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本書で提示されているデータが真実であるなら、原子力発電の「安全神話」は、技術の進歩ではなく広告のバラマキによって作られた砂上の楼閣だったことになる。
何兆円もの資金があったのなら、なぜ、世論を騙すのではなく、技術を革新することに投資しなかったのか?技術立国を目指すのであれば、技術そのものに人もカネも使ってほしい。
原発広告に「大本営発表」に乗せられてしまった人たちには、きちんと自己批判してほしい。
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原発に関して「いくらくらい」「どのように」広報活動が展開され、その日本最大の広告費でメディアの自主規制を陰に陽に招いていたかを、豊富な事例とデータを基に描いている。反原発ではあるけど冷静な第三者的な筆致が守られており、国家プロパガンダ研究の書としても有用。
しかし、これだけの広告コストを独占企業が総括原価方式で電気代に計上するとかよく見逃されていたものです、というか国家広報の一翼だっただけの話ではありますが。
広報費用・再処理費用を考えると原発にコストメリットなど無かったのは明らかなことですが、バブルの時に買ってしまった(しかもトイレも無い)マンションみたいなものなのだから、原発のコストを明示した上で、コストの高い原発も含めたベストミックスを考えて運用していかなくてはいかんのでしょうな。
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原発推進広告のオンパレード。よくも集めたり。しかし実際は原発広告は膨大で、本書にあるのはその一部だと。どうして寡占事業に広告がいるのか。答えは本書で。
意見広告のようでいて、反論の余地のない一方的なカネに物を言わせたやり方はどうなのだ、と、かなり前に天野祐吉さんが広告批評で原発広告をとりあげていた。ここは必見である。
プロパガンダのやり方、の本とも言える。原発業界というより広告業界(大手広告代理店)に怒りを向けたい、というのが真意だとは思うのだが。
どんな業界にしても、大きくなりすぎたところ、力を持ちすぎたところがあらわれると、あとはこうなるのだと。食品も、実のところこんな感じだろう。となると自動車やら通信なんかも危ないのかなあ。それでもって、そういう業界が頼るところが所謂デンパク、だとすると、あらゆるメディア広告は同質だ! なんてのは早合点か。
従来は、原発広告は事故のたびに増え、謹慎と復活の繰り返し。今後はどうなるのか。でもそれだけが問題ではない。
メディアと電力業界の…なんていう枠だけに押し込めて怒るんじゃあなくて、いろんなところに頭を働かせて読むべき本。
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あ、この広告ね。うん、このCM見たことある。1970年~2011年の間に、電力9社が費やした広告宣伝費は、2兆4179億円超。
もちろん、その費用の原資はあなたや私が支払っている電力料金から、そしてその多くは「原子力発電所は絶対に事故を起さない」「万一事故が起きても放射能は絶対に外に漏れない」「原発は安全・安心なシステム」という福島第一原発事故で露呈した嘘で固められた原発神話を作り上げるための物であった。
「電通と原発報道」で日本の広告業界が電通を通じた巨大マネー(原資は電力料金)によって、情報統制されている事実を淡々と明らかにした筆者が、その証左として3.11以前の広告の実例を列挙したこの本を、できるだけ多くの人の目にふれさせたい。そして、その事実を実感して欲しい。
新聞テレビ等のマスコミには頼れない、なぜなら彼らこそ巨大マネーを受け取り情報統制に積極的に参加してきた当事者たちだから。
その広告等に出演、参加してきた著名人、芸能人は責めない。なぜなら、彼らも私たちも巨大マネーに騙されてきたのだから。そして、だからこそ彼らにに期待する。南アフリカのアパルトヘイトに反対して"Sun City"を歌い訴えた多くのアーティストたちのように、立ち上がることを。
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原発安全神話を作り上げた原発広告をプロパガンダの一種と見做し、その歴史と構造を探った書。
1991年に作成された「原子力PA方策の考え方」は原発広告の舞台裏が垣間見えて興味深いし(p.48-64)、「私も脱原発だ」と公言して都知事選に立候補した舛添要一氏が過去にちゃっかり原発推進派のシンポジウムで基調講演を務めていた模様が収録されている点も見逃せない(p.244)。
ただ、広告の分析は表層的で決して鋭いものではないし、事実なのか著者の臆断なのかよく分からない表現が散見されるのもいただけない。したがって、本書の価値は歴代の原発広告を多数掲載した資料性の高さにあると言って良いのだが、縮小された広告の文字が小さすぎてほとんど解読できないのは致命的。
目の付け所は面白いと思ったのだが…。素材が良くても作りが雑なのは何とも残念。
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原発がどう宣伝されてきたか。雑誌や新聞広告から読み解く。
その時は安全だと思ってたんだろうなー、まさか自分が生きてる間に事故が起きるとかも思ってなかったんだろうなーとか。
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過去の原発広告がどのようなものか知りたかったので購入。マスメディアへの癒着具合の情報以上に様々な広告を知ることが出来た本でした。
プロパガンダの一種として読み応えがありました。原発広告に携わった人達の言葉なども聞きたかった。
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「電気を大切ね」。テレビ・コマーシャルで語りかけていた
東京電力のキャラクター・でんこちゃんは、あの原発事故
から姿を消した。
本名は「分電でんこ」。描いたのは内田潤菊。どうやら家族も
いるらしい。でも、今は家族ともども行方不明だ。
でんこちゃんと同じように姿を消したのが、オール電化住宅
のコマーシャル。これだって、原発ありきの商品だものな。
福島第一原発事故以前、メディアには電力会社や電気事業
連合会、資源エネルギー庁の広告が溢れていた。
原子力発電はエコです。クリーンです。安全です。事故は起こり
ません。万一、事故があっても放射能を封じ込める対策が出来
ています。
約40年に渡って膨大な費用を投入して行われて来た原発
プロパガンダ。現在は電力会社や関係機関のホームページ
からも抹殺された原発広告の歴史をひも解いたのが本書だ。
著者は元広告代理店勤務。前著『電通と原発報道』は少々
物足りなかったが、本書では前職の本領発揮だ。
いわゆる原子力ムラがいかに原発への批判を抑え込んで来たか。
それはテレビ・ニュースのスポンサーを抑えることで、いとも簡単
に出来るのだ。
スポンサー批判はご法度。第4の権力であるはずのメディアは、
金の為には自主規制路線を突っ走る。最も酷いのは自民党の
御用新聞・読売新聞なのだが。
福島第一原発の事故で原発推進派の宣伝は影を潜めたと
思っていたのだが、地方紙ではこそこそと復活の兆しである
ことを本書で知った。懲りない人たちはまだまだいるんだな。
著者自らは反原発だったので、代理店勤務の際には原発広告
の仕事を断ったそうだ。だが、広告業界に身を置いたひとりと
して、本書で原発広告の成り立ちを解説したのは著者なりの
懺悔なのだろう。
入手困難になっている原発広告が多く掲載されている本書は、
資料的な価値も高いのではないだろうか。
40年に渡って続けられて来た原発プロパガンダ。もう、誰も
騙されないぞ。
尚、電力各社や関連組織が行って来た大量の原発広告の
資金は、私たちの支払って来た電気料金から出されている。