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戦争はなぜなくならないのか?という問いに対する答えは、恐らくこの小説を読んでも見つからないのではないかと思う。でも、著者は、茉莉江は、全身全霊でこの問いに立ち向かっている。そして、戦争に巻き込まれた者、引きずり込まれた者が、一生戦争に雁字搦めになりながら生きていくしかないことが、叫びとなって伝わってくる。私は世の中の絶望的な悪意には、「逃げる」ことしか対処しようがないと思ってしまっているが、この本は、それらと真正面から立ち向かおうとする人たちの物語。
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初読みの作家さん。戦中戦後を通して、報道写真家茉莉江の足跡をたどる物語。小説というよりも、ドキュメンタリーを読んでいるような印象を受けた。それにしても、内容詰め込みすぎかな?途中挟まれる、美和子の語りの部分が最後までなじめなかった。
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架空の女の一生に重ね合わせて戦後日本の場面場面を描いた力作。最初はよかったけど、途中から少し失速したかなぁ。瓦礫の中から救い出した兄貴とか、もっと後半で重要なキャラになってもよかったのでは?
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衝撃的だったし、こわかった。登場人物は皆、架空の人だけど、この物語で描かれていることは現実にあったこと。この本の言葉をかりるなら、忘れてはならないのにちがいないのだけれど、忘れなくては、生きていけない。そんな感じがしました。
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小手鞠るいさんの恋愛小説はいくつか読んだことがあって、題名からしてこの本もその類だろうと手に取ったのですが、意外や意外、骨太の大河小説でした。
きっちりと作り込まれたストーリーと丁寧な描写に、途中までノンフィクションだとばかり思っていました。
次々と突きつけられる人間の醜さ、争いのむなしさ。
そこから目をそらしてはいけないという、強烈なメッセージ。
いやはや、小手鞠るいさん、恐れ入りました。
語り手の女性との接点が最後に明らかになるのですが、それもまたよかった。その頃にはこれはフィクションだとわかっていたので、「え~、その話、ホント?」みたいな感じもなかったし。
ただ、大空襲、氷川丸、ベトナム戦争、新宿西口騒動、あさま山荘、三菱重工爆破事件、日航機墜落、チェチェン紛争、911……、とこられると、さすがに詰め込みすぎでは?と思ってしまう。実在の人物が本当にそうやって遭遇したなら、うへ~、すごいね、で済むかもしれないけど、フィクションの中でそう語られると、「ありえないでしょ」と思ってしまう。
最後の911の場面でも、飛行機が衝突してからビル崩壊までに、コーヒー飲んでる時間やメール打ってる時間、さらには現地にいって巻き込まれるだけの時間などなかったのでは? と、リアルタイムで報道を見ていた人間としてはツッコんでしまう。まあ、お話としてはその展開のほうが面白いけれども。
なので、☆4つ。
詰め込んだ事件のひとつでも割愛していたら、もっと現実感が出たのかもしれません。
辛口なことを言ってしまったけれども、この作品を通じて作者が訴えたかったメッセージは素晴らしい。
人間の醜さ、むごさ、そして、それでも持ち続けなければいけない「希なる望み」の大切さ。
心に残る本でした。
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報道写真家茉莉江の足跡を辿るストーリー。
終戦間際の岡山で、空爆にあった民家の瓦礫の下から救い出された赤ん坊だった茉莉江。
様々な縁を経て、アメリカで写真に出会い、報道写真家となります。
彼女が撮り続けてきたものは、酷く残酷で冷酷なものばかり。
人の持つ悪のせいで、世の中から戦争がなくならないと茉莉江は言います。
しかし、その悪を包み込む善があれば、悪を消すことは出来なくても、覆い尽くすことは出来る。
写真を通して、善と美の種を植えたいと願っていた茉莉江の生涯を一緒に辿り、アメリカを中心にした戦争の歴史をも一緒に振り返ることが出来ました。
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一人の女性の波乱に満ちた生涯。
戦後から現代まで、人類の発展と戦争の歴史を辿る。
なんて波乱と愛に満ちた生き様だろう。
息つく暇もなく読まされてしまう。
伝わって来るのは、強烈な反戦への祈り。平和を望む想い。ずしりと胸に残る。
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これまでに読んだ小手鞠氏の作品と比べると、こんな作風もあったのかとまず驚いた。
終戦間際の岡山の空襲のあと瓦礫の中から救い出された女性が、のちにアメリカへ渡って写真家となった。彼女はやがて運命的な出会いに導かれ、戦争や災害を扱う報道写真家への道を歩むことになる。
非常に興味深い設定ではあるのだが、第2次大戦中の空襲、ベトナム戦争、あさま山荘、三菱重工爆破、チェチェン紛争、日航ジャンボ機墜落、9.11テロ・・・とまあ、そういう場所を求めて「突っ込む」写真家だから仕方ないのかもしれないとはいえ、ネタがてんこ盛り(笑)少々お腹いっぱいの感は否めない。
でもまあ、最後で判明する「私」との関係で、時代を越えた様々な事件もうまくつながったと思いました。
表紙の写真も含めて、素敵な雰囲気の流れる一冊でした。
2018/11
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空襲で生き残った赤ちゃんの茉莉江が様々な困難に立ち向かって激動の時代を肌で感じながら生きた話
子供時代の親戚との暖かい日々、寂しい実の母親との生活、アメリカでの義父と母親との居場所がない生活、1人ニューヨークへ向かう電車で全財産を失うも狼狽えず懸命に生きていく
写真に魅せられカメラマンを目指し、小さな美しい世界を切り取る喜びを覚えたが、使命感もあり悲惨な現場を伝える報道カメラマンへ。
終戦から9.11テロまでの戦争や事件の臨場感も感じられ、すごく考えさせられる話だったし、茉莉江の人柄に惹かれ、読み終わり満足感と共に寂しさもあった。
久々にこんな読んでよかった!と思える本に出会った
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読了するのに思ったより時間がかかりました。
取り上げられている戦争や事件は、どれも私が生まれる前に起こった出来事ばかりで、名前は聞いたことがあっても、その出来事がどれほど悲惨なものなのか、今まで想像したこともありませんでした。しかし、作中に出てくる出来事を1つずつ調べながら読み進めていくことで、様々なことを考えさせられました。胸が締め付けられるようでした。現在も世界では戦争が起こっているだろうし、日本でも毎日異なる事件や事故が発生しています。さらに、ネットが普及した現代だからこその誹謗中傷やいじめなど、人間が人間を傷つける出来事が多く起こっているにもかかわらず「よくある話だ」と、ほぼ無関心で生活している現状に気付き、何とも言えない気持ちになりました。
また、マリーの逆境の中でも懸命に生きていく姿に強い憧れを抱きました。どんなに苦しくても私なら大丈夫だと思える考え方がとても素敵だと感じました。私は、今の生活は辛くて嫌なことがいっぱいだと思っていましたが、マリーが経験してきたことに比べれば屁でもないと思いました。マリーのように積極的に、また笑顔も忘れず、もう少し頑張ってみようと勇気が出ました。
この作品は絶望と希望がうまく混在してると感じます。この作品に出会えて良かったです。
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女性報道写真家の一生をつづった感動作、冒頭の焼け跡から助け出される所思わず生きていてくれと叫びたくなってしまいました。母との死別、ニューヨークでの一人のつらい生活、カメラとの出会いカメラマン坂木との恋愛がいじらしくあこがれの描写が思わず応援したくなりました。数々の事件の描写の所は自分は何をしていたのかと考えながら読んでいました。読み始めたら止まらないラストまで一気読みの感動作まちがいなしです。