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この本の著者である中原氏が冒頭に書かれているように、これは彼が日本経済について初めて解説した本です。日本の業界において、電機メーカは勝者と敗者に二分される、自動車メーカはハイブリッド車を中心に強みを発揮することができると予想しています。
また、アメリカを中心に起きているシェールガス革命が自動車・発電業界に与える影響についても書かれていて参考になりました。電気自動車の将来は今後見直される可能性もありそうですね。
彼によれば、今後の日本で有望なのは「農業・観光・医療」のようですが、この業界が20年後に今と比較してどのように変わっているのか観察を続けたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・薄型テレビにおいて日本が敗れたのは、1)設備投資の誤り、2)生産方式の誤り、3)マーケティングの誤り、である(p24)
・2000年代に入って、経済のグローバル化が進むとともに、製造業の世界では「垂直統合」モデルから「水平分業」モデルへの移行が加速した(p32)
・世界最大規模のEMS企業は、台湾にあるホンハイ精密工業で、そのグループ売上は10兆円で殆どが組み立て費の積み上げであることが驚異的、その売上のためには年間125億個を超える製品生産が必要、日本の生産規模は1社ではメガを超えられない、サムスン電子が警戒するのはホンハイ精密工業(p35、47)
・新興国で成功する秘訣は、それぞれの国の生活習慣や文化、宗教をよく知ることで、現地の消費者が何を欲しがっているかを徹底的にマーケティングすること、そのためには現地法人への意志決定の権限移譲も必要(p37)
・収益源となる独自技術は公開しない代わりに、関連機器との接続はオープンにして自社製品の普及を促すという戦略にインテルは変更した(p51)
・総合電機メーカは当初はデジタル家電を手掛けていたが、アジア勢が有利になると縮小して、安定収益の見込める発電所や鉄道設備の建設をいった社会インフラ事業へと経営資源を集中させた(p55)
・簡単には模倣されない高い技術を持ち、コスト競争に巻き込まれることを避けるようにするのが日本企業の目指す方向性(p57)
・エンジンとエンジン制御技術がブラックボックスになっており、完成車メーカ以外はその内部構造を知ることができなかったが、電気自動車は系列メーカでなくとも簡単に作ることができる(p66)
・地球が人間のせいで温暖化していることを懐疑的に見る科学者・研究者が少なくなかったが、それがあまり表に出なかったのは、IPCCがノーベル平和賞をとったことに加え、IPCCが彼等に圧力をかけていたから(p72)
・オバマの挙げた「グリーン・ニューディール」の狙いは、電気自動車を太陽光や原子力で発電した電気で走らせて、CO2排出を抑えるというもの(p75)
・オバマ政権は2012年に34年ぶりに原発新設を認可したが、2013年では増額要求を取り下げた、これにはシェールガスの普及がアメリカのエネルギー政策を転換させたことを意味する(p77)
・COPを主導してきたEUは、域内の債務危機と財政再建で米国と中国に迷惑をかけているので、COPの枠組み自体は実質的に崩壊する(p79)
・地球温暖化がウソと判明しつつあるので、電気自動車は大きな転換点を迎えている(p79)
・10年後の世界市場における電気自動車のシェアは1%もないだろう、その一方でハイブリッドは30%に迫り、欧州の得意なディーゼル車のシェアを奪うだろう(p80)
・トヨタはフォードと共同して、大型車向けのハイブリッドエンジンを開発することで合意し、それらはピックアップトラックに載せられるだろう、エース級の車種におけるエンジンに対して、トヨタの技術を使うことを意味する(p83)
・トヨタが中国の要求する通りにハイブリッド技術を公開してしまえば、川崎重工の新幹線の二の舞になる(p85)
・米国産業界はシェールガスを利用できる体制へ急速に方向転換している、まずは石油火力発電所の新規建設が取りやめられ、ガス火力発電所の建設が増加している、ダウ・ケミカルはシェールガスを原料に使ったエチレン工場建設をしている(p98)
