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報道される独裁者達が自国民を虐殺するなどの暴挙を見聞きしたとき、なんでそんな馬鹿なことをするのだろう。自分が独裁者の立場だったら絶対そんなことしないと思ったことのある人。そういう人への回答となるかもしれない本。
独裁者に限らず組織を支配する人間が守らなければならないルール、支配者を支配するルールが存在する。
一見すると暴挙にみえる独裁者の行動もそのルールを忠実に守っているに過ぎないと筆者は言う。
そのルールはいかなるものかを古今東西の独裁者と呼ばれる人たちの行動を例に皮肉たっぷりの表現を織り交ぜながら解説している。
独裁と民主主義に境界は無いという新視点の政治論であり、一見すると不合理に見える支配者の行動に潜む合理性がはっきりと示されている。
資源が豊富な独裁政権国家ほど民衆を省みない理由、貧しい国家では民主化が進みやすい理由などの解説としてとても腑に落ちるものだった。
かなり濃い色眼鏡で見たからこその話であり、これが唯一無二の解釈だってことはないのだろうが、こういう眼鏡で見るからこそ見える世界は確かにある。
タイトルからは独裁者になる方法を想像するが、作者のメッセージとしては支配者が支配されるルールに習熟することでよりよい世界になることを期待するものであった。ただ、そのためにはこのルールに習熟する人が少しでも増える必要があり、その意味でも多くの人に読んでもらいたいと思う。
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独裁者、民主制の代表者を問わず、支配者が支配者であるために、支配されるルールがある。それは「支配を支えるために不可欠な人たちの忠誠をいかに維持するか」という、シンプルなものだ。内政も外交もそのルールに支配されている。本書ではそれを明るみに出すことで、「民主制・独裁制」などのレトリックで政治を捉えては見逃してしまうような現実が明らかにされていく。
論理はとても明快で面白いのだが、邦訳が酷すぎて読みにくいのがもったいない。原著で読めればそちらをオススメしたい。
なぜ多額の援助にも関わらず途上国は豊かにならないのか、なぜ既存の独裁者を打倒したのにも関わらずその国の民主化が進まないのか、などが良くわかる。
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タイトルも内容も大変ウィットに富んでいますが、言わんとする主張はいたって真面目です。
本書は、民主主義と独裁を対比させながら、「私たちがどのように統治され、どのように組織の一員となっているかということのウラにある事情や理由を明らかに」しながら、「どのようにより良い世界を築いていくべきか」ということを説いています。
民主的か独裁的かというのは、民主主義は平和的で平等な優れたシステムであり、独裁は野蛮で数人の利益だけが最優先される愚かなシステム、、、というのが一般的な前提かと思います。しかし著者による前提は、民主主義も独裁も「権力を維持する」という目的を達成するためのシステムであり、そこに境界はない、というものです。
民主と独裁の何が「違わないのか」。それはリーダーの支持基盤となる3つの集団の存在です。
その3つとは「名目的な有権者集団」すなわち取り替えのきく者、「実質的な有権者集団」すなわち影響力のある者、そして、「かけがえのない盟友集団」です。
「かけがえのない盟友集団」が大きければ民主的になり、小さければ独裁になっていくわけです。
すなわち、独裁と民主というものは連続的であり、かけがえのない盟友集団の大きさがリーダーのとる行動を変化させるのです。
たとえば、リーダーの支持基盤が小さな数人の「かけがいのない盟友集団」によって成立している場合は、金で権力を維持することが可能ですが、「かけがえのない盟友集団」が大きすぎる場合にはそうもいかず、インフラや社会システムといったことに注力する必要があるわけです。
つまり、リーダーがとる行動というのは、「誰をかけがえのない盟友集団と捉えているのか」ということに依存していると言えます。
自分の生活にひるがえって考えると、自分の属している組織(会社とか部署とか地域コミュニティとか)のリーダーがなぜそのような行動に出ているのか、ということを理解するのに大変役に立つと思います。
まぁ、それだけでは面白くないでしょうから、いつしか自分がリーダーになったときに、自分はどのように振る舞うべきか、というためのハンドブックとして手元に置いておくのもいいでしょう。
自分が独裁的でありたいか、民主的でありたいかを判断、もしくは診断するのにはもってこいです。
ふんだんに紹介される具体的な事例も大変興味深いです。なぜ民主国家同士は戦争をしないのか?とか、海外援助が貧困を加速させるといった議論など、シニカルな事例が盛りだくさんです。
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どんな国家の指導者であっても、その目指すところは権力の維持にあり、それが政治体制(当該国家に於ける権力の集中/分散度合い)によってアプローチが異なるだけ。民主主義国家の大統領が高潔なわけでも独裁者が卑劣なわけでもない。
・・・みたいな話。抜群に面白い。内容も然ることながら、和訳・タイトル・装丁、全てがよく出来てるなぁ、と。
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政治学的アプローチからの独裁力。国家権力の話が中心だったので、日常にはすぐに使えないがためにはなる。さて、どうやって応用しようかな?
