは、チェルノブイリや福島のような大事故の時には実際不可能だろう。だからといって、そうした科学「的」手順によって証明できていないから存在しない、というのは極めて非科学的態度だし、ましてや、オソリティが認めていないから存在しない、というのは、非科学極まりない。そんな中、この本のように、ジャーナリズムの役割は極めて大きいだろう。
TV番組制作のための取材リポートということで、かなり慎重にな書きぶり。
それでも、福島事故に対する日本の対応が、あのソ連のそれよりヒドイことにならない(なりそうな気がしてならない)よう願う。
(本筋とは関係ないが、番組のチーフプロデューサー(著者2人とは別人)のあとがきで、自分の社(NHK)への謝辞を最大限の敬語(賜るとか)を使って真っ先に書くのってどうなんだろ。)
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チェルノブイリ事故から26年後の(26年間ともいうべきか)放射能汚染、低線量被曝による健康被害の実態。
東電原発事故によって汚染された福島の将来、2011年から4〜5年後、どうなっているのか。
この本に書かれているような健康被害が出ないことを祈るばかりであり、また、チェルノブイリ原発事故、東電原発事故の一刻も早い収束、そして、そこからの復興を願う。
何十年、何百年とかかるかもしれないが・・・。
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放射線や原発関係の中では後の方で出会った本。だが、この本は貴重な存在だと思う。先に「原発に無関心なあなたへ」という本を手にしていたが、実際身近になかなか関心を抱いてくれない人がいたら、この本を薦めてみたらいいのではないだろうか。これはETVで放送されたウクライナなどチェルノブイリで被曝した地域を取材した番組のスタッフによるものである。出版もNHK出版。ネットの情報に疎く、テレビというならNHKという人にはまさにうってつけではないか?
小さくて国力も弱いウクライナの人々、特に医師たちの勇気には感嘆するばかりである。その一方で、被災国であるにもかかわらず、電力不足による停電のため原発の建設を新たに決めた国もあることに愕然とした。ほとんどの原発を停止しているにもかかわらず、こんな深夜まで電気を使っても特に問題のない国に住んでいる事実を思い知る。
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チェルノブイリ事故26年後のウクライナの実情、現地に住む人々の声についての取材をまとめられている。
◇甲状腺ガンと放射能の因果関係
・被害を受け続けているのはウクライナ
・原発事故によって自国民に何が起こったのかを間近で見ているはず
なのに
・資金や国力等といった面で不利なため
・「科学的証明」に苦労している
→因果関係が国際的に認められない
◇疫学的手法:
ある病気が放射線の影響によるものだ
→「ある病気について、被曝線量が多い人ほど、病気発生の割合がはっきり高い」という関係が必要
国際機関や日本、欧米の専門家は「疫学的手法で立証できないものは事実ではない」という立場を採る。
しかし…
ウクライナ:自己に関する客観的なデータの入手が困難(ソ連政府のデータ隠蔽・改竄等)
◇その他
・子どもたちの体調が悪いために、一部の生徒への措置として試験や宿題を廃止している。倒れてしまうから。
→でも、国の将来に関わる…
・ウクライナは独立後に核兵器を放棄している(P146)。しかし、総エネルギーの50%を原子力発電に依存している現実。電力不足で病院の手術がストップしたことがあるから。
「発展途上国のウクライナならいざ知らず、日本なら原発依存から脱却できるのではないか」というのがウクライナの人たちの見方。しかし実際は…
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年間5ミリシーベルト以下の放射線量の被曝区域を低線量汚染地域といって、放射線の影響を考慮しなくていい、とそれを専門とする国際機関によって認定されている地域のことを指す。ウクライナのコロステン市はこれに該当するのだが、甲状腺癌始め、白血病、循環器系、呼吸器系などの疾患を抱える患者が近年増加の一途をたどっている。市民の健康悪化はチェルノブイリ原発事故の前後ではっきり差異が見受けられるものの、国際機関は市民の疾患と放射線の因果関係を甲状腺癌などごく一部の疾患以外は認めない。それは「科学的に証明ができない」からだが、この言い回しは、科学的な方法で検証したのだが、因果関係があるとは見なせない、といっているのではなく、データがないから科学的に証明する術がないということなのだ。証明ができないから、何もしないという、国際機関の主張に真っ向から反論しているのが、ウクライナの医師たちだ。被曝の2世である自国の子供たちの約8割が慢性疾患をかかえ、自国の未来を奪われたに等しい異常事態を目にする医師たちの怒りは想像に難くない。メチル水銀が原因と認定するのに10年を費やした水俣病、その10年間の間の患者の苦しみと被害の拡大を思うと、「科学的な証明を待つ」ということはどういうことだったのか、と福島という被曝地域を抱える日本は、本書のウクライナの事例から学ぶべき点が多々あると思う。ちなみにわが日本の行政は、福島の初期被曝の調査を中止させ科学的調査の可能性を放棄したあげく、因果関係については国際機関の規範に倣い、なぜか国際基準の4倍増の年間20ミリシーベルト以下を安全としている。ウクライナよりも初期対応や食物摂取の注意で優位と思われる福島がただちに危険ではないかも知れないが、26年後の保証がなされたわけではない。