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まさに怪作。
「ゾンビ・アウトブレイクが実際に発生したらどうなるか?」
このロマン溢れる問いかけに対し、リアリズム、リベラリズムなど、国際政治学の方面から理論的検討をくわえた一作です。著者は本職の研究者であり、記述の正確性と議論の充実度は折り紙つき。
ゾンビを題材にしたケーススタディの趣があり、国際政治理論を学ぶのに有益なのは間違いありません。間違いないのですが、注目すべきはやはりゾンビへの愛情の炸裂ぶりです。
ブードゥー教の古典的ゾンビ、ロメロ・ゾンビ、World War Zにおけるゾンビと、著者の筆は古今東西のゾンビに及んでいます。Zombie Research Societyの諮問委員をつとめているというだけあり、とにかくゾンビが好きだというのが随所から伝わってきます。これだけでもゾンビ好きの方は必読かと。
国際政治理論とゾンビ。まったく無関係としか思えない二点を繋げ大真面目に論じた点がたまりません。これはお薦め。解説「ゾンビ研究事始」も必読です。
なお、本書についてはExciteニュースにおける書評がとても良いものとなっています。ご一読を。 http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20121119/E1353253095995.html
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ゾンビが襲来したら国家(ないし国際社会)はいかに対応するかという問いについて、国際政治の理論によって解答を導いている本。ゾンビを国際社会や国家にとっての脅威と考えればいいだろう。この問いについてリアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムといった主要な国際政治理論のみならず、官僚政治や国内アクター、さらに個人に関する理論によっても解答が示されている。しかもかなり幅広い理論をカバーしている。
本書の優れたところは後半部のゾンビ研究事始にある対談形式で示されている国際政治理論の解説である。本編を一読しただけだとなかなか難しいが、この解説では国際政治の理論についての解説が簡潔に述べられており、これを読むと本編の理解がさらに進むだろう。
社会科学を学ぶ大学生のみならず、国際政治に興味がある人に勧めたい本である。
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国際関係論の学者は損部が世界に対して与える結果ほどに、その原因について関心を持っていない。社会科学的な言い方をするなら、ゾンビは独立変数。
アナーキーな世界で流通する唯一の重要な通貨はパワーである。
あらゆる国家は自らの資源と能力にしか頼ることができないので、リアリストは国際機関が国際政治を規制する能力に対して懐疑的である。
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ただただすごい本です。ゾンビ襲来を経済学と国際関係論で考察した内容。米国人と英国人のゾンビ感染者に対する取扱いの違いや「走るゾンビ」と「走らないゾンビ」のゾンビ拡散の因果的な影響の下りなんて唸らされました。ゾンビのゲーム理論による考察もゾンビに限らず社会的な非公共財の出現に対する考察に応用できそうですし、かなり本格的な中身。長くなりましたが、この本を肴に誰かと語らいたくなるくらいの内容。最近のゾンビ映画、なかでもゾンビランド、ショーンオブザデッド、28週後そしてロメロの一連の作品を観ている方ならチョーオススメです!
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ゾンビ云々抜きにして国際政治の初歩がなんとなくわかった気になるという点がよかった。
国家は自国の利益のために動くというリアリストと国連などの機関による国際協調も可能だとするリベラリストと国際協調も可能だが強い国家が1国でも武力行使できちゃうというネオコンなどがゾンビという脅威にどう対応可能なのか、といったことを真面目に論じている。
しかし、結論はゾンビに脳みそをくわれてしまう前に脳みそを使ってどうするか考えようという巧いオチだ。誰が巧いことを言えと。
ま、ゾンビはひとつの切り口で、これをテロリストに置き換えてもだいたい通じる内容。国際政治ってのも結構面白いね。
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ゾンビが発生した場合、国家はどのように対処するか、国際政治理論の様々な立場からシミュレートして説明してくれる本。ゾンビとか突拍子もないと思うが、著者も言うように、どの理論をどの場面で適用するかはもはやアートの領域だから、空想だろうと具体的に考えることが重要。全て説明できる理論があれば別だが、そんな便利なものはあり得ない。
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大真面目にふざけた逸品。
ゲーム理論でしばしば用いられる「繰り返しゲーム」では協調が起こりやすい。またケインズが論じるように「結局のところ我々はみな死ぬのである」。ここから「死なないゾンビは団結し、人間はバラバラに孤立する危機」に直面する。笑えるが笑えない!映画でも人間は必ず仲間割れ・抜け駆けなどのチームワークの危機から何人か死ぬし、ゾンビはひたすら集団で襲い掛かってくる(ゾンビの共食いはないらしい)
小説「ワールド・ウォー・ゼット」では、統合参謀本部の議長が軍事的な効率を最大化させるために「資源/殺傷数比率」なる指標を開発する。これが現場での創意工夫を生み出し「信じられないくらいにコストパフォーマンスの高い武器を発明し始めた」。まるでマネジメント論。適切な数値目標の設定が現場を動かす!(笑)
最高だったのは「素早いゾンビに関する考察」。動きの速いゾンビはとんでもなく恐ろしそうだが、
・低速ゾンビ→発症までの時間が長い・低速の拡散→政府の対応が遅くなる→最初の発症がより大規模な拡散をもたらす→…→ゾンビ王国のグローバル化
・高速ゾンビ→瞬時の発症による拡散→国境を越えて拡散→…→ゾンビ王国のグローバル化
したがって速度は拡散に対して因果関係をもたらさない。どっちでもグローバル化する(笑)
なお私はゾンビ映画を見たことがないし(初代バイオハザードは好きだった)、ホラー映画は一切見ない。それでも面白い本だった!
