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2004年から2007年に雑誌掲載され、2008年単行本として刊行。
この綾辻行人さんという作家、たぶん人気作家の一人なのだろうが、私は昔読んだ『殺人鬼』もあまり面白くなかった記憶があった。今回はホラー短編集、というか連作集なのだが、またもや、私には「さほど良くなかった」。
故意にそのように書いたらしいが、特に最初の3編は、怪奇な現象は起こるものの、物語として起承転結が明確にあるわけではなく、ちょっとした幻想的素描のような感じ。ある街に由来する怪奇現象を同じように連作短編集ふうに扱った先日の井上宮さん『ぞぞのむこ』は私にはかなり面白かったのと比べ、どうも勝手が違う。
この連作中、「悪霊憑き」だけは異色で、他の編が雑誌『幽」とやらに掲載されたのに対し、「ミステリーズ!」なるものに掲載されたようで、これだけはっきりとした「ホラー・ミステリ」である。
これを除いた作品群の「曖昧さ」というか「つかみ所の無さ」は作者の狙いなのだろうが、私には今ひとつだった。残念。
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深泥丘を舞台に繰り広げられる、不可思議な世界。
読んでいて、なんだかよくわからないけれどもわかったようになる、その雰囲気が凄い。
何が起こっているかわかったようなわからないような。「解説」に当たる部分が無いので、読者が想像を広げながら読むことができる。
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館シリーズやAnotherなどのホラーとはまた気色が違った作品だった。どこか妙な奇談。その世界観に読んでいる内に引き込まれた。ミステリ好きとしては悪霊憑きがミステリ要素を含み面白かった。
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気づくと癖になって止まらなくなるスルメ本。
なんだかこちらが夢を見ているような気分にもなるし、それでいて気になって自分なりに解釈しようとしたりと楽しい。
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深泥丘奇譚
2023年2月18日読了
綾辻行人のホラー短編集。
どの物語をとってもオチがわからない、その正体がわからない。
あやふやなのだ。
だから自分が何に戸惑っていたのかもわからず、もやもやする。
そしてその不穏感がなんだかすごく気味が悪い。
個人的には「悪霊憑き」が一番面白かった。
あとがきでも書かれていたが、ミステリーとして書かれたものであり、
オチがしっかりとしていて楽しめた。
でもやっぱり最後に少しの不穏が残るのだが…。
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「私」としておそらく綾辻行人先生が体験した日常を元に、奇妙にして書かれた怪異短編集となります。
奇談なのでミステリではなく、奇妙なお話なのでゾワゾワ感じるものです。
効果音だったり、擬音をあえて平仮名で書かれるんですよね。
それがまた不気味で奇妙で、おどろおどろしいです。
短編集なので一つ一つがそこまで長くなく、初めての方でも非常に読みやすい一冊となってます。
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不思議なことを受け入れながら人々が生きてきた深泥丘。この土地には曰くが沢山ありそうなのだが、いかんせん、主人公がどうも頼りないので読者にはほんの少ししか情報が入ってこない。常に思わせぶりで何も教えてくれなくて、非常にもどかしい!
これまで起こったことは主人公の妄想なのではないかとすら思えてくる。
『長びく雨』であんなシーンを見たのに翌日にはカラッと爽快な気分になっている主人公が一番怖い。
『開けるな』は奇妙な符合が不気味。夢の中で鍵を開けてしまうのが怖いなと、「開ける」ほうにばかり気を取られていたら、扉を閉めるのが意外だった。今まで開いていたんだというゾワっとした怖さがあった。
『悪霊憑き』だけ急にミステリで伏線をバリバリ回収していくと思ったら、競作ミステリの企画で書いたものだとか。他の作品は意図的に曖昧なままにしてあるのだなと納得。
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個人的・夏のホラー強化月間。曖昧さは狙ってのことだってのは分かるし、クリアカットに提示される方が却って嘘くさいのもあるんだけど、何だか歯切れの悪い物語。しかし作者的には、続編を書きたくなるほどお気に入りのシリーズな訳で…。
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いくつか読んできた綾辻行人作品とは少々毛色の違う「奇談」短編集ということで…
面白いといえば面白いけど、だからこそ、いつもの綾辻行人作品の謎解きを期待してしまい…。
体験した事ないけれど、既視感さえあるような薄気味悪い景色の描写が良かったです。
後半にはもう少しこの謎のカタチがハッキリするかな?と思ったけれどそこは個人の想像に委ねられる感じでした。とはいえ、主人公の記憶無さすぎでは、、?そんなでは執筆もままならないのでは…とちょっと不安になりました(笑)
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綾辻行人の作品は、館シリーズと
殺人鬼シリーズを読んでいる。
もっと怖い話を想像していたが、
伊藤潤二の漫画のようなイメージ
に近いような気がする。
私こと小説家と、掛かりつけにな
る病院との関わりを発端に、私は
怪奇な出来事に巻き込まれていく。
丘の側の路線で目撃したエピソード
は、目撃した物が何なのか想像を
掻き立てられた。
長雨の話、悪霊と憑き物落としの話
も印象に残った。
続編も書き溜めしているようなので
早く読みたい!