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「政権は、素早く介入して人々が反抗し続けるのが怖くなるまで反抗分子を殴打し、逮捕し、殺害した。」
独裁者として君臨し続けるにはどうすればよいのか。それに対する心得が書かれている。盟友の数は少なくし、彼らにはしっかり金を回す。反抗勢力は早い段階で徹底的に潰す。国債の発行で負債を将来にまわす。震災等に基づく難民キャンプは集団を形成する恐れがあるので潰す。などなど、大変勉強になる。
カダフィが自国民に対して空爆をした、というニュースを聞いた時は、その意味が分からなかった。しかし、今なら分かる。
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「リーダーが行動を起こす動機と行動を思いとどまる制約についての研究の集大成」(p.359)で、いくつかのルールをもとに、様々な国や会社をその定式にあてはめて理解していくもの。例えば、リーダーにとって「最善の」支配とは、「まずは権力を握り、次に権力の座に居座り続け、そして、その間はできるだけ多く国(や会社)の金を恣にする。」(p.45)というルールや、民主国家は勝利を確信できるときに戦争をする(例えば、「冷戦が熱い戦争にならずに冷戦であり続けたのも、明らかに大きな支持者集団によって支えられた体制であるアメリカが、格段の努力にもかかわらず勝利を確信できなかったからに他ならない」(p.302))というルールなど。
リーダーとその「盟友集団」の数、がポイントらしい。あるいはリーダーの権力掌握に影響を及ぼす集団がどれだけいるか、というのがポイントらしい。おれは国際情勢や政治の話は苦手なので、正直、例がよく分からなかったり、結構上滑りしたまま読んでしまったので、まだまだ理解できていない。(訳が読みにくい、ように感じるのだけど…。それはおれの理解が足りてないからなのか?)でも、世の中そんなものだよな、綺麗事で終わらないよな、ということくらいは分かる。例えば「賢明なリーダーは、権力掌握のために働いた盟友をそれほど顧慮しない」(p.102)で、「かけがえのない盟友を排除し、入れ替え、絞り込んだ末にこそリーダーの将来は、安泰になる」(同)らしい。「いわゆる自由主義者といわゆる保守主義者は、それぞれの選挙において勝つチャンスを得られる得意分野を設けているに過ぎない。」(p.191)というのは新しい考えだが、納得がいく。そして、「アメリカは、便利な独裁者を利用してきた長い歴史」(p.252)があって、「民主主義者は、海外においては民主的な体制よりも、従順な体制を好む」(同)、というのは生々しい。そして、「自腹を切らずに援助したい」(p.253)=「自腹を切ることになるなら援助はしたくない」とか、海外援助とか言って、結局は「政治が善行に勝る」(p.232)とか、結局寄付なんかしても、誰かの懐に入っていく、「NGOが政府に金を盗みとる機会を与え、さらには悪しき政府がその地位を保てるようにして民衆の厄災が続くことを手助けしている」(p.239)なんて読むと、もう寄付なんか絶対しなーい、と思ってしまった。
訳者も、そして著者も繰り返し述べているが、この本は「『支配者が支配されるルール』に習熟」(p.7)することで、「独裁によって多くの人々が被る苦難をいかに終わらせるか」(同)について考える本。どうせなら、岡田斗司夫『世界征服は可能か』みたいに、皮肉を重ねてユーモアにまで持っていってくれればよかった。(25/11/1)
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「独裁者」がいかにして権力を掌握し、支配体制を維持しているか、その仕組みについて解説している本。
これを読んで「独裁者になることを目指す」というよりは、(もちろん筆者も述べているが)権力を維持させる仕組みを理解し、独裁者の倒すためにどのように働きかけるべきかを考えるための本。
独裁者を支える「盟友集団」を瓦解させることこそが、肝要である。