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増殖し拡散するゾンビという脅威に対して、国際政治理論をぶちかます。
これまでのゾンビ映画作品を用いて解説している所も面白い。
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とにかく想像もしなかった本。
まさか、国際政治理論とゾンビが結び付くなんて考えもしなかった。
でも、ゾンビが襲来するという、想定外なことを、学問的に考えることって大事なんだろうと、読み終わってみると感じた。
そして、なにごとも、想定しておくことは、決して無駄にはならないように思った。
にしても、ゾンビというとてもありえない物体?!と遭遇する、もしくは、襲来を受けることをまじめにとらえるってなかなかできないことだけど。
結局、おもしろかった。
ぜひ、たくさんの人に読んでほしい。
ただ、論文っぽい訳(もしかしたら、原文も論文なんだろうが)が、慣れるまでは読み進めにくかった。、
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ゾンビがそんなに好きでもないし、国際政治理論に詳しいわけでもないので、いまいちノリについていけなかった。
なんでアメリカ人はこんなにゾンビが好きなのか。って、そりゃ、移民が増えたからでしょ、なんだけど、そんな読み方をしたら負けた気がする。
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真面目に考察していると見せかけて、実はけっこうおふざけ入ってる。途中途中の挿絵とコメントに味がある。
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ゾンビが襲来したという外生的ショックに対し、国際政治論の観点からどのような対応を行うと予想されるか、どう対応すべきかを論じた一冊。
巻末の訳者によるゾンビ研究が50ページもあり、内容もゾンビ愛に溢れていて、本編よりも面白い。
ゾンビ好きは一読だと思う。
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タイトルの通り、国際政治理論でどのようにゾンビに対応するかということをまじめに書いた話。
理論についてもう少し詳しければ、もっと楽しめたかもしれませんが、逆にこれをとっかかりに調べてみても面白いかもしれませんね。
実質半分が本題で、残りの半分が訳者解説と注釈。
分量的にちょっとお高い気がしますな。(^^;
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いわゆるゾンビ系エンターティメント本ではありません。
気鋭の国際政治学者が、もし、本当にゾンビが襲ってきたとしたら、既存の国際政治学(国際関係論)の諸理論が、どのように対応するか、真面目に検討した論文(?)。
まず、複数の映画等から、ゾンビの定義が正確になされ、それがコミュニティ、政府、そして多国間に与えるストレスによってどのように反応するかを考える。
なかなか面白く読めますが、国際関係論???という場合は、本書を読む前に国際関係論の入門書を読んでから本書を読まれたほうが面白いと思います。
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エンタメ的な本かと思いきや、まじめに国際政治的観点からゾンビが発生した場合にどう対処するかの論文(?)。国際政治論がよくわかっていないので腑に落ちない。ただ、ゾンビが発生した場合、国際機関や各国の安全保障当局は機関間の「押し合いへし合い」などで適切な対処ができないという結論が興味深い。ゾンビを身近な災厄(原発とか)にしても十分に当てはまる。とはいえ、ゾンビに対する備えと言われると・・・。取り敢えずは、本書で絶賛している「ワールドウォーZ」の映画を見てみようかと。