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いわゆる、竜とか魔法とか剣とかの、王道的なファンタジーは苦手です。
でもこれは、まずタイトルが美しいじゃないですか! タイトルに心奪われて読み始めて。
このお話、好きだ・・・!と思い、時間を無理やり作り出して、それでも3日かけて読みました。おかげで遅刻しかかった(笑)
特徴のある文章は美しいけれど、内容は結構ダークな復讐譚。苦手なはずのグロテスク表現も決して少なくはありません。
本の厚さのわりに内容が濃いというか、このときに主人公カリュドウはこう思った、こう思うに至るまでに彼はこんな日々をこんなことを感じながらこんな行動をとった、などの人物の細かな描写はあまりないんですね。何(どんな思い)を理由に、何をして、何が起こったか、が淡々と語られる。
そこに若干の物足りなさを感じながら読んで、エンドまでたどり着いて、やっと納得。これは、「口承の伝説」なんですね。神話などで「英雄だれそれはどんな人物で何をしたか」は重要だけど、個人の細かな心の動きなんかは必要じゃないのと同じ。この作品、カリュドウの物語でありながら、実は「この世界(この国)の物語」です。
そして、「この世界の物語」でありながら、最後に訪れる客とのやりとりに、カリュドウという人物にやっと触れられたような安心感がありました。
同じ世界を舞台に何作もあるようです。触れてみたいような、この物語ひとつをそっと大切にしまいこみたいような、なんとも複雑な読後感です。
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いま日本でこんな重厚なファンタジーが書かれているのだね。技巧的な構成に比してストーリーは結構単純で神話っぽくあり。
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右手に月石、
左手に黒曜石、
口の中に真珠。
カリュドウは三つの品を持って生まれてきた。
この印象的な一節から始まる物語に、
思えば冒頭から掴まれていた様な気がする。
本好きならきっと、誰もが持ってるだろう
自分と相性の良い作品を嗅ぎ分ける嗅覚。
いわゆる第六感が働いた。
表紙の装丁も素敵だったので、
見た目でも惹かれていたわけだけど。
初めて出会う作家さんの本は買う前に必ず数ページ読んでみる。
でも、この作品は冒頭の4行だけで良かった。
そしてまず、タイトルが美しい。
ファンタジーは大好きだけど幾多あるファンタジーの中には駄作も多い。
それも巧妙に取り繕った"さもそれっぽく作りました"的な似非本格派ファンタジーも最近ではたまに見かける。
ましてや和製(異国モノ)ファンタジーはハンデがありすぎる気はする。
そんななかで、この作品。実に良く出来ている。
乾石智子さんは根っからのファンタジーファンなのだろうと思われる。
読んでいると様々な名作ファンタジーのエッセンスをしばしば見かける、けれどクサくない。
自分の世界観を確立されてるんだな、と感じた。
よく出来たファンタジー作品は実在はしないけれど存在はしている。どこかにこの世界が(パラレルワールドの様に)在る、若しくは在ったんだと感じさせてくれる。
魔術の世界と輪廻転生と、何より本が好きなら、
"言葉の持つチカラ"を信じる人なら、
きっと好きになる作品。
ただ、
乾石さんは若い作家さんなのかな?
