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激しい変化だけが、感動を生むのではない。
主人公の映子の人生が劇的に変わるわけでもないこの小説を読み終わった後、多分すごく時間が経った後に、自分の中の何かがあの時変わっていたんだな、と気付くようなそんな変化があるんだろうね、きっと。
今、私は、妻であり母であるけれど、過去のある時期、他の何者でもない、ひたすら「娘」だった時間があって。
そんな「娘」と自分の「父」の間にあった無敵の信頼感と、思春期のある時期に感じた微妙な距離感と、そして大人になって知った「分かり合う気持ち」をじわじわと思い出しながら読んだ。
カノープスという星でつながった、空白の時間。埋めることはできなくても、その空白を共に感じることはできる。
全ての「父」と、全ての「娘」に贈りたい。
心細い夜にそっと開きたい、夜空に輝く星のような一冊
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主人公をイラつかせる人ばかりでずっと落ち着かない。
映子の抱く劣等感がそうさせるのかな。
しかし最後はとても良かった。じわり。
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その星を見たら、きっと私は変わることができる。
夢を諦めて契約社員として働く主人公。憧れの先輩への恋も叶いそうにない。何者にもなれていない自分。このままでいいのだろうか?
そんな風に考えること、誰もがあるんじゃないだろうか。それでも、日常の中で起きる小さな発見や変化で自分の中の何かが変わる。そんなささやかな瞬間を描いた作品。
冬の澄んだ冷たい空気が、すうっと肌にしみるような、そんな読後感。
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穂高明さん「夜明けのカノープス」読了。教師になることを諦め、出版社に勤めることになった藤井。与えられた仕事は雑用ばかり、周りは夢に向かって着実に進んでいる。「自分の存在価値って何だろう」と悩みながら、プラネタリウムの番組作成で「ある人物」と会うことになるのだが。。今回は吹奏楽、天体観測、家族の絆などが描かれてます。穂高さん特有の語りかけるような文章は健在。ページ数は少なく読みやすいが、盛り上がりに欠ける印象。「カノープス」に興味のある方は是非♪
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宙ぶらりんな自分のポジションとか劣等感とか、共感できる部分があって、読んでてちくちく痛かった。
父との再会や、星を絡めたストーリー展開が巧み。最後のシーンから、きっと一歩踏み出せたに違いない。
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恋も仕事も職場の人間関係も何もかもがうまくいかないヒロインが教師になる夢を諦めて働き出した出版社で少しずつやりたいことを模索する様子が瑞々しくて応援しながら読みました。今の寂しさは父親との距離を縮めるために必要な時間なんだよとヒロインに言ってあげたい。
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夢に挫折し、契約社員として働く女性が主人公の物語。
夢を叶える軌道から逸れてしまい、自力で修正する為の一歩を踏み出せずに揺れ動く主人公の心の様が丁寧に描かれています。
人は誰しも現状を打破したいと願いながらも立ち止まってしまう瞬間があると思うし、主人公の姿を通してどこか自分にも覚えのある感情を呼び起こされる。
幼い頃に離れ、思わぬ形で再会した父と娘。
二人の間に刻まれてしまった長い長い空白を、これから少しずつでも埋めていって欲しいと思う。
夜空に瞬く儚い星の光のように、ほんのりと希望が灯される素敵な余韻が残ります。
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少しだけ泣きたくなるような
そんな話。
答えは出ない。
毎日はたいして変わらない。
だけど、明日からは
きっと何かが違う。
そんな終わり方だった。
いいな。
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初めて読む「大人向けの穂高明」。失敗を続けながら、それでも少しずつ、ほんの少しずつ成長していくオトナ。そんな姿をみずみずしく描いていてとても面白かったです。
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蒼い時から引き摺る…父の不在に苦しんできた傷、憧れの先輩に抱く淡く不器用な恋、そして叶わなかった職種の夢、、そんな心の内をそーっと掬い上げる。"映子らしさ"と軌道修正と、カノープスの光が尾を引く優しい結末♪。
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図書館に行ったら、「一冊は読んだことのない作者のものか、ジャケ買いしそうな装丁のものを」というのを永らく続けています。
これはそんな一冊。星空のバックの装丁に惚れたのと、かつてのPC自作派のワタクシ「カノープス」の文字に釣られました。
叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と―めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。
幼い頃に両親の離婚で父と別れ、教師を目指すも挫折してしまい、今は教育関係の出版社の契約社員として日々に追われる映子。
中学時代の憧れの先輩はプロのミュージシャンとして生計をたて、友人は教師の夢をあきらめず採用試験に応募し続けている。
夢を叶えられなかった自分への敗北感からいつまでも抜け出せずに、それでいて自身の現状を肯定できずに自分を許せずにいる……色々な意味でギクリとさせられる設定ですが、別れた父親との再会をベースに、自身を肯定する過程を緩やかに描きます。
全体的に映子の鬱々とした感情がベースになっているので、分量も少なくストーリーの起伏が小さいため、なかなか人には薦めにくい作品ですが、私も含めて色んな人の心にある感情を波立てる緩やかでありながら強い気持ちのこもった作品です。
ラストシーンへの展開が少し性急すぎる感があって、父親との距離の詰め方がもう少し長めのエピソードで読みたいなと感じました。
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叶わぬ恋、さえない仕事、ねじれた家族と―めんどうな自分。その星を見たら、きっと私は変わることができる。その一歩を踏み出せない「こじらせ女子」の逡巡。
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ミュージシャンの先輩にあこがれるけど、教師の夢を諦めて派遣社員している自分に自信が持てず、心の重石になっていた離婚した父に久しぶりの再会するというお話。こじらせ女子、の感じがひしひしと伝わってくる。結果、父との距離を詰めていきながら、少しずつ自分を見つめなおしていくストーリーでした。
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教員試験に落ち続け、ギリギリ入った小さな出版社では契約社員として雑用を押し付けられる日々。周りにはひたすら夢に向かってひたむきな友人らがいて劣等感を抱く映子。カノープスは、めったに見ることができない、しかし、見えたならとても縁起が良いとされる2番目に明るい星。映子が自分にとっての「カノープス」を少しずつ見つけ出し、父との関係や仕事に対し不器用ながらも誠実に取り組む姿にとても好感が持てました。ジンワリとしみ込んでくるような爽やかなエンディングも最高に良かったです。
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映子が若田先輩の周りにいるであろう女性を”真冬でもコートの下はノースリーブを着るような人達だ”と評しているのに笑ってしまった。東北出身の穂高さんならではの感覚かもしれない。
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教員をめざしていた映子は、四度目の採用試験に落ちた後に、教育系出版社の契約社員として働いていた。
とある仕事を通して再会することになったのは、忘れることのなかった14年前に別れたあの人だった。
自分を諦め、感情を殺しながら暮らしている様子の映子。
その心の内が丁寧に語られているため、映子には好感を持ちました。
なので、少しずつ前を向こうとしている後半が読者として嬉しかったです。
近所の神社の秘密を知った映子が駆けつけた安川先生の研究室で、どんな会話がなされたのでしょうか。
その後のプラネタリウムでのシーンを思うと、大きな進展はなかったのかもしれませんが、気になります。