投稿元:
レビューを見る
寝た子を起こすな…という理屈がある。
表現を変えることで、事実を隠蔽しようとする風潮もある。
ボクは思う…事実、真実を知らないこと、知ろうとしないことこそ、
誤った社会を形成することにつながるのだ…と…
これは、ハンセン病を扱った小説。
松本清張が「砂の器」で描き、熊井啓が遠藤周作の
原作を元に「愛する」という映画を撮った…
「らい病」といわれた病が、社会的にどういうものであったか…
今の若者は、ほとんど意識していないだろう…ボクも、
こうした小説や映画を通してわずかに知るだけだ…
このテーマで小説をものにした…著者に、
なにより敬意を表したい…と思った。
差別や偏見…といったものがどういうものであるか、
差別される者が、どういう気持ちで生きるのか…
あらためて、そういったことを考えさせられる一冊だった。
それを考えることは、人が人として生きる上での不易の課題だろう。
投稿元:
レビューを見る
今川焼屋さんではなく、どら焼屋さんというのが良くて、できたてほかほかのどら焼が食べたくなりました。それも徳江さんのあんの。
投稿元:
レビューを見る
商店街にぽつんと小さなどら焼き屋での思いもしない出逢い、心のふれあい、そして偏見… 人が人に惹かれてゆくのは自然なことなんだな。想像もできない過酷な現実を生きる為に自分を奮い立たせてきた吉井さん、きっと一緒にいて千太郎はその見えない生命力に共振したんだと思う。 やる気ってひょんなことから出てくるんだよね。不思議だけど自分の考え方ひとつで。
投稿元:
レビューを見る
とある目的のために、こだわりなどなくただただ毎日どら焼きを作っていた千太郎と、過去に患った病が人生につきまとう「あん」作り名人の吉井徳江の出会い。
この病気のこと、患者の人たちが受けてきた苦しみについて、知らないことが多くてショックを受けた。
作風としては個人的にはもう少しシャープなほうが好みだけど、きちんと心に残る、そんな作品でした。
投稿元:
レビューを見る
和菓子屋さんのお話と思って読み始めました。
間違っていないけど、もっと深いテーマが描かれていました。
それはハンセン病の差別。
どら焼屋さんで働く千太郎のもとに、指の曲がったおばあさんがお客として来た。
また来たおばあさんは餡についてアドバイスをしてくれ、時給200円でもいいから雇ってほしいと言う。
千太郎はおばあさんが働くのは大変だからと断ったが、餡作りを教えてもらうためだけに働いてもらった。その後、どら焼屋のお客は増えたが、同時にある噂も広まっていた。
オーナーである奥さんがその噂を聞きつけ、おばあさんを辞めさせるように言ってきた。
おばあさんはハンセン病だったのだ。
その昔は不治の病で、感染を防ぐために法律で隔離することが義務づけられた病気。
まだ根強く偏見が残っていたのだ。
おばあさんがいなくなったどら焼屋は、餡作りを失敗することも増え、さらに偏見からか客足が遠退くようになっていた…。
ハンセン病を取り巻く現代にまで続いている問題を扱っているけれど、どら焼屋の話を元に進んでいくので、重苦しさはない。
でも、ハンセン病についても考えさせられる内容になっていた。
投稿元:
レビューを見る
どら焼き屋を舞台に、人生に躓き店長を任せられた千太郎とハンセン病の療養所で暮らす老婆・徳江。千太郎は、50年間つくっていたと云う徳江から製あんつくりを伝授され、云わば法律に依って幽閉されていた二人が、希望の人生を紡いでいく物語だ。
終盤、徳江は手紙でこう語る。
「私ね、とても嬉しかったのですよ。裁判に勝って、私たちを閉じ込めた法律が廃止されて、自由に外を歩けるようになった時。だって、それを目指してみんな何十年も頑張ってきたのですから。だけど、その喜びは苦しみと背中合わせでした。」(P.223)
ハンセン病患者に対する国の隔離政策が生んだ法律が、1996年廃止された。けれど、世間はあまり変わっていないと、決して声高に叫んでいないが、過酷な運命に晒され偏見や差別と闘った方々の思いが伝わってくる。
