投稿元:
レビューを見る
珍しく3日ぐらいで一気に読んだ。
決壊やドーンもそうだが、難解な表現手法を省いて軽妙に書かれたみたいな部類に属する平野氏の小説。ストーリーも追いやすいし、展開も抑揚が大きく先をめくる楽しみがある。なんかこういう路線でもっともっと突き進んだら、それはそれで受けるんではないかと思ってみたり。
テーマを考えようと思えば考えられるし、ストーリーを追うだけでも楽しいみたいなジャンル。他の平野氏作品のような、さぁこのテーマを考えてごらんなさいと突きつけられているような感じがしないところが、良いところでもあり、物足りないところでもある。
オチが某作品に絡めて、というのは予想外でした。
投稿元:
レビューを見る
義足を作るということを通して、仕事とは、価値を生み出すとはということを問いかけてくる。自分自身でも良くわからない、処理できない気持ちにじっくり向き合って整理していく過程が印象的だった。
最後に希望が持てて良かった、
投稿元:
レビューを見る
恋が、刹那的に激しく昂ぶって、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け入れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない。
投稿元:
レビューを見る
恋愛物が苦手なのだが、「マチネの終わりに」が良かったので読んでみた。
タイトルが「かたちだけの愛」とあるので、結局最後別れてしまう話かと思っていたが、どうもタイトルの「かたち」は義足という形あるものをめぐる「愛のかたち」についてを示しているような気がする。
この作品はプロダクト・デザイナー相良郁哉は、雨の日に職場の近くで起こった交通事故で女優・叶世久美子を助けるが、片足を切断してしまう。偶然にも相良と過去取引がある病院に入院し、病院経営者・原田紫づ香から、久美子の従来の概念を覆すような義足のデザインの依頼を受け、義足制作の中で恋愛に進展するという内容。
実は、久美子の相良への態度や会話が駆け引きの恋愛のように感じられ、久美子をあまり好きにはなれなかった。
好きになった人に自分の気持ちを素直に伝えることができない不器用さというより自分のために何もかも投げ出してくれる人か否かを測っているように常に感じる。確かに、事故により突然、昨日の自分とは異なり障害者になり、今まで憧れの目で見られていたのが一転し、哀れみの目で見られるようになるのだから、この駆け引きの態度が事故以降であれば、致し方ないことではある。が、以前からではないかと思ってしまう。こう感じることも久美子を好きではないからであろう。
また相良にしても、久美子と自分の母とを重ねている理由をわかっているのに、久美子を愛することができるのは、少年時代に叶わなかった母への、母からの愛からなのではないだろうか。
片足を失った久美子と、相良が制作する義足で繋がった愛のように感じ、儚く感じる。このふたりが同じ思いで互いを必要とするのであればそれも愛かと考えてしまう。私には少し重かった。
投稿元:
レビューを見る
いかにも「男性がかく恋愛モノ」という印象。
事故で左足を失ったお騒がせ女優・久美子と、彼女の義足製作に携わるデザイナー相良との間に芽生える恋。タイトルの「かたちある愛」=義足?の事かと解釈。
久美子との順調な交際にいちいち興奮しながらも、やはり相良はスキャンダルの多い彼女に、男狂いの母親を終始重ね続けていたのでは、と思う。他の方のレビューを読むと、この作品は平野氏の”分人主義思想”が極めて強く現れているらしいが、「彼女を愛している自分」について最後についでのように述べられている点以外は、単なる陳腐な恋愛小説でしかないと思わせる話運び。
サポートメンバーの淡谷、庄司、緒方君あたりのキャラクターはリアリティがあったが、相良と三笠の分かりやすい敵対関係はその分ちょっと薄っぺらかった。また、久美子の”インラン”設定はどうなったのか。マチネでもそうだが、ヒロインを必要以上にキラキラさせる書き方は本当に冷める。いい加減にしてほしい。
読了したけれど「読み終わった〜!」って爽快感は皆無。細部がとにかく陳腐なのを、美しい表現で覆い隠している感が否めない。
投稿元:
レビューを見る
作中で相良は2人に自分のマイナスな過去・生い立ちを話している。マイナスな過去・生い立ちを話すのはとても勇気のいることだし、本当に仲を深めたいと思った人にしか自分は話せない。
話しても良いと思うような人と出会えることは幸せだと思う。
「私とは何か」で好きな考え方の一つである、
「誰といるときの分人が好きなのか」をテーマにしてたのも良かった。
投稿元:
レビューを見る
平野作品読了するとかいつも、考えや感情を言葉で表すことの難しさを痛感する。
作中にも何度か触れられているが、久美が女性には受け入れられにくいということ。これは現実にも多々あることだが、確たる理由も見つからず後付けの理由で人を好きになれないことがある。個人的には感覚で判断していることなんだと思うけど、正に最後までその感覚をもって久実を好きになることができなかった。
