投稿元:
レビューを見る
正にこれは物語
コンテナは結果として輸送に革命を起こしたが、
一大革命というわけではなく同時多発的に発生し、
波止場の反対と闘いながら、次第に港湾の常識を変えていく。
勝負し続けたマルコム・マクリーンを中心としたこの物語、
結果的に見れば、コンテナ単位で運ぶというのは非常に合理的であるのだが
受け入れられるまでには多くの波乱があった。
そのコンテナの行く末だけでなく、
マルコム・マクリーンの経営手腕はとても刺激的。
コンテナ輸送への地味なイメージが払拭されるドラマチックな物語だった。
投稿元:
レビューを見る
無名本で当たりの予感がして、実際当たりだった!と思ったらビルゲイツとか成毛さんが推してたようで… コンテナ普及の様子を描いた本というだけだと地味だけど、イノベーションへの抵抗だとか、抵抗しても仕方ないとか、イノベーターが必ずしも報われるわけではないとか、旧体制側プレイヤーをどうするかとか、ここから様々な教訓を引き出せる最適なケースだなあと。普通に読んでも十分面白かったし、教訓的に読んでもかなり有用。
投稿元:
レビューを見る
1956年4月26日、一つの「箱」が世界を変えるために出航した。
それまでの貨物は、大きさも形もバラバラで、船への積み降ろしにはものすごい時間とコストがかかった。
統一規格のコンテナの登場により、物流は大きく変化し、さらには産業も変貌していく。
1970年代、日本のエレクトロニクスが欧米を席巻したのも、コンテナ輸送が大きく影響していた。
このコンテナによる輸送を仕掛けたのは、トラック1台から身を起こしたマルコム・パーセル・マクリーン。
彼は、海運業とは、船を運航する産業ではなく、貨物を運ぶ産業だと見抜いていた。そして、物流コストを下げるには、貨物を扱う新しいシステムが必要なのだと気がついていた。港、船、クレーン、倉庫、トラック、鉄道、そして船、これらの要素はずっと以前からあるが、システムを変えることで、全く新しい物流が誕生する。
そう、イノベーションはシステムを変えること。
しかし、イノベーションは、マクリーンのようなパイオニア一人では完成しない。
物流はグローバルで、多くの人たちが同じシステムを使わなければ機能しない。
彼は次々と新しいチャレンジを仕掛けるが、ときにタイミングを間違えるなど、失敗も繰り返す。そして、最後には、自ら作った会社を更迭されてしまう。
一方で、コンテナ輸送というイノベーションの種は、いろいろなところで撒かれていた。
そして、ベトナム戦争による物資の効率的な輸送の必要が生じるなどの環境変化もあり、一気に花開くことになる。まるで生物の進化をみているようである。
だから、イノベーションの流れは最初はほんの小さな流れで、多くの人は見過ごしてしまう。
この流れに気がつき、チャレンジできた人がイノベーターとなれるのである。
それには、本質を見抜き、高い洞察力をもち、幸運の女神を引き寄せなくてはならない。
女神からは見放されてしまったマクリーンであはあるが、パイオニアとして今も海運業の人々の中で輝いている。彼の葬儀の朝には、世界中のコンテナ船が汽笛を鳴らし、弔意を表した。
投稿元:
レビューを見る
本当に副題の通り「世界を変えたのは「箱」の発明だった」。イノベーションの価値をしっかりと認識できるかによって港であれ、鉄道であれ、大きくその後の趨勢が左右される様。イノベーションに対して労組等の守旧側と向き合うことの難しさ。
投稿元:
レビューを見る
≪目次≫
謝辞
第1章 最初の航海
第2章 埠頭
第3章 トラック野郎
第4章 システム
第5章 ニューヨーク対ニュージャージー
第6章 労働組合
第7章 規格
第8章 飛躍
第9章 ベトナム
第10章 港湾
第11章 浮沈
第12章 巨大化
第13章 荷主
第14章 コンテナの未来
≪内容≫
逗子市図書館。
