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主婦の主人公と屋根屋が、話の感じから六十代位と思って読んでいたら、途中でもっと若いと分かり、どうしても違和感が…。夢話に引き込まれていっきに読んでしまったが、読み終わると、全部主婦の夢だったんじゃないの…まとめたくなってしまった。
おもしろいんだけど、ケチをつけたくなる、ある意味不思議な小説。
作者と同世代の母には面白かったらしい。
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思っていた話しとちょっと違う。Happyな話しだと思っていたのに。
登場人物に魅力が感じられなかった。
でも夢の記述は理解できる。
夢を見る。
夢の中でも眠りについて夢の中でも夢を見る。
それが繰り返されると何処からが夢で何処からが現実なのか解らなくなる。
自分のベッドで朝目が覚めて、何で現実だと知るんだろう。
夢でも痛みはあるし、体温も感じる。味覚も嗅覚もあるのに。
夢と現実の違いって何?
(図書館)
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村田喜代子とか、多和田陽子とか金井美恵子とか、ゆるぎない独自の世界のある作家は本当に素晴らしい。
読んでいてこの小説世界から抜け出したくない気持ちになる。冷静に考えれば、ちょっと無理のある物語でも、一旦入り込んでしまうと全く気にならない。
安易に屋根屋が男前だったり、二人の関係が発展してしまわないのが良い。あくまで二人で屋根を上から眺め、空を飛ぶうちに漂ってくる官能の雰囲気で十分背徳的な気分になる。(特に黒鳥になってしまうくだりは秀逸)
多分、屋根を修理したり、ヨーロッパや日本の寺院を見て回ったりした著者の経験がこういう小説になったのだろうと考えると、一般人が同じ経験をするよりずっとたくさんのことを学び、考え、感じているんだなと思う。そしてそれを結びつけてしまう能力。
選ばれて作家になった人なのだとつくづく思った。
こういう作家をリアルタイムで読める幸せをかみしめた。
シャガールの表紙絵もぴったり。
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普通の主婦と屋根専門大工との奇天烈な交流を描いたファンタジー作品。
恋愛ものと言えば恋愛ものなんだけど、ふたりの心の通わせ方が斬新。
色恋一辺倒ではない、今までにない恋愛小説だと思う。
ひとつだけ気になったのが、綺麗な風景を描写しながら全然綺麗じゃない単語が連呼されるシーンがあって、意図的なのかもしれないけど、あまりに連呼されるのでげんなりした。
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夢を旅する大人のファンタジー物語。普通の中年の専業主婦が屋根を直しに来た中年男性と夢のなかで旅しながら、夢の中で「ランデブー」をする。こう書いてしまうとプラトニックの不倫小説のように思ってしまうが、相手が無骨な肉体労働をする九州なまりの男性で、夢は日本やヨーロッパの屋根を渡り歩く(飛び回る)というもので不倫、浮気というような感覚はない。屋根屋の男性を道先案内人として夢を旅する不思議なファンタジー小説のように仕上がっている。
このように夢を自由に自分で操ることが出来たら楽しいとふと思ってしまった。しかし、この小説の最後の方でも主人公がどこまでが夢でどこから現実かわからなくなって戸惑うところがある。確かに夢を操ることは現実と夢の区別が出来なくなり、精神的におかしくなってしまうのかもしれない。最後では屋根屋の男性は忽然といなくなり、まさにファンタジーとして終わり、主人公はまた普通の生活に戻っていく。よかったよかった。
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ゴルフ三昧の夫と部活に熱中する息子との日常に退屈している平凡な主婦と、妻を亡くした孤独な屋根屋との、夢の中だけの屋根を巡る旅。
大人の少女漫画という感じ、逆説的だけれど。主人公は、したたかで強い女だ。男性の方がロマンチストで、そして脆い。主人公が介入してこなければ、屋根屋は孤独だけれど、波のない夢の中での屋根を巡る旅を心穏やかに楽しめただろうに。
最初の方の、主人公が料理を振る舞う中で2人の距離が縮まり、初めて主人公が屋根の瓦を踏む、そして夢で二人が屋根の上で会う、その流れが心地よかった。後半の展開は、永瀬だけが追い詰められて主人公は結局何も失わないのがはがゆく、もう少し、なにかえぐられるものが欲しかった。それとも全てが主人公の夢だから、こんなに主人公は優位で足場がぐらつかないのか。
一つのものに執着して(今回は屋根)、それを軸に話が展開していく、こういうタイプの小説は好き。自分自身もそんな風に一つでも譲れないものから世界が広がっていったら嬉しい。そしてこの物語のようには身を滅ぼさないためには、現実を大切にしなければ。
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こんな空想的な発想を、瓦職人の小説て表すなんて素晴らしいです。ホノボノして面白く、最後のオチもメルヘンチックです。
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もっと惑わされたかった。(夢うつつ系の物語に慣れてしまったか…)
登場する建築物それぞれに興味が湧き、一々ネットで画像検索しながら読んだ。もちろん検索しなくても充分な描写。
地の文(主人公の一人称)の日本語の丁寧さと語彙の豊富さによって、主人公の存在自体が現代からちょっと浮いているように感じた。
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まさに表紙のシャガールの絵のような不思議な話で、面白かった。
ゴルフ好きな夫と高校生の息子と平凡に暮らす主婦が、屋根の修理にやってきた無骨な屋根屋と出会い、夢を舞台に旅するようになる。
不倫、恋愛といったドロドロ感よりも、寺社やヨーロッパの城などの建築物の細かな描写と、常に付きまとう死のイメージが印象的だった。
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なんと切ない物語だろうか。
長瀬屋根屋はどこに行ってしまったのだろう。
夢の中で旅するシュールなお話かと思っていましたが、本当に切ない物語です。
もし長瀬がずっとここで暮らそうと言う言葉に従っていたら?