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独裁者のためのハンドブック。傍から見ると自己中心的で自分勝手、傲慢な悪政をしているようにしか見えない世界の独裁者たち。そういった独裁者たちがなぜ長期間権力者の座を維持できるのか、その理由が明確にわかりました。結局はお金と利権をどうばらまいて、自分への忠誠心につなげるのかということかも。
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【由来】
・honzと佐藤優
【期待したもの】
・
【ノート】
・タイトルからすると、人を支配するためのノウハウが書かれている本かと思うが、内容としては、政治的権力者の内在的理論について分析した本。
例えば、自然災害などによる世界からの善意の義援金などは独裁国家にとっては格好のたかり対象。あえて国民を救出せず、その救出を名目に援助金を釣り上げる。この手口は開発援助でも使いまわされる。民衆に届くことはなく、援助する側も実はそのことを把握しているが、独裁者が自分たちの意向に沿う政策を取っている限り、別に構わないというスタンスだったりする。そして、そんな「援助する側」の姿勢は、我々の姿の反映でもあるってところを忘れちゃいけない。「我々は西アフリカや中東の本当の変化よりも、安い価格の原油を求めているのである。したがって我々は、リーダーが我々の希望することがらを実行しようとするのに対して、不満を言うべきではない。これはつまるところ、民主主義とはこのようなものだ、ということを示している。 (P254)」
・独裁者は、少数の「かけがえのない盟友(他にもっとしっくりくる日本語はないのかな?)」に、ケチることなくおいしい思いを保障しておくことがポイント、という基本構造が一貫して主張されている。そして、この「かけがえのない盟友」という支持基盤が少数の取り巻きというレベルではなく、多数になればなるほど、構造的に民主主義に寄っていくことになる。民主的社会であれば「独裁者」ではなく「リーダー」と呼び名が変わるが、抽象した構造は、実は似通っている。また、オリンピック委員会やFIFAなんかも「独裁者と少数の盟友」によって運営されている組織として引き合いに出されている。
・実際の独裁者のエピソードを例として解説されていて、面白く読める箇所もあるんだけど、訳が少し読みづらくて、自分にとっては読み通すのがキツかった。ちなみに、独裁者のためのルールは以下の5条だそうです。
・ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
・ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
・ルール3 歳入をコントロールせよ
・ルール4 盟友には、忠誠を保つに足る分だけ見返りを与えよ
・ルール5 庶民の暮らしをよくするために、盟友の分け前をピンハネするな (P69)
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この本では、独裁国家・民主国家関係なく、トップの人は、少数の盟友のために行動しているということ、最初から最後までずっと言っています。
言い回し・例は違うが結局同じことを言っているだけで、本の厚さに比例しない内容の量だった。
北朝鮮で、一般市民が餓えようが、どうなろうと関係なく、
自分を支持する幹部たちに金を与え、支持を継続させることが大事だっていうこと。
https://seisenudoku.seesaa.net/article/473784364.html
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ある医師の方が、ボランティアで正確な情報を届ける活動(厚労省や政治家からの依頼で行っているわけでもなく(分科会などのようなアドバイザリーボードとは違う・関係がない)、当然見返りや報酬があるわけでもない)をしているにも関わらず、
