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真相の究明は、二の次三の次なのかもしれない。
核心の回りをぐるぐる回っている印象で、牧歌的と言っていいかと思われるほどである。
人物たちはすこぶるよく描けていて、ミステリというより、事件の起きるホームドラマ、という趣でもある。
ディヴァイン最晩年の作品だそうで、切れ味の良さはあまり感じられない。
解説が佐々木敦さんであることに驚かされるが、その解説で触れられているように、ケンとジュディの「ツンデレ」ラブストーリーとして読むのが一番しっくりする気がする。
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ジャージャー島からスコットランドのシルブリックにやってきたルース・ケラウェイ。彼女の顔を知らない父が住む町。自治区役所で働き始めたルース。書記記録課のケン・ローレンスに選挙での不正についての話を聞き、消えた選挙の記録。ケンが同棲するエリザベス・ロスの殺害事件。エリザベスが最後にあった人物とは?ケンの元婚約者ジュディに結婚を求めるエリザベスの夫ヴィクター・ロス。エリザベスの手帳に名前の載っていたジュディの父ハッチングス。自治区協議会の議長選挙にあたえる影響。消えたルース。ルースの父親と告白したハッチングスにかかる容疑。上層部の意向とは違った形の捜査を進めるハリー・マンロー部長刑事。
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どんどん疑惑の人が増えていって
だれもかれも怪しく見えてくる。
人間関係もとても複雑だ。
振り返ってみればタイトルが怖い。
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本書はイギリス人ミステリ作家であった著者が生前最後に発表した長編の日本語版です。
(読んだ事を忘れていると言うのでなければ)この著者の著作を読んだのは本書が初めてです。
1970年代のイギリスを舞台にしており、平成になって25年もたった今となっては結構昔の時代背景を持つミステリーです。
しかし、だからと言って読みにくいという感じは(少なくとも私には)一切せず、(本書の後書きを書いた)佐々木敦氏は主人公たちの恋模様を「絶妙なツンデレ感漂う」と表現するなど、世代を越えて共感を呼ぶストーリーとなっています。
では前置きはこの位にして以下であらすじをご紹介。
ジャージー島で祖母に育てられたルース・ケラウェイは母の死後、自らを私生児として冷遇した環境を恨み、名も知らぬ父親に復讐する為、本土にある小都市シルブリッジへ渡る。
しかし、その地で人々の秘密を探る彼女の姿は、過去の露呈を恐れる何者かの脅威となり、殺人事件が起こる。
行方不明となった彼女はその犯人とされるが・・・
と言った感じであらすじをご紹介しましたが、本書の主人公はルースではなく、彼女にちょっかいをかけて肘鉄を喰らった役所の文書整理係、ケン・ローレンスと彼の元婚約者ジュディ・ハッチング(彼女は準主役か?)です。
ローレンスはエリート街道を歩んでいたのですが、好奇心から学生運動に関わってしまい、結果的に大学を退学処分。
以降、ワーキングプアな人生を歩んできた(昨今流行りの表現を借りれば)負け組の一人。
本書には、その彼の(男女関係も含めた)世間から余り評価されないであろう生活と、(退学となったいきさつの真相を知るため)彼の事を忘れきれないジュディの姿が描かれており、更には彼女に求婚しているやり手も登場するなど、こうやってまとめてみるとまるでハーレクイン風(いや、読んだ事はありませんが)な小説ですね。
とは言え、決して甘々なストーリーと言う訳ではなく、ハッチング家が徐々に追い詰められていく姿が描かれているなど、程よい緊張感が保たれたミステリーとなっています。
(もちろんその様な読みかたも出来ますが)犯人探しに一所懸命にならずとも、気軽にストーリー展開を楽しむことが出来る一冊です。
お時間のある時にでも、息抜きがてらに読んでみられるのは如何でしょうか?
