投稿元:
レビューを見る
ある中年コピーライターの仕事と愛。日本語ブームや言語科学の知見が織り込まれた読み応えある物語。金水敏先生の解説(ファンレター)もすてき。
投稿元:
レビューを見る
日本語の言葉にまつわる話題を絡めた恋愛小説という不思議な話。前半の伏線が最後に収束して行くストーリーも秀逸だし、読み終わったときちょっとだけ言葉に対する意識が高まった気がした。
投稿元:
レビューを見る
軽妙洒脱な語り口で、膨大なウンチクをわかりやすく面白く盛りつつ、大真面目なテーマの物語を淡々と進めつつ、終盤で「あれ?あれ??あれれ???」となる清水ワールドを堪能。この感覚を味わわせてもらうのは本当に久しぶりの気がする。
「床屋」のエピソードは『図書館戦争』にも出てきた。出版業界の自主規制という名の言葉狩りについて、思うところのない文筆家はいないだろう。私が編集者を辞めたあまたの理由の一つも、このあたりにある。
そういえば『世にも奇妙な物語』2014年春版に清水義範の大昔の短編が原作として採用されていた。清水作品はあの番組への採用数がそこそこ多いと思うが、この小説は未来永劫映像化されることはないだろう(笑) 気骨のある演出家の舞台劇なら、ありかな?
投稿元:
レビューを見る
時代の空気を的確に読み、時に先行し日本語を変えてゆくコピーライター。変化があるから言葉は新しい力を持てる。言葉は時代の中で生きている。使われず陳腐化した言葉は次第にその勢いを失い、ついには死んでいく。正しい言葉を守ろうという意識がある一方で言葉というものは必ず正しくない方向に向いていくもの。百年前の小説でさえ読みにくくてしようがない。言葉は生きていて動いている。言葉の中の生命感こそ言葉の醍醐味なのだ。
投稿元:
レビューを見る
17/01/28 4:30am
清水作品としては余り得るものはなかった。
唯一「フェルスター症候群」(Foerster's syndrome) と言う言葉を知ることができたことだけが収穫。
投稿元:
レビューを見る
学生の頃一番好きな科目は国語だった。様々な言葉を知ることが楽しくて仕方なかった。
そんなころに出会った清水義範。
たくさん読んで、こんな言葉も、こんな物語の発想もあるんだななんて本当に毎回驚かされていた。
今回かなり久しぶりに読んだ清水さんの作品がこちら。
日本語に対する造詣の深さに、ため息が漏れる。
やっぱりすごい。
そして日本語って楽しい。
あの頃感じていた気持ちがよみがえってきた。
一応物語形式で話は進んでいくが、これは日本語の面白さを読む小説だと思う。
文字がとぐろを巻いたり、言葉があふれたり。
あ~楽しかった。
投稿元:
レビューを見る
40代初めの売れっ子コピーライター、野田敦。
彼の恋人は、妖艶な女優、新庄百合子。
恋人の愛が冷めていく中で、野田の日本語がおかしくなっていく。
そこらへんの仕掛けが、ああ、清水義範さんだな、と思わされる。
野田はSHK(この後に決して48とかはつかない。「敷島放送協会」の略なんだそうだ)の放送用語委員でもあるという設定で、そこで日本語に関するいろいろな問題が出て来る。
ちょっとお勉強本みたいになるけれど、これはこれで興味深い。
縦書き文書での数字の書き方はどうするべきか。
外国の地名は現在、現地音に近い呼び方をするのに、中国の地名だけは日本語読みしているのは改めるべきなのか。
差別語や、そこまでいかずとも一部の社会集団に不快な思いをさせる可能性がある表現をどこまで自主規制すべきなのか。
これらについて、複数の立場からの見解が開陳されていく。
ダジャレを言いたがるのは、フェルスター症候群という脳の疾患だとか。
そんなことも、本書で初めて知った。
一つだけ、どうも作品に気持ちが乗り切れないのが、主人公の野田の造形。
売れっ子コピーライターで、美人女優を恋人に持つような華やかな、魅力的な人に見えない。
作品後半で「惑乱」していくので、そんなにすかしたイケメンにできないのかもしれないけど。