御用学者だの、厚労省と繋がっているんだろ、だのと誹謗中傷を受けまくっている頃-今でも続いているけどー、音声配信でぽろっと「そういう人は政治の仕組みを分かっていない。『独裁者のためのハンドブック』と言う本が面白いから読んでみるといいよ」と皮肉半分、本好きのその先生らしいリスナーへの本紹介半分、この本について触れていた。
それで、面白うそうだな、と思って手に取った。帯の【独裁と民主主義に境界はない!】に衝撃を受けるが、本書を読み進めていくと、なるほどな、と思う。【カネとヒトを支配する権力構造】を理解すると、確かに、民主主義国家とて、独裁国家と、その基本的な権力構造はなんら変わりないのであって、説明されてみれば、権力構造って国も企業も自治体もこうだよね、と。
ただ、『本書は、『独裁者のためのハンドブック』というタイトルからして著者の皮肉が込められている。著者の意図は、いかにして読者が独裁者になるか、あるいは盟友集団に加わって私的な見返りや特徴の恩恵にあずかるかではなく、独裁によって多くの人々が被る苦難をいかに終わらせるかと言う点にある。「支配者が支配されるルール」に習熟すれば、私たちにも勝ち目があるというのが著者からのメッセージである』(訳者まえがき)
と言うように、ただ権力の構造を知って悲嘆すると言うよりは、知らないと戦い方も分からないですよね、と言う本なのだ。
最後の締めくくりの章でこう書かれている。『私たちはすでに有権者集団や影響力のある者、そして盟友集団が回している政治のすべてについて学んで来た。それらすべてを拡大すれば、取り換えのきく者たちも盟友集団ほどには利口になるし、あらゆることが圧倒的多数の人々にとって良くなるようにかわるだろう』
しかし、無力な安月給の庶民には、権力の構造を改めて知ったとて、具体的に何をしたら大きな力となるのか・・・結局選挙に行くと言う基本のキしかないのか・・・
結局、冒頭のこの思いに引き戻されてしまうのだ。『政治は、まったくわけのわからないことばかりだ。私たちは、日々トップ・ニュースにショックを受け、驚かされる。毎日のそんなニュースに登場するのは、詐欺をはたらき、不正を犯し、二枚舌を使う企業経営者や、嘘を重ねて他人の物を掠め盗り、残虐行為のはあげくに人まで殺す為政者の姿である』
ところで、残念な点だが、少し読みにくく、読むのに結構な時間がかかった。ケーススタディを取り上げながら、1つ1つ分析していくが、基本的に言っていることと言うか主張の軸が同じなので、冗長に感じると言うこともあるのだが、訳が読みにくいと感じる。こういう内容の本は、そもそもが読みやすい文章ではないのかもしれないが、いかにも外国語を日本語に訳しました、と言う感じの読み口で、もう少し日本語らしい表現の工夫などあると読みやすかったのかも、���、
・印象に残った
昨年、東京オリンピックが行われ、読書中には北京オリンピックが開催中だったこともあり第6章の【賄賂と腐敗】の中の”娯楽と金を追求するIOC”はタイムリー過ぎて苦笑してしまった。『IOCにとって、政治的および個人的歪曲から解放された中で、国際的なスポーツ競技の質(およびおそらく量)の向上よりも大切なものは何だろうか?答えは贅沢な娯楽と金である』(長野オリンピックを勝ち取った際、日本は440万ドル以上を、IOC委員への接待費に費やした、とありますね、、、)
・抜粋
独裁者のための五つのルール
●ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
●ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
●ルール3 歳入をコントロールせよ
●ルール4 盟友には、忠誠を保つに足るだけ見返りを与えよ
●ルール5 庶民の暮らしを良くするために、盟友の分け前をピンハネするな
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自分以外のものを大きく見てしまうことが私の弱点だと思っていたが、ほとんどの人間は心理上そう感じている。ただし、その心理を多数の手法を使うことでより大きく見せ、偉大な独裁者となっている。全員が全員中身が悪者はわからないが、手法によっては誰でも独裁者になれるし、そう見せることができる