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二つ目のスタンプブックス。質がよくて素晴らしい。
かつての福武のベストチョイスに思春期感を足したようなシリーズだ。
こちらは発達凹凸の高校生(微妙な年齢です)の成長譚。
マルセロは音楽と宗教が好きで真面目な発達凹凸青年。
教科書通り、くらいの発達さんで、adhd色は弱め。
普段は支援学校というか養護学校に通っていた。ここがもう素晴らしい学校なので、まずはそれが羨ましくてたまらない。日本にもここまでの学校があれば。。。
作中でマルセロの父親が彼を認知障害だというけど、本人はそれは違うと思う、と。
たしかにマルセロの言う通り、彼は周囲の人の表情や動きからかなりの情報を読み取れている。
反応はうまくできないのかもしれないけど、ここまで相手を読めているのはかなり高度なことだ。
マルセロは、他人からはパッと見て、変わった喋りかたをする子、くらいの印象だと思う。自己分析も非常に優秀だ。
裸一貫からサクセスストーリーになった弁護士の父が、リアルな世界を見せようと、自分の事務所での雑用を夏休みの間だけやれ、という。
ジャスミンという女性のもと、少しずつ仕事をして信頼関係を作っていく。
ウェンデルというクズ野郎のために、ジャスミンとの関係が悪くなるんでは、と心配したけど、マルセロは頑張りました。偉い。
相談できる大人が彼にはたくさんいる。なおかつ、母親との関係が付かず離れずでいいのも、マルセロがキッパリとウェンデルを断ることができた一因にも見える。
マルセロは事務所である少女の写真を見てしまったことから、父の仕事の裏を見てしまうし、大きな迷いを抱える。
ジャスミンはそれに真摯に応えて、自分の故郷でストレートな感情のまま第一次産業で生きる世界を見せる。
この旅行がこの作品の大きな転換点。夜の湖のシーンはとても素敵だった。マルセロにも読者にも、ジャスミンは大きなものを見せてくれる。
写真の少女に会いに行くシーンが中心にならないところが、この小説のすごいところ。
人間みんなに醜い部分があるんだ、というメッセージにも愛と力強さを感じる。
マルセロと父親の和解までには、写真の少女の問題以上にジャスミンとの関係ですごくビックリさせられたのだけど、、、日本の小説では残念ながらここまでの描写はまず無さそう。
ジャスミンとマルセロの母親のあいだの空気まで、ちらっと言及されているのが凄い。
でもさあ、ジャスミンからしたら、あんな雇用者が自分の息子を職場でバイトで自分の下に持ってきたら、嫌だよねー。
ベリンダじゃなくて、という点ではなく、あの人の子供なんて、それを自分に頼んでくるなんて、すごく嫌だろうね。ジャスミンは偉いなあ。
当初、ジャスミンの様子から、優秀だったというベリンダになにか事情があったのか、と深読みしていたけど、普通に最後に登場していて驚いた。
後半は読みながらずっと涙目になってしまった。
構成には一分の隙もなく、日本のYA小説はまだまだ甘いな、と思わされた。こんな良作に会えて嬉しい。
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自閉症スペクトラムのマルセロが、守られた養護学校を出て、父親が経営する法律事務所で夏のバイトに。様々な人々と触れ合いながら、健常者の社会で力強く生きてゆく。
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SL 2022.2.24-2022.2.27
発達障害を持つ主人公の視点から語られる、ひと夏の大きな成長の話。
父親はマルセロに「わたしを信頼できなかったのか」と聞いたが、父親がマルセロを信じていなかった。マルセロがまさかこんなことを見つけて、正確に状況を把握するとは思っていなかったんだと思う。その後のマルセロの行動の前に、マルセロが起こっていることを理解するとは思いもしなかったのではないだろうか。
この作品を親の視点で読んでしまうことに気がついて、ひそかに愕然とする。
マルセロが、自分のことをアスペルガーだというと本当にその症状を持つ人たちに迷惑をかけると感じているというくだり。素晴らしいと思った。
昨今、何でもかんでも発達障害で片付けて、本当にその症状で苦しんでいる人のことをもっと真剣に考えたら、とよく思っていたから。
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よくある障害者の目線で世界を見ると、というものではなく、ミステリーの要素もあって、約400ページを一気読み。
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発達障害を持つ主人公が、普段通う施設を離れて、実社会へ踏み出し、いろんな経験の中で自分と向き合い成長するお話。
主人公マルセロの頭には音楽が鳴っている。クラシックだ。その曲が小説のところどころに出てきて、バッハなど、曲の雰囲気が小説の良さを引き立てる印象。
守られた施設を離れて、マルセロは社会の嫌な部分や、どうしようもない部分を垣間見る。それをマルセロなりに咀嚼し、成長につながっていく。
私にはマルセロの日々が、とてもしっかりとした足取りのように思えた。目を逸らさず、自分を見失わずに現実と向き合っていくマルセロは、果たして私の人生はどうか?と問われるものでもあるような気がした。
作品の全体的な印象が好き。
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まず、顔がいい。
キャラクターは魅力的だし、哲学的かつミステリアスなストーリーは僕の大好物。
痛くてしんどいのに、人生はやっぱり美しい。
そう信じさせてくれる作品。
自分の醜い部分に優しくできる人は、強い。