文章で時々気になる部分があって、そんな時だけふと現実に戻ってしまったなぁ。
続編も期待。
単行本の装丁もとても素敵なんだけど
予算の関係上、文庫化を大人しく待ちたいと思います。
ちなみに、
キアルス→ケルシュ
紫水晶(アメジスト)→アムサイスト→エムジスト→アンジスト
この辺りは途中で気づいて霧が突然晴れたかの様な爽快感を感じたけれど、
ブリュエ→ガエルクはわからなかったなー(笑)
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その筆力に圧倒され、ぐいぐいと読まされた。読みながら、頭の中でずっとジブリ調のアニメで再生されてしまうのが止められなかった。しかし、内容が重いため、何度も読み返す派としては、心に余裕が無いと読み返せない本。
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読みだして、まず思いだしたのはタニス・リーだった。それからル・グィンのゲド戦記だった。そして、あの巨星のようなダンゼニイを思いだした。
これがデビュー作だなんて信じられないくらい、濃厚で、濃密な読書時間を味わった。とんでもない新人作家が出てきたものだ。これだから読書はやめられないんだ。
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びっくりしました。本を選ぶ時、出版元の腰巻とか宣伝文句は全く参考にしないので、実際に手に取るまで随分時間がかかってしまいましたが、他作品も読みたいと思う作家さんに出会えました。
比喩と体言止めの多い文体は実は苦手で、世界に入るまではちょっと大変に感じました。具体的な描写なのだか、抽象的な叙述なのだか見分けがつきにくいのも、異国の文化のイメージは豊かなのに、細部はともかく広く俯瞰した光景が思い浮かばないのも、なかなか取っ付きにくさを感じました。まぁ、普段アホのように濃密描写の小説を好んでいるせいかもしれませんが。
ぐぐっと心を引きつけられたのは、本の世界に投げ込まれた場面からです。何のことだか分からなかった三つの品物、三人の魔女、三つの時代、三つの人生が一つの物語に撚り合わされていく運命の妙が素晴らしくて、後は一気に読み切りました。
静と動の、光と闇の、そして男と女の、単なる対立項にならない、とても流動的で生物的な結びつきを窺わせる世界を感じました。読める限り、読んでみたい。以前読んだ『夢の蛇』を思わせる感触の本でした。
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右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠を持って生まれた運命の子。
幼いころに大きな喪失体験をした彼はやがて、<夜の写本師>として世界一の魔導師に挑む。これは、千年以上の時を経た壮大な物語です。
ブクログのレビューを通して知ったこの本、ずっと気になっていたのですが、先日図書館で偶然見つけてすぐに借りてきました。これがデビュー作だなんて信じられないくらい濃厚なファンタジー小説です。ファンタジー好きにはたまらない、しっかりと確立された世界観、体系的な魔術の数々、運命的な巡り合わせ、深い闇などなど、心をひたすらくすぐります。
夢あふれるファンタジー小説というより、これは「ゲド戦記」に近い闇の色が濃いファンタジー小説でした。なかなか残酷で、結構怖い。映像化したら美しい場面も数々あるけれど、ホラーになるかもしれない場面もあって、そのバランスがまた絶妙。
嬉しいことに、どうやらこれはシリーズが出ているようで、この世界をまだまだ楽しむことができるよう。大人になっても一気に心を異世界に飛ばしてくれるファンタジーはやっぱりいいと改めて嬉しく噛みしめた1冊でした。写本をはじめ、本好きには嬉しくなる設定もたまらないですね。
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全体的に淡々と物事が進む印象。
前半は訳がわからず話に振り回されたような気がするけど、後半、前半にあった話が繋がり一気に読みました。
私は好きなようです。
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何もかも奪われた者視点で淡々と書かれた復讐譚。一昔前にライトノベルで流行したRPGファンタジーよりは昔ながらのヒロイックファンタジーに近く、国や魔法の体系が凝ってない(良く言えば原始に近い、悪く言えば別れているだけで踏み込みがない)。
長い歴史が関わるので国の興亡や権謀術数やら出てきそうなものですが、そこはあくまで個人の復讐に終始しており、 原初の因果の規模も規模。登場人物も感情が足りず、ドロドロしそうな所業にも関わらず全体的にさらーっと進むので、ちょっと物足りなかった。終わりはいかにも女性が起因した終わり方。宝石とか本の装飾とか人形とか、小物が綺麗。文調は静謐で、さらーっといく原因の一つでもありますが、私は好み。
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これは…すごいものを読んでしまった。