私も夢の中で旅してみたいな。
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明晰夢の話…といったらなんの感慨もないけれど、どこまで本当なのかが、本当にわからなくなる話。なんだか、明晰夢を極めたくなっちゃいます。
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これは結構変わった作品。明晰夢という夢に関するお話。キャラクターはかなり地味。ごく普通の感覚をもった専業主婦と瓦工事業を営む男やもめのふたり。主婦の家に雨漏りが発生したことによりふたりは出会う。
両者ともそれほどコミュニケーションを積極的にとるタイプではないが、いろんな建物の屋根の形状についての話から少しずつ仲良くなる。で、男は京都のある寺院の見事な屋根を見に行かないかと主婦を誘う。しかしそれは新幹線にのっていく普通の旅行ではなく、なんと夢の中でその寺院を訪れよう、というの。夢の中の旅行。男は明晰夢とも言われる「意識的に観たい夢を見る技術」を持っており、そのやり方を指導もできるという。そして、ひとつの夢の中で別の人間が同じ体験をすることも可能だそう。興味を持った主婦は教わったとおりに眠り、夢の中で京都で男に出会いガイドしてもらう。その後、夢の中の旅はエスカレートしていき、ついに海を超えてパリにまで行くようになる。そしていつの間にかふたりの間には、別の感情が芽生えていく・・・・。
というような話なんですね。まぁこれだけ書いちゃうとなんかファンタジックな不倫モノっぽいですが、あんまりロマンチックなところはないですね、問題は最初に書いたとおり、価値観を疑っている部分、ぶっちゃけ書いちゃうと、それだけ精密で好きなことが出来る明晰夢という技術を持っている人が、汗水たらして現実世界でがんばる必要はあるのか???という問題にいきついちゃうんですね。小説の中でそんな言葉は出てきませんが、どうしてもそのあたり考えてしまいますね。もちろんその「夢」というのは、今後間違いなく広がっていくだろうヴァーチャルリアリティの世界のメタファーともとれますね。
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さて、不思議な小説です。
雨漏りの修理に来た夢を自在に操れる屋根屋とともに、主婦の「私」が夢の中で様々な屋根をめぐる旅をする内に。。。
二人が訪れる建物や屋根の描写が緻密です。日本の寺社や五重塔の空に飛び立つような屋根の反り。瓦の裏や法輪に書かれた大工や僧の落書きの面白さ。フランスの大聖堂建築のフライングバットレスや身廊(ずいぶん前ですがケン・フォレットの『大聖堂』を読んでいるので構造が目に浮かびます)。何か吐瀉しているように見えるガーゴイル(雨樋から流れてくる水の排出口)の魔物彫刻の群れ。それだけでも読み応えがあります。
ゴルフ三昧の夫とクラブ活動に夢中な息子。特に大きな不満も無いが、どこか家族の中で存在感の薄い主婦と、10数年前に妻を亡くし、一時は精神の不調に陥ったさえない大男の屋根屋。そんな二人の夢の中の道行きは、互いの孤独からの逃避に向かい、やがて夢と現の境さえ不明確になって行く。
著者が何を語ろうとしたのか良く判りません。読む人によって色んな解釈が出来そうですが、独特の空気感の中で、それぞれが自分なりの解釈をすれば良いのだろうと思います。
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人と夢を共有して、好きなところに旅行にいける。まるで子供向けのファンタジーのような設定だけれども、この物語で飛び回っているのは大人の男女。それも、危うい関係の二人なのだから生々しい緊張感がある。
読書中は、村田喜代子さんの想像力に痺れっぱなし。夢の中の美しい世界や、詩的な表現でもって描かれる感性の豊かさからは、自らも想像することの喜びを味わいながら執筆されたことが伝わってきて……かっこいいなと思います!
登場人物についても、人間の軽視すべきでない様々な側面が描かれていて魅力的。女性には、男性に対する、決して共感でない、むしろ冷静さや一歩引いた心情から生まれる包容力があり、男性には、因業のような性欲、理性的な振る舞い、それらと子供のような純真さの不均衡がある。ずっしりと重たいこれらの要素は、意識と無意識の混ざり合う夢の中でどうなってしまうのか。
現実は楽園ではないから、人生の価値を幸せの追求と単純化することは難しい。追求するだけでは、欲を抑えたり、苦しみに耐えることさえ人生の価値を貶める。この物語の舞台には瓦屋根が多く登場するが、整然と敷かれた瓦は仏道修行の軌跡のようでもある。読み終わった今、瓦の上には、大事なものを少しずつ、少しずつ、諦めようとした人の影が見える気がする
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2018/11/25
相当時間がかかった。
夢を好きなように操れると楽しいだろうなと思う反面、やっぱりそこから出られなくなる恐怖が付いて回る。
そういう意識せずに抱いていた感覚を見せてもらった感じ。
しかし登場人物が夢に入って行くときに私もつられて睡魔に襲われるもんだから読み進められないのだよ。
どんだけ寝たか。
本読んでるのか夢を見てるのかわからなくなる。ことはないか。
よーく寝ました。