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「合唱の神様」田中信昭氏による歌の基本の解説から合唱団員のお悩み相談まで。
ベートーヴェンの「歓喜の歌」の解説(pp. 96-101)に感動。シラーの詩の一語一語の意味を踏まえて、それがどんな音の動きに移し変えられているかをつぶさに見ていくと、まるで歌の一音一音の律動が、シラーの詩を読んだベートーヴェンの心の動きが映し出されるかのよう。
「言葉は発音記号ではなく、思いを伝えるための手段ですから、その意味を表していなくては表現にはなりません。言葉の意味がどのように音楽に変容し昇華しているのかを、音と言葉という、合唱の姿で表現するのです。」(p. 95)。
コラムを中心に、様々な現代の合唱作品が紹介されている点も興味深いところ。数々の新作初演を手がけてきた著者ならではの現代合唱作品ミニ・ガイドにもなります。
・間宮芳生作品(《合唱のためのコンポジション》シリーズ、《日本民謡による12のインヴェンション》など) (p. 102)
・マリー・シェーファー《マジック・ソングズ》 (p. 134)
・三善晃《月夜三唱》 (p. 80)
・柴田南雄《布瑠部由良由良》 (pp. 48, 88)
・高橋悠治《METTASUTTA 慈経》 (p. 104)