とても分厚いハードカバー。さすがにアメリカのジャーナリストは詳細に調べて、丁寧にまとめるなと感心。成毛眞さんの本で紹介されていて、興味を持って図書館で借りた本。
厚さにちょっと負けたけど、面白かったのは沖仲士の組合との攻防とコンテナのサイズの話。さもありなんだけど、実際はこうなるだろうな、と思う。あとはコンテナの発展にベトナム戦争が関与していたこと。現代の戦争は何らかの形で経済の発展に関わるのだなと思った。
投稿元:
レビューを見る
原著のタイトルは『How the Shipping Container made the World Smaller and the World Economy Bigger』。訳すなら「海運コンテナはどれだけ世界を小さくし、また世界経済を大きくしたか」といったところでしょうか。
翻訳本を読む際、時折感じる不満のうちの一つが「どうして日本の出版社は原著の美しいタイトルを勝手に書き換えるんだろうか」というところです。この本もタイトルが長すぎたり小難しかったりしたら嫌われるとかなんとか、そういう読者をナメた考えで安直なタイトルに換えられたんじゃないかと推測しますが、結果的に日本での本の価値を減じていると思います。
この本は決して「コンテナそのもの」についてのストーリー(物語)を語っているのではなく、まさに原著のタイトルにある通り、コンテナがいかにして世界を変え、経済構造を変えたかを語っています。また、コンテナ輸送が既存の輸送業界の構成員や、そこから利益を吸い上げていたアクターといかに対峙し、それを乗り越え、現在の輸送業界において現在の地位を確立したかを述べてもいます。
いずれも、あっさりと「物語」の一言で片づけるには申し訳ないぐらいの内容です。
全体を通じ、展開そのものにおいて話が多少前後したり、明確な裏づけが出ていない部分もありますが、いつくかの要素を横断的に紹介しないと全容が見えにくいテーマであること、またコンテナ輸送の黎明期の資料がほとんど無かったであろうことを考えると、その辺は致し方ないかなと思います。
最終章でコンテナがもたらした恩恵とリスクについて触れられていますが、特にリスクについてはコンテナ輸送の業界に特にかかわっていない人であっても意識すべきポイントだと思います。
また、中盤に多くの紙幅を割いて紹介されている、荷役労働者の組合とコンテナ会社との争いを見ていると、限定的な自身の既得権益にしがみつくことで、大局的な世界の発展が遅れることもあるんだな、という点にも気づけます。
かなり骨のある本ですが、ゆっくり向き合うには好い本だと思います。
投稿元:
レビューを見る
荷物をコンテナに積めて初めて船で運んだのは1950年代後半。トラックの渋滞を回避するために始まったコンテナ輸送が港湾労働のあり方を変え、船・港の形を変えた。次に標準化されたコンテナによって陸運・海運のシームレスな連携を生み出し、輸送コストの大幅な削減につながった。輸送コストの低減が生産場所の地理的優位性をなくし、グローバルサプライチェーンが形成されることになる。
単なる箱が短期間でビジネス・都市計画にどれほどの影響を与えたかというダイナミズムがわかる本。
投稿元:
レビューを見る
【選んだ理由】
柳生さんか孫さんがが推薦してたから
【読んだ感想】
もう少し細かい状況説明が欲しかった。業界変革の流れは分かったが、そこまで感銘を受けなかった。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
コンテナ船を発明したのは、トラック運送業者マルコム・マクリーン。
その果敢な挑戦を軸に、世界経済を一変させた知られざる物流の歴史を明らかにする。
[ 目次 ]
最初の航海
埠頭
トラック野郎
システム
ニューヨーク対ニュージャージー
労働組合
規格
飛躍
ベトナム
港湾
浮沈
巨大化
荷主
コンテナの未来
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
