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現代詩って
2021/08/27 16:09
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまり一般人は作らない、特定の詩人の方が作るもの……みたいに思っていました。でも、詩は、全部言わなくて、省略されている文学なんだな、と……。ただ、全般に理解できるのか……
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名著である。
現代詩の置かれている状況が、いかにもよく理解できる。
それもすばらしいことであるが、何よりこの本は、日本語が持つ言語的特性を正確にとらえつつ、「人が生きるということ」はどういうことなのかということを、現代詩を手掛かりにして考えていこうとしている。
その姿勢がいかにも真摯だ。
紹介されている詩だけでなく、著者の詩も読んでみたくなった。
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谷川俊太郎の「六十二のソネット」の目次が「きわめて前衛的な詩」として著者の目にうつるのは、本文中に書かれているとおり詩人の「ことばのトーン」が「すみずみまで注意深く統一されて」いるからで、でたらめでよいということではたぶんない。
私は「詩を書く」ということをあきらめきれていないのか、読み手としては「わからないけどかっこいい」で満足なのですが、どうしてもその言葉の取捨選択の基準をわかりたくなってしまいます。
だから読み手としては勇気づけられたのと同時に、「詩を書く」ことについてはやはり私には難しい、という軽い失望も感じてしまいました。抽象画にたとえて詩を解説しているくだりもあったけれど、訓練によって上達可能なデッサン力を身につけても、それだけで抽象画が書けるようにはならないだろう、みたいな。
紹介されている詩がどれもすごく良くて、すごい詩とたくさん出会えるアンソロジーとしても読む価値があると思います。
「西洋の言語はどれも、文字で書かれた詩を朗読することに格別の困難はないかもしれないが、日本語では事情が違う」「日本の現代詩は(少なくとも自分の書く作品は)、声に出して読むことは不可能である」という言及は印象的でした。
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国語の授業の教材には絶対なり得ないような現代詩、たとえばここで採りあげられている安藤次男、川田絢音。
抽象画と同じようなもんだと言われると納得できた。言葉を言葉として解釈しない。いかなる哲学的思考でも捉えきれないのが現代詩。
世の中何でもかんでも批評したり分析したりできるものばかりではない。謙虚な気持ちを思い起こさせてくれるのも現代詩である。
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言葉は大切だと思っているけど、詩というカテゴリーからいつのまにか遠ざかっている。序章はそんな僕のような、結構たくさんいそうなタイプにずばっと突き刺さるようだ。詩との出会い方が悪く、再開にも失敗する。詩なんてそもそもわかんないだろう、という本。「レベルを落として改変したものはすべてつまらないのである」とある。そうですね。
詩を説明しきって模範解答を用意するような教科書的な読み方を強いられれば、つまらなくなる。名作だと人が言ったって、わかんないものはわかんないのである。この本のことをわかりやすく短い言葉で語るのは、ちょっと憚られる。あえて乱暴に言えば、同じ物を食べたって美味しいと思う人とまずいと思う人がいるし、腹が減っていなければそもそも美味しくない。ああ、こんなことじゃないなあ、うまく言えません。うまく言えている詩が、決して面白いわけではないように。
詩がたくさん出てくるし、詩人の書いた本だし、でも詩の本、という感じがしなかったなあ。詩というものへの自分のスタンス故か。タイトルにはちょっと違和感あるものの、こういう、こねこねとした本はなかなか好きなのです。
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現代詩は、世の中にすでに実在していてみんながよく知っているものやことをわざわざ言葉数を増やし、凝った言い方で表現しようとするものではない。まして人生訓を含んだ寓話のようなものではない。
人間社会の秩序から見たら意味や価値のないことを考えたり、人とは違うことをしたりすることは、実はみんなが思っているよりもずっと大事なことだ。
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子供の頃、教科書で谷川俊太郎さんの詩を読んで、単純に素敵だな、と感じた記憶があります。たぶん題は『春』だったと思う。クラス全員で、何回も音読していました。
ずっと大人になって、谷川さんがお金にはかなりシビアな方だ、という事を知りました。もし子供の頃に、その話を知ったら多少幻滅したでしょう。しかし今では、一層谷川さんに親近感を抱いています。詩人だって、大金持ちになりたい、と思う気持ちはみなと同じなのですから。
この本を読んだことを機会に、詩や短歌も見て行きたいです。