ただ物語でこの感覚・感情を煽られたことに非常に驚いている。じわじわと蝕まれるような気持ちの悪さを味わって欲しいと思うけれど、現実世界で久美みたいな女性に惹かれてしまう人はまた全く別の感想を持つんだろうなぁ。そっちの気持ちも味わってみたいな、と。
投稿元:
レビューを見る
愛する女性の元カレの遍歴に対する考え方のくだりが共感できた
自分より年上の男女の官能シーンだからか、何か気持ちの悪いものを感じた
本当の愛ってなんなんだろう
なんだかんだ、好きという感情の裏には計算的なものや汚さを感じざるを得ない
資本主義やSNSの普及による弊害なのかな
投稿元:
レビューを見る
ありきたりな言い方しかできないけど、ほんとに本当に、読み応えのあるすごい小説です。
「ドーン」も、宇宙開発から米大統領選まで、すごい壮大な話でありながら、最終的には「愛」のストーリーだったことに驚かされたけど、これはタイトルからしてもちろん「愛」の話です。
「愛とは何か」っていう究極の問いから書かれた小説なのか、分からないけど、お腹に「ずん」と来る読み応えのある場面が随所に出てくる。
事故の場面、事故にあった女優をたすけた主人公の“相良”が、彼女に会いに行く場面、彼女と体を重ねる場面、「魔性の女」と言われた彼女が縁を切れなかったヤクザな男との対決場面・・・。
あと、いい小説は、脇役のキャラが良い。興奮して自分の言うことに「ええ!ええ!」と相槌を打ちながらしゃべる「曾我」、小さなことでも大きなことでも驚きを「マジっすか」で表現する「緒方くん」。義足を作る装具師の「淡谷大三治(あやわだいさんじ)」。
「かたちのない愛」「かたちだけの愛」「愛のかたち」。
相良を導いた女性が言う、「愛にはかたちも大事ですよ。単なる恋とは違うんですから」。
うーん、深い!!!
平野くんは、たまたま小説家になったけど、もしかしたら宇宙飛行士になっても医者になってもデザイナーになっても一流なんじゃないかな、と思った。
投稿元:
レビューを見る
分人主義でいう愛とは「この人といる時の自分が好き」という相手との呼応で感じるハピネス。
かたちだけの愛
愛のかたち
かたちのない愛
愛のないかたち
脚に恋している、顔が好き、かたちだけ愛している
骨折してみたくなるほどカッコいい松葉杖
かたちだけの愛
かたちが変わっても愛
「かたちだけの結婚なら、続ける意味なんてない。」
「最後だから教えて。ね? 愛って何? あなたにとって、本当に大切なものなの?」
「いい加減にしてくれないか。」
「教えて。愛って何?」
喰い下がられて、彼はとうとう、観念したように言った。 「何だろうね。……少なくとも、水や空気みたいに、無いと死ぬってほどのものでもないよ。」
「愛には、かたちも大事ですよ。単なる恋とは違うんですから。」
投稿元:
レビューを見る
事故で片脚を失った女優と義足デザイナーの間に生まれた愛を描く
設定も登場人物もそこまで好きになれなかったけど(それも計算のうちかも)、はっとさせられる表現に出会えるから平野さんの本はやめられない
話としてはシンプルだけど繊細な心理・情景描写でドラマの中に入り込んだ気分になれる
✏技能とは、何であれ、その人の時間の使い方の果実である
✏愛とは、相手の存在が自らを愛させてくれること
✏ひとは純粋な欲望だけでなく、純粋な思いやり、つまりは親切だけでも交われるが、それを愛と錯覚し続けるには少々繊細すぎる
投稿元:
レビューを見る
読み出したら止まらない、平野啓一郎作品。話の展開は他の作品に比べて平坦ではあったが、描写が本当に秀逸である。人物像もさることながら、京大出身の男性に何故このようにファッションのことが手に取るように書けるのだろうか?(完全に偏見であり、決めつけであり、昨今のジェンダー問題に抵触しそうであるが)と驚きと同時に、才能のある作家はどんなことを書かせても一流であると感じずにはいられない。
投稿元:
レビューを見る
平野さんの本も三冊目。
前回読んだ本が結構私の中ではSF的だったので
今回は、普通な設定(そうでもないけど)で良かった。
形だけの愛というか、女の、女優のプライドというか理解できないけど、いろんなことを足し算したりしながらする恋愛っていうのは、やっぱりなんだかね~と思いながら聞いた本だった。
面白かったけど展開はかなりゆっくり。
投稿元:
レビューを見る
読みやすい恋愛小説。
最後の愛についての考察、わたしもそうなのではないかと最近考えていた。
自分のままでいられ、くつろげる、自分を含めたその空間と時間もまるごと好きでいられる。
そうできる相手に出会い、同じでいられることは紛れもなく幸せだと思う。
投稿元:
レビューを見る
愛するってなんだろうと深く考えさせられた。
他の誰といる時の自分よりも好きで、そんな自分を愛せる。そういう相手を見つけるといいのかもしれないと思った。
愛って深い。