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下巻。
二転三転するプロットとともにクルクルと場所が入れ替わり、主人公はあっちに行ったり、こっちに行ったりと忙しい。
スピーディで最後まで全く飽きさせないストーリー運びは流石。皮肉なラストシーンも良かった。
次はもうちょっと長めのサスペンスものを読みたいな。出来れば創元から出ていたようなタイプを……。
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ゴダード流のアクション・スリラー。主人公は事件に巻き込まれる外科医。この巻き込まれ方に無理があるように思うのだが、そんな違和感なんかおかまいなしに、物語はすごい勢いで展開していく。謎は残しつつも骨格はチラ見せ、国をまたいで移動する主人公に、怪しげな事件関係者たちと、一気読みできる要素が多いのでスピーディーにさくさくと進む。なんかゴダードじゃないみたい。
キレのある展開で読者を作中に引きつけながら、徐々に背景が浮かび上がる。セルビアの内戦を中心に、「人道に対する犯罪」によって人生を奪われた人々、また奪われたからこそ、使命感に追いつめられる苦悩や覚悟が、じわじわと物語の根底に拡がっていく。この浸透のさせ方はゴダードっぽいけど、こんな社会派な作家だったっけ?
後半の二転三転する展開に、出口はどこだろうと思っていたらいきなりプッと途切れて、そこから予想外の転調でゴダード節全開の重さが襲ってくる。でもそれまでの印象がアクション・スリラーなので、全体を通して見ると、この部分だけ浮いて見えるのよね。
結論としては面白いです。私の場合、“ゴダードっぽさ”などという作者に対する勝手なイメージが邪魔して、なんとなく違和感を抱えて終わる羽目になってしまった。現代的で読みやすいゴダードにいい加減慣れろよ。
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高額の報酬のひかれて、肝移植手術をした患者は、テロリストのリーダーだった。
読後、<善意の行方>って言葉が自然に浮かんできた。
思えば、ゴダードの最初は「蒼穹の彼方に」で、あれも結局のところ<善意の行方>がテーマだった。
テロリストの命を救ったことで、主人公は脅され困難に巻き込まれる。
そう、どこにいってもなんだかんだと、彼はやっかいに巻き込まれて更なる困難に対面する。
が、「蒼穹の彼方に」と絶対的に違うのは、彼はこの困難の所以を知っていることだ。
知っていても、振り払えない運命に、人はどう対面するのか。
決してヒーロータイプではない主人公が、むしろ人が良すぎてさらに困難を招き入れる彼は、人の不屈の魂を象徴しているように思う。
うん。人は、必要であればとことん強くなれるのだ。
そういう柔軟性をもっているのだ。
にしても、高額の報酬にひかれて、とはいえ、多分彼は患者がテロリストでのちに自分を窮地に陥れるとわかっていても、患者を助けるだろう。「蒼穹の彼方に」の主人公も、自分の行いゆえにこうなったと知っても、原因になった行動をやはりするのだろう。
<善意>が<善意>のままで終われない、人の矛盾と改めてゴダードは対峙するつもりなのだろう。
うん、ゴダードは次のステージに進むつもりらしい。
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ゴダードの作品はかなり読んだけど
好きな話とそれ程ではないのに分かれる。
これは少々血なまぐさいけど 好きな部類。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ内線の経過も
結果も何だか混沌して私には理解出来ないけど
それを無視しても十分楽しめた。
話しが2転3転するし どんでん返しもあって
スリリング。