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あとだしじゃんけんみたいで恥ずかしいけれど、序盤から、そうそう、私もそういうことを言いたかった!(ような気がする)と思ってばかりいた。自分ではことばにできなかったことがらを、美しい物言いで表明してもらう喜び。おもしろかったなあ。
わからないままに置いておいちゃいけないのかなあ、というもやもやがいつもどこかにあった。明らかにことばにできたからと言って、それがわかったことになるのか、わかった、とすることで見えなくなることがあるんじゃないか、そういうもやもや。わからなくても好きなものもあるし、わからないものをまるごと持っていることもできる。理解できた、という気持ちになったことだけを自分のものにできるわけではない。わからなくても、なにかもっとひらめきや直感的な部分で、自分に必要なものは、というか、これは自分の持っていたいものだ、というものは感じるものなのではないか。わかることを前提に置くと、そういう感覚って、衰えるような気がする。
感じることはできる、からわかるまでは時間をかけたっていい。というか、そのほうがたのしい。そういう諸々のこと。
「すぐにわかったつもりになるのをやめて、簡単にわかってしまわないようにする」態度のたいせつさ。
早く決まるのがいいとは限らない。
出てくる詩は、知らなかったものばかりで、わくわくした。まだこれから出会えるものもたくさんある。
たのしい読書体験だったなあ。
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図書館より。
解説やただの評論ではなく、著者(詩人)の目線での詩とのふれあいの思い出が語られているのがよい。
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"詩は、雨上がりの路面にできた水たまりや、ベランダから見える鉄塔や、すがたは見えないけれどもとおくから重い音だけひびかせてくる飛行機や、あした切ろうと思って台所に置いてあるフランパンや、そういうものと似ている。"
"「わからない」と「わかった」とのあいだを往復しながら、われわれの内部で詩は育っていくのだ。"
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学校で習う詩の読み方、学習の仕方とは異なる方法を教えてくれる。詩ってなんだかわからない、わかりづらそう、理解できない、難しい、と思っている人に、新しい視点を与えてくれると思う。
書く側の人も一読しておいて欲しい一冊。
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詩と言われても、イマイチわからなかったのだけれども、確かにこれを読むと、分からなくてよいのだと安心する。
文学より絵に近いものなのかなぁ……と感じた次第。
しかし、この後、どの詩を手に取ればいいのか……というか、本屋に行ってどこに詩集があるのか、そしてどうするか、というのは悩ましい。
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元々私自身の興味があった学部時代の専門領域である詩の世界について、少し仕事から離れて触れたくて本書をとった。失われていた思いを取り戻すことができたように感じる。
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・大人の一般常識や実感の積み重ねでわかる詩と、幻の時としての未来と響き合う詩。後者は少年少女をも魅了する。
・授業でいう「作者の伝えたかったこと」がなくてもいい!
・詩が先で体験があと。
・読み終わらないことの幸福。
・「あらすじ」を言うことができないこと。
・「まだわからないでいる」権利、「わからない状態のたいせつさ」
・意味ではなく、音でもなく、図像。たとえば、各行のおわりの文字を線でつないだときの曲線。
・音読してくれるな、という指示。
・読み手の眼を遅くする。
・テクニックを目標としない現代絵画、現代音楽、現代詩の登場で孤独なテロリストが増加。
・外国で母語に頼れない孤独。
・常に変転する自分。不変の自分という有害なフィクション。
・詩とは、こうした高次元の知覚や思考の「予告篇」のようなものだ。
うすうす感じていたこと、初めて触れる考え、もりだくさん。
また全体を通じて少女から大人の女性へと読む題材も読み方も変わっていく。
詩論という形式の成長物語でもあるところが感動的。
そして何よりも、
「バベルの図書館」に匹敵する入沢康夫「「木の船」のための素描」、
ずたずた改行の安東次男「薄明について」、
に触れられただけでも価値は十分。
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詩に対する堅苦しい意識から自由にしてくれる。現代詩には、理解できない余白、説明できない余白があり、それが閉ざされた自分を開いてくれればそれでいい。詩の内容は、書いた詩人にもわからなくなる変わりゆくもの▼教科書は、詩を作者の感動や思想を伝達する媒体としか見ていないようだ。▼詩はただ純粋な言葉である。日常の秩序をゆさぶり、私たちの意識に未体験の局面をもたらす、そのような作用をすれば十分だ。人間社会の秩序から見れば意味や価値のないことを考えたり、ヒトとは違うことをしたりするのは、じつはみんなが思っているよりずっとずっと大事なことだ。詩は謎の種、長い間心の中にしまって発芽を待つ。現代絵画のようなもの。▼悲しい詩も、喜びの詩も、わからない詩もあるが、自分を解放してくれれば、それだけでいいのだなと思った。