コンパクトながらしっかりしたストーリーもさることながらその描写力、設定にびっくりした。
モモとか、なんだろう、そういう児童文学のファンタジーを大人用に昇華させたような読み味がすばらしいです。この、世界にぐいぐい持っていく力は小野不由美レベルかもしれません。
あらすじを書くと、どこからがネタバレになるのか悩むが、一言で表すと「復讐」だ。
主人公カリュドゥは月石を右手に、左手に黒曜石、そして口の中には真珠を持って生まれてきた。この三つの品には大きな意味があるのだが、そのために母からも気味悪く思われ魔道師エイリャに育てられる。小さな田舎の村で膨大な書物と、いろんなことを教えてくれる育ての親に囲まれて成長するが、ある日、エズキウムの国の魔道師長アンジストが現れカリュドゥの目の前で幼馴染のフィンとともにエイリャを無残に殺してしまった。カリュドゥはアンジストに復讐するため、魔道師の修行をしようとエイリャの遺言であるパドゥキアに向かうことにする。そこで師匠のガエルクのもとで修行を積むが、ある事件により、魔術とは別の力を知る。そして「紙に触れるだけで」殺してしまうことも出来るという「夜の写本師」を目指し、アンジストの暗殺を試みるが、実はアンジストとカリュドゥには知られざる因縁があった。その因縁とはなにか、カリュドゥの生まれながらに持っていた三つの品との関係はなんなんのか…。
とにかく面白いです。
細かな描写がまた美しいんです。
繊細なレースを編むような、丁寧な始まりで、話が大きく動き出すまではむしろ描写の美しさばかりを見てしまいます。丁寧に、ゆっくり読みたい。
そして魔術や、カリュドゥが使う写本師の戦いの描写もすごい。残酷な描写も見られますが、この世界での「魔術」というものは明るさだけではない、闇も苦しみも恨みもあっての魔術なんだ、ということなのでしょう。ちょっと怖いです。
最後はなんとなく切ないけどすてきな終わり方で、悲しくないのに泣きそうでした。
映像化して欲しいようなしてほしくないような。
井辻朱美さんの解説もいいです。
魔法を扱ったファンタジーの代表作を挙げながら、この作品の良さを再認識させてくれます。
シリーズ物の1巻とのことなので続きも追いかけたいです。
ただ文庫化されたのはまだこの作品だけのようなので、ハードカバーで続編を読むかは悩み中です!
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ライトノベルとも児童文学とも違う正統派ファンタジー。
作者は日本人だが、イギリスやアメリカの作家と言われても違和感のないレベル。
三つの証を持って生まれてきた天才少年が、大事な人たちの仇をとるために最強の魔術師を追うという王道。
さらに輪廻転生のおまけつき。
思わず引き込まれる強さを持つ物語だが、惜しむべきは魔術師の女に対する恐怖の説明が中途半端でわかりづらかった。
主役を4人にしたのは飽きさせなくていい演出だが、その分ひとりひとり、特に中心人物である写本師の存在が薄くなってしまっている気がする。
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ストーリーも人物的魅力も薄い内容だけど不思議とぐいぐい読んでしまう。世界観というか、設定となの魅力があるんだと思う。魔法がどちらかといえばおまじない?呪術?のようの怪しく暗いもの。ありそうでなかった魔導師の姿。写本師の修行をしているところはわくわくしてしまった。
ストーリーとしては、1000年前から続く復讐劇といったところ。名前が覚えずらかった。
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緻密な世界観の作り込みと言葉でしか表現できない描写。ファンタジー小説の復権。3つの力、月と海と闇を野心家の魔術師アンジストに奪われた少女の1000年にわたる生まれ変わりと戦い。最後に男として生まれた主人公は奪われた力を取り戻す為、夜の写本師になる。
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ハードカバー版(図書館から借りた)も読んだけど、文庫になったので購入。
月、闇、海の三つの印を持って生まれたカリュドウは、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにする。復讐を決意したカリュドウは・・・
二度目だけど、ぐいぐい引き込まれる。
前よりは登場人物の把握ができたので、より話に引き込まれたのかも・・・
常に闇を背負う魔道師。
宿敵アンジストと千年にもわたる因縁。
そして、アンジストの秘密・・・
ダークな部分ばかりだけど、ラストは爽やかに感じる。
詩的な文章は最初苦手だったけど、それがダークな部分を払拭してより引き込んでくれるのかも。
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本屋に平積みで表紙に惹かれて買いました。
このお話しを知ることができて良かった。
テンポよく、最後まで飽きさせないです。
展開が若干早いかなー、とは思いますが。
シリーズになっているそうなのですが、この一冊でお話しとしては完結してます。