・シェールガスを精製分離すれば、良質な水素エネルギーが安全に取り出せることがわかってきたので、次世代自動車が燃料電池車になる可能性大、排出は水のみ、水素充填時間はガソリン車と同じ、走行距離はプリウス並み(p100)
・シェールガスの普及により、トヨタの優位性が増す、燃料電池車の開発は1992年から実施して2015年の販売開始、また日本国内のタクシー(液化天然ガス車)の9割を作っている(p101)
・トヨタは2017年に液化天然ガスで走るタクシー生産を中止してハイブリッド車に切り替える(p102)
・所得の減少→消費の減少→物価の下落の順序が正しく、物価の下落→所得の減少→消費の減少ではない(p116)
・日本の労働者所得を減少させている3つの出来事は、1)薄利多売による競争激化、2)金融緩和の長期化、3)経済のグローバル化による雇用喪失(p120)
・アメリカではインターネットの普及により、小売業に占めるネット通販の存在感が増して価格破壊の流れが拡大している、アマゾンが仕掛けた値下げ攻勢により、家電量販の業界2位(サーキットシティ)が破綻、最大手のベストバイも赤字決算(p123)
・日本でも、ゾゾタウン、ケンコーコムは、アマゾンとの値下げ競争で疲弊して2期連続の赤字、楽天との資本業務提携をすることにした(p124)
・自動車産業は素材や部品数が他の製造業と比較して桁違いに多く、全体の雇用者数は545万人にのぼる、そのお蔭で、鉄鋼メーカや工作機械メーカの競争力が保たれる(p147)
・クロスカンパニーは、H&MやZARAと並んで凄い勢いで業績を伸ばし、店舗数も400を超えている(p160)
・日本の農業総生産額は、2010年で8.1兆円で世界5位(中国、米国、インド、ブラジル)だが、その半分は税金や補助金で救済されている、総生産額自体は1984年の11.7兆円をピークに減少し輸出は20位(p167)
・現在の所得補償制度は、全国の8割を占める兼業農家を永く生きながらえさせるための政���で、努力をしなくてもよいというメッセージ(p170)
・1991年に牛肉自由化されて肉牛農家は3分の1(7.4万戸)になったが、1戸辺りの飼育数は38頭へと3倍になって生産性が高まり海外と競争ができるようになった(p177)
・富裕層や中間層が最も増えるのが、中国・インドを含むアジア地域、2010年に1億人だった富裕層は2020年には3.5億人、14.6億人だった中間層は23.1億人になる(p185)
・医療技術として、癌細胞のDNAを破壊する放射線治療(陽子線や重粒子線)は従来のエックス線やガンマ線と比較して正常細胞を痛めるリスクが少なく、高い治癒率を上げている、また「ホウ素中性子捕捉療法」は、癌細胞のみをピンポイントで狙い撃ち可能(p196,202)
2012年12月17日作成
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歴史を踏まえた視点と、僕みたいな素人にもわかりやすい語り口が好きだ。タイトルと表紙が軽薄な点が惜しい。
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この作者にしては、今一。
日本の自動車メーカーは、家電メーカーとような衰退はしないだろうと予測。
トヨタは、将来的にはシエアをあげていくだろうと予測。
日本のデフレは「所得の減少」「消費の減少」「物価の下落」の順番でデフレが続いている。
シエールガスの発掘、普及が21世紀最大のイノベイションとなる。
日本の経済の大復活の有望分野は、「農業」「観光」「医療」の3つの分野である。
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読了。日本経済を支える自動車と家電の比較、アメリカのシェールガス革命、日本のこれからの成長産業として医療・農業・観光を挙げている。中原圭介の本やブログは大ファンだけど、いまいちかな。
今回この本は図書館で借りて読んだんだけど、誰だか知らないけど図書館の本に書き込みするなよ、線ひくなよ!そういう常識ない人がこの本読んで儲けようとしたって難しいと思うけど。。。