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(2016.11.29読了)(2016.11.27借入)
副題「水俣病と原田正純先生」
医師としてのスタート時点から水俣病にかかわり、一生涯かかわり続けることになってしまった原田正純医師の伝記です。原田先生は、2012年6月に77歳で亡くなっています。
子供向けの伝記としてもう一冊出版されています。
「よかたい先生」三枝三七子著、学研教育出版、2013.08.17
『よかたい先生』は、絵本作家の作品なので、作者の挿絵が添えてあるのですが、こちらは写真が添えられています。水俣病になった猫、チッソの工場から流れ出る汚水、水俣病の患者さんの指、水俣病にかかった子供たち、これらの写真は衝撃的です。文章よりも雄弁かもしれません。
【目次】
はじめに
1 ネコが消えた
2 医者は来るな
3 教科書とちがう?
4 早く証明しないと
5 バンザイはできない
6 さわぎを起こすな
7 宝子
8 先生は名誉首長
9 ぜったいに終わらない
10 死ぬまではだいじょうぶ
あとがき
関連年表・原田先生略歴
ご協力いただいたみなさま
参考資料一覧
●仕返し(68頁)
「ばくだんを持って工場につっこもうと思ったりもしたよ。でも、チッソの人にもおくさんや子どもがいる。家族が死んだら、悲しむだろうなと思うと、できなかったんだよ」
●みんな水俣病(78頁)
同じ毒が体に入っても、死ぬ人もいれば、軽い症状の人もいる。それは重さがちがうだけで、みんな水俣病なんだ
●へその緒(82頁)
工場が有機水銀をたくさんたれ流した時期には、住民のへその緒は毒でいっぱいでした。たれ流しがへると、へその緒の毒もへっていたのです。
海をよごすことは、人間の体のなかをよごすこと。海に毒を流すことは、赤ちゃんに毒をあげるのと同じこと。
☆関連図書(既読)
「水俣病」原田正純著、岩波新書、1972.11.22
「水俣病は終っていない」原田正純著、岩波新書、1985.02.20
「水俣の赤い海」原田正純著、フレーベル館、2006.10.
「よかたい先生」三枝三七子著、学研教育出版、2013.08.17
「証言水俣病」栗原彬編、岩波新書、2000.02.18
「水俣病の科学 増補版」西村肇・岡本達明著、日本評論社、2006.07.15
「新装版苦海浄土」石牟礼道子著、講談社文庫、2004.07.15
「天の魚 続・苦海浄土」石牟礼道子著、講談社文庫、1980.04.15
「苦海浄土 池澤夏樹=個人編集世界文学全集」石牟礼道子著、河出書房新社、2011.01.30
「石牟礼道子『苦海浄土』」若松英輔著、NHK出版、2016.09.01
(2016年12月9日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
「水俣病」という公害病に、一生をかけて向きあったお医者さん、原田正純先生。「医者なのに、患者さんを治してあげられない…」原田先生は、ずっと悩み、考えつづけました。そして、「治らない病気だからこそ、やるべきことがたくさんあるんだ」そう、気づくのです。いつも笑顔で、患者さんに寄りそいつづけた原田先生の物語がはじまります。