投稿元:
レビューを見る
[これはもはや、箱事件]いまや流通の基礎を成しているといっても過言ではないコンテナ。ただの箱、されど箱なコンテナの影響力を顧みながら、「コンテナライゼーション」と呼べる物流革命について解説した一冊です。著者は、『The Economist』や『Newsweek』の記事を手がけたマルク・レビンソン。訳者は、金融・経営関係に関する翻訳を多数手がける村井章子。原題は「The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and the World Economy Bigger」。
人知れず話題を呼んでいた作品らしいのですがこれは本当にオススメ。コンテナがただの箱ではなくシステムであるということを明らかにする過程に、物流について詳しくない自分も引き込まれてしまいました。本書中でマクリーンという革命的な起業家が登場するのですが、彼が流通について持っていた先見性に刮目させられますし、何よりも彼なしでは現代の流通が成り立たなかったであろうことに驚きを禁じ得ません。
本書が素晴らしいのはコンテナの発明を通して、イノベーションの何たるかを提示してくれるところ。イノベーションが何を端緒として導入されるのか、それを阻む者と受け入れる者の違いは何か、遅れてイノベーションの流れに参入する者がどうやって成功するかなど、コンテナが多くの知見を提供してくれています。それにしても著者自身も本書中で語っていますが、コンテナというシステムがもたらした変化の大きさと速さは驚愕もの。
〜大型コンテナ船は単に「箱」を運んでいるだけのようにみえる。だが実際には、一国の経済をグローバル・サプライチェーンに結ぶ媒介役を果たしているのである。〜
箱というミクロを通して世界規模の事象を探るという姿勢もお見事☆5つ
投稿元:
レビューを見る
今や貨物を船やトレーラーで運ぶのはコンテナと決まっているが、これがいつどのようにどこで始まったのかを答えられる人はそういない。この本には、それがすべて書かれている。
コンテナの発展に伴う海運業、港湾、労働者、経済環境、会社の興亡などの状況も網羅してある。ロジスティックスという軍事用語がビジネス用語になったのも、サプライチェーンという言葉ができたのもコンテナがあったからこそという説明に納得してしまう。
コンテナ輸送の実現には、船も港も仕事もシステムとして変更しなければならず、それを最初にビジネスとして実現したマルコム・マクリーンという人はもっと知られるべきなんだろう。
投稿元:
レビューを見る
コンテナ型仮想化の話ではなく、主役は鉄の箱なコンテナ(-_-)
ほんの50年ほど前まで、港の荷物の揚げ降ろしは、穀物の入った袋もあれば酒ビンも、てことで、基本マッチョな人海戦術。輸送コストがハンパないので、製造業の工場は港の近く、消費地と生産地の距離がそのまま参入障壁な世の中やったそう。
紆余曲折ありながら、そんな世界にコンテナな物流システムを導入した皆さんのおかげで、ジャスト・イン・タイムでグローバルなサプライチェーンがやってきたYO!、という一見地味やけど実は相当なイノベーションだったんですよ奥さん、てお話。
とまあ面白い本やったけど、コンテナの台頭で職を奪われた港湾の荷役労働者、コモディティ化に耐えられず倒産した海運会社、と華々しい躍進の影の部分についてもきっちり章を割いてたのが、個人的には一番良かった。
投稿元:
レビューを見る
意外とアカデミックな趣向の一冊。コンテナ化の経済効果・貿易への影響やそれらへの政府介入が及ぼした作用など。これをの検討を「データだけに頼らず」また「経済モデルも使わずに」行っていくと冒頭に宣言。
コンテナリゼーションを「全世界の労働者と消費者に影響を与えた大きな動き」として捉えるともいう。