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毎回巧みな人物描写によるドラマで読者を楽しませつつも惑わせるディヴァイン。本作でもその魅力が遺憾なく発揮されていたと思います。
一人の謎の女の登場によって不穏な空気に支配されていく小都市シルブリッジ。彼女が中心となっている間は物語がどこに向かっているのか分からなくて多少混乱しました。
ジュディの一家がメインになってきてからは分かりやすいのですが、登場人物が少ないのと、あからさまな描写が多いのでフーダニットとしては簡単になってしまっていたと思います。
しかし、事件を通して人々の裏の姿が見えていく様は良質なサスペンス。複雑な人間関係で全体的にとっても暗いお話です。
緊迫感ある終盤での追走劇は盛り上がりましたし、タイトルの意味の恐ろしさにもゾッとします。
そして、ラストは非常に切なくて良い。とてもデリケートな状況でのあのケンのセリフ、そしてそれに対するジュディの答え方が切なくも微笑ましい。
意地や見栄で素直になれないこういった人間の描写がやっぱり上手だなと思います。
アリスとハリーの2人はとてもおもしろいキャラクターでした。本当ならこの二人が探偵役とワトソン役になるんでしょうけれど、あくまでも一歩引いた場所で動いているのが終盤での盛り上がりに一役買っていたと思います。
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憎き母が死んだ。何一つ秘密を漏らさないまま______。父を知らずに育ったルース・ケラウェイは、母の遺品から手掛かりを得て小都市シルブリッジへ渡った。父親を捜す傍ら、なぜか数年前の協議会議員選挙の不正も探ろうとするルース不可解な行動は、人々の不安を煽り、ついに殺人事件まで発生する。複雑な人間関係を操り、鮮やかなフーダニットを演出する円熟期の傑作。本邦初訳。
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ひねりのあるプロット、奥行きのある登場人物の造型、まったくディヴァインは面白い。時々のお楽しみに読んできて、未読はあと二作くらいだろうか。読み切るのがもったいない。
しかしまあ、特に分厚いわけでもない文庫の値段が本体1100円…。う~ん、文庫って何だったっけ?
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読み終わるまで発刊年(1987年)を意識していなかったので、登場する人物像が皆豊かに肉付けされており、想像しやすかったことが意外だった。ケンとジュディスはそれぞれ現代的なイメージすらあったからだ。淡々とした描写でその人らしさを浮き彫りにするところはクリスティを思い出させる。曰くありげな過去、忍び寄る不安、意外な結末と、ミステリとしてきちんとまとまった佳作だと思う。
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ディヴァインが生前、最後に発表した作品。
これもどちらかというと犯人の目星がつけやすいタイプ(そもそも容疑者が限られているので、「どいつもこいつも怪しく見える」的な読書体験は無い)。
登場人物が鬱屈している度合いはこれが一番高いかも……。
創元から出ているディヴァインはこれで全部読んだことになるが、誰かに勧めるならこれか『兄の殺人者』にするかなぁ。
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冗長な展開と共感できない登場人物たち。事件自体に面白味はないけれど、終盤のタイトルの意味が分かるシーンはちょっとぞくりとする。
タイトルが文字通り過ぎて怖い。
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後半になって面白かったですね ただ、殺される女性、ルースの性格描写をもう少しして欲しかった気がします、ケンとジュディスの二人は面白いですね ディヴァインの作品はいずれも傑作と言えるかもしれませんね
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良質なミステリー。この作者の小説は初めて読んだが、グッと読ませる小説をかくなぁ、と上手さにうなってしまった。
登場人物の少なさ、小さな町が舞台と言う閉塞感、その中で起こる殺人事件、どこでどうつながってるか分からないドロドロした男女関係…普通なら読んでてうんざりするような舞台設定なのに、そういう閉じた世界だからこそのフーダニットがオモロい。しかもうんざり加減をあまり感じなくて済む読み心地。
犯人探しの醍醐味というより、小さな村社会に投じられた一石の波紋が広がっていく様を、主人公たちと一緒にアタフタ見守っていくような読み方が、この小説を味わうコツだと思う。
ところで、
本来だったら、ホームズ・ワトソン役にあたるはずのハリー刑事と恋人のアリス、主人公格のカップルより、俺はこの2人を絶大に肩入れするぞ!
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母の死後、ルースは父を探すために小都市シルブリッジへやってきた。過去を蒸し返そうとする彼女の行動は人々を不安に陥れ、とうとう殺人が起こる…
ルースをはじめクセのある人物ばかりで、狭い人間関係の中でドロドロするサスペンス。安定のディヴァインである。読み返そうとは思わないけど読んでるあいだは時間を忘れる。
変なタイトルの意味はラストでわかってゾッとした。
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誰もが顔見知りの小さな街での、不正選挙と復讐に燃える女性のミステリー。
ケンの覇気の無さと、正直性格ジュディの絡みが楽しい。殺人事件そのものに導くのは無理があったかな、で気持ちは4点。