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深泥丘病院を軸に書かれた怪奇。
それぞれの短編が繋がっているような
いないような。
あいまいな世界のまま説明なく進んでいく物語。
おもしろかった!
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京都のようなそうであらへんような地を舞台にした短編連作奇談集。
/体調不良ぎみで深泥丘病院に通うことになった頃から本格推理小説作家で論理的でありたいはずの主人公の周辺で、どうやら皆が知っているようやのにずっとその辺で暮らしている自分だけが知らへんらしい奇妙なできごとに出会うようになったんやけど、結局なんも解き明かされんと、それどころかなんかあったことすら忘れてもうてて、なんかあったような気だけはしてるんでそこはかとない不安が続いてるって感じの話。
/すいすいっと、あっちゅう間に読め適度に不思議なんでほんのり刺激的で読書の愉しみを得られます。
■深泥丘についての簡単なメモ
【石倉(一)】深泥丘病院医師。脳神経科が専門だが状況によっては内科も担当する。左目にウグイス色の眼帯をしている。
【石黒(二)】深泥丘病院医師。消化器科が専門だが状況によっては内科も担当する。右目にウグイス色の眼帯をしている。
【石黒(三)】深泥丘病院医師。歯科医。眼帯はしていないがウグイス色の四角いフレームの眼鏡をかけている。
【石倉カンタ】小学四年生くらいの男の子。石倉医師たちの誰かと関係があるのかどうかは不明。奇術「送り火当て」に立候補した。
【井上奈緒美】三十四歳。正確に発音するのが難しい「*****」が憑いたらしい。
【乙骨】Q大奇術研究会会員。
【会長】深泥丘病院が属している医療法人再生会会長。深泥丘魔術団のトップでもある。ミイラのような老人。
【鍵】《「何に使うか分からない鍵」というのは、その存在自体がどうも気分を落ち着かなくさせるものである。》p.191
【神屋】刑事。五十年配で小柄。
【熊井】刑事。若くて大柄。
【黒鷺川】小さい川だが雨が続くと氾濫を起こすのでとある儀式が必要。
【古代の夢】如呂塚遺跡のみやげ。遺跡発掘セット。カプセルトイみたいなもん。砂を固めたキューブからブツを掘り出す。
【理】解説の森見登美彦さんによると《理に落ちることから上手に逃げ続けるのは難しいのである。》p.311
【咲谷】深泥丘の看護師。左腕に白い包帯を巻いている。
【咲谷歯科】猫目島にある歯科医院。主人公が旅行中にかかる。
【サムザムシ】どうやら歯科医療にかかわるらしい。
【歯科治療】《一般に行われる虫歯の治療は、まあ云ってみれば土木工事ですからな。》p.167
【正体不明】《そもそも「正体不明」を「正体不明」のままに受け入れて気にしないでおくという、この態度には相当な精神力が要求されるものでもある。》p.283
【ちちち…】あるものの鳴き声? 古賀新一さんの『のろいの顔がチチチとまた呼ぶ』を思い出しました。包帯とか眼帯とかそれっぽいし。そういえば猫目島も古賀新一さんっぽいネーミング。
【妻】よその土地出身だが夫よりいろいろ知っているらしい。《わたしよりずっと長くこの町に住んでいるくせに》p.63
【土地の記憶】《土地が持つ記憶というのは、住む人間の心に浸透するものなのです》p.71
【如呂塚】古墳がある。
【猫目島】妻や咲谷の故郷。南九州にある。
【パターン】まず何かが起こ��ているらしい状態が描かれ、次にそれまでの経緯が描かれ、現在に戻り決定的な何かが起こる、というパターンが多いようだ。
【病気】解説の森見登美彦さんによると《自分が病気であることと世界が病気であることは一つである。》p.310。たしかに。
【宝月清比古】霊能者。容貌は住人