コンテナ普及前の1950年代前半の埠頭を描く「第2章」・・・筋肉のみがモノを言い事故も頻発したという過酷な労働条件。賄賂が横行するほどの不安定な収入。そして港湾労働の特殊性から生まれた、排他的な協働社会。
ニューヨーク対ニュージャージーというタイトルの「第5章」・・・ここでもコンテナリゼーションの及ぼした影響のひとつが、象徴的につづられている。いわく、コンテナリゼーションの伸展を境にして、旧港たるニューヨーク側の埠頭から、元々は「牧歌的」な様子だった対岸のニュージャージーの方に、勢いは完全に移行したのだという。
ニューヨーク側は内航輸送費、ストライキ、犯罪、それに施設の老朽化があだとなったらしい。また、勢いが急速に落ち込みつつあった時期にも、混載船用に新たな桟橋をつくるという「無駄遣い」等、「巨額な投資」を続行したとか。ただそれも結局は勢いをとどめられなかったのだ。加えて、次第にニューヨーク市の世論が、「港の機能はニュージャージー側に移ってもよいだろう」というように傾いて行ったというのも印象的。
「第6章」は組合のこと。「第7章」はコンテナの規格のこと。「第8章」はコンテナ専用船等を含む物流全体のシステム変革としてのコンテナリゼーションの意義について。いずれも非常に重要なポイント。
「第9章」として、ベトナム戦争でのロジスティクスでいきたコンテナ物流の強みが、エピソード的に語られている。戦争という有事では、平時とはかけ離れた危機管理や輸送量(そしてそれに伴うインフラ整備)が求められていたという者。その中でマクリーンが(リスクを背負って)コンテナリゼーションの意義深さを実際に示していったプロセスは心地よい。
「第10章」ではコンテナリゼーションへの世界中の港湾の対応を描いている。コンテナ船にとってみれば寄港地を減らしてコストやリードタイムを減らしたいのは当然のこと。一方、港湾としてもコンテナヤード整備にはずいぶん時間と費用がかかるわけで、このあたりから港湾の「競争」が本格化する、というのはなるほどそのとおりだろう。また当時米国の各市当局が自分たちの港の重要性を熱心に説いて回ったというのが印象的。
投稿元:
レビューを見る
コンテナの規格化・標準化はマイクロソフトのwindowsに匹敵する産業革命だと思う。それまで陸送・船での輸送・そこに載せるものもばらばらであったものを全世界でどんな手段でも同一サイズ・同一の吊り具を使えるように標準化したマルコム・マクリーンという人は本当にすごいと思う。標準化は世界を制するのだ。物流コスト・荷役の機械化・物流のグローバル化・コンテナリゼーション・JIT・システムの変革・梱包のユニット化・輸送が貿易を変えることで効率化を図った。普段は気付かないところを規格化してしくみそのものを変えてしまうのは仕事でも要求されるところだ。この考え方を参考にしていきたい。
投稿元:
レビューを見る
世界の物流を支える「コンテナ」はどのような経緯で発明され、普及したのか。一人の企業家のアイディアが、利害関係者間の泥沼のような抗争の果てにイノベーションとして結実するまでの壮絶かつ壮大な物語。
コンテナ登場以前の海運業は、様々な形状の貨物の荷積みや荷卸しといった労働集約業務がボトルネックとなり、コストが高止まりしていた。そこに目をつけた一人の企業家が、同じサイズの箱に詰めて人の手を介さずに運ぶという画期的なアイディアを思いつくが、労組の反対、行政による規制の壁、同業他社や異業種との争い等、様々な難問に行手を阻まれる。
それでもコンテナによる物流の自動化と標準化は、関係者の努力に加え、規模の経済性という市場の論理も相まって海運・港湾事業の構造を一変させ、最終的には鉄道やトラック運送も巻き込み、グローバルなサプライチェーンを実現することになる。単なる物流オペレーション改革の歴史に留まらず、マクロ経済、グローバリゼーション、労働争議、経営戦略論、組織行動学など、実に多くの経営的要素を含んだ、読み応えのある良書。