文章は詩的でファンタジックな中に、人生の生きる意味を問うという重たいテーマが琴線に触れる。
ぜひこちらを参照ください
↓
http://www.poplarbeech.com/sp_pickup/ann/
投稿元:
レビューを見る
本当に生きる事を考えさせられますね。
本の題名から、こんなに深い問題とは知らずに読み始めました。
ただ個人的には、あの方のために店長がどうなったのか書いて頂きたかったような気がします。
投稿元:
レビューを見る
とても読みやすかった。
最初の数行で物語に入り込めて、スッと集中して読めた。
そして読み終わるまで、席を立つ事もコーヒーを飲む事もなかった。
ということは多分、この小説をとても面白く感じてたんだと思う。
「塩」というキーワードが出て来た辺りで、最終的に何銅鑼焼きにするのか読めちゃったのは残念。でも話の重点はそこではないので、物語のマイナス点にはならない。
お店の繁盛記物語ではないのが、却って良い余韻でした。
投稿元:
レビューを見る
惰性で続けているどら焼き屋の店長のところに、ひとりの老婦人が訪れる。彼女が作る極上の餡に魅せられ、店で雇うことにしたが、ある噂が流れ、また店は閑古鳥が鳴くことに。
ハンセン病を扱った問題作ではあるのですが、もう少し展開が欲しかったところ。
中学生の女の子がハンセン病についてどう思っているのかなど切り口はもっとあっただろうなと惜しい作品です。
投稿元:
レビューを見る
読みやすくてわかりやすくて、シンプルだけど深くていい本やった。
最近、読んでいる時はそれなりに面白くても、後でつまんなかったと思うものが多いが、「あん」は、とにかく読後感がいい
彼は、他にもいっぱい書いているようだ。
楽しみはまだまだ続くってことだ、うれしいぞ。
そしておまけ、「あん」は餡のこと。この本に書かれているような方法でを手作りしてみたいんだよね~。
きっと読んだ人は皆そう思うだろうな。
まりさん
投稿元:
レビューを見る
どら焼屋の店主とあばあさんのあたたかい話し。生きるのはつらいけど貴いというちゃんとしたメッセージがきちんと伝わっきたのが、よかった。
投稿元:
レビューを見る
ドリアンさんの本初めて読んだ。よかったー。
昔見た「熊笹の遺言」という映画のあいさんを思い出した。外に出るっていう権利を得るまでもほんとに大変な思いをしてきているのにそれよりも全然一度人々の心の中に巣くってしまった差別を掬っていく方が難しい。
でもひとはふと出会ってそのふとした出会いで変わっていく。そこから考えていく。
本との出会いがひととの出会いの代わりになることがあるっていうのを改めて実感できて希望をもらった。
投稿元:
レビューを見る
★3.5
とても良かった。内容だけでなく、文体もよくて、何度も涙しながら夢中になって読みました。
後半の、徳江さんに対する森山さんの言葉が、よかったと思います。
有ると無いとでは、きっとずいぶん違った読後感になったろうなと思います。
投稿元:
レビューを見る
自分の無知を突き付けられ、ただ頭を垂れるしかできなかった。
読み進むにつれ、悔しさと悲しみで涙が出て困りました。
投稿元:
レビューを見る
「世界とはあなた自身のことである」
自分のすべてを受けいれ、受けとめてくれる母のような温かい存在、それが世界なんだ!と気づかせてくれた本。
私の感じている世界は、私がいるからこそ成り立つ。
当たり前のことかもしれないけど、改めてそう思って生きてみると、小さな花が咲いているのを見つけただけでもとても幸せ。感謝の心でいっぱいになる。
ストーリーもとても素晴らしい!
ハンセン病のことは、私も無知を恥じたい。
知らないことが多すぎるし、これまであまりにも知る努力を怠ってきたと反省している。
もっと人の痛みを知ろうとしなければ…!
輝きは自分の中にこそある。
この本に込められたドリアン助川さんの愛のメッセージを、主人公の青年と共に、確かに私も受け取った。