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救済者の70%はその決断を数秒のうちに下し、80%は事前に他人と相談することなく決定した。
反ユダヤ主義は国防軍においていわば職務上の義務だった。それなのにドイツ人でユダヤ人を匿ったりしたのは素晴らしいのだろうか。またユダヤ人と恋愛関係に陥ることは良いことだったのだろうか。全てが美談ではないはずだ。
ナチの妄想によれば、ユダヤ人の世界陰謀は帝国の内外に見られた。
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ナチスドイツが行った、ユダヤ人虐殺。
しかし、すべてのドイツ人が、唯々諾々として虐殺に加担したわけではない。
宗教上、道徳上、そして個人的な理由から、ユダヤ人を救済しようと奔走した人たちがいた。そして、その中には少数ではあるが、ドイツ国防軍などに籍を置く軍人たちもいた。
ナチスは、ユダヤ人を救済するものたちを、強く弾圧し、強制収容所に送り込み、殺害した。
なぜ、その厳しい状況の中、彼らはユダヤ人救済をおこなったのか...
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あったとか、なかったとか、良いこととか、悪いことだとか、そんなことはどうでも良い。
歴史はその出来事のみが記録され後の世に伝えられるだけで良い。解釈や判断はその時々の社会の風潮や政治的立ち位置によってどのようにも変化するのだから。
本書で重要なのは、その時々の出来事は、社会や組織では無く個人の意志によって作られたということだけだ。
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第二次世界大戦のドイツ。ナチの活動が活発になる中、
ドイツ国防軍にはユダヤ人救済を行った者たちがいた。
ある者は処刑、ある者は遠い異国の収容所での死、
生き延びた者もいたが、各国の政治情勢・・・特に戦後の対独に翻弄され、
長い年月に忘れ去られていた人々。
彼らの行動を掘り起こし、記録した本です。
「戦場のピアニスト」で主人公を助けた将校についても、
詳しく書かれています。
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2014.10記。
ユダヤ弾圧が吹き荒れたナチス支配下において、ドイツ軍人による救済の試みがあった。
実は、ゲシュタポに代表されるようなナチ機関とドイツ国防軍の関係はかなり険悪であったらしい。プロイセン貴族の流れを汲む誇り高き将校たちは、無学なヒトラーやその取り巻きを軽侮していたという。本書は「国防軍は反ナチ」という見方は必ずしも事実ではないという前提に立ちつつ、組織の中で自らの良心に従った少数の事例を丁寧に検討している。
そもそも隠密行動が中心だから書面での検証は難しい(悲しいことに、発覚して裁判にかけられた記録がそれになることもある)。「あえて命令をサボる」といった不作為による救済もありえる。戦後、公職追放から逃れるための「私は救済に活躍した」といった証言の真偽も考えねばならない。このように厳密に絞り込んでいけば、一定の水準を保ちうる事例の数は決して多くはない。そして、感情を廃した論文は、それゆえに深く胸を打つ。
例えばアントーン・シュミット軍曹。ユダヤ人の安全地域への隠密輸送を手伝ったかどで起訴。裁判において、ユダヤ人を使役するための移送だった、という弁護人の主張を自ら否定し、「自分はユダヤ人を死から救助するために移送したと確信を持って述べた」(P.60。結局、シュミット軍曹は死刑判決を受けた)。彼は新聞も読まない、いわゆる知識階級には属さない市井の人物に過ぎなかった。しかしこの過酷な局面において最も気高い良心を示した。
平時においては、人の善良さにはさして差はないだろう。そして、極限においてこそそれが問われる。そんな当たり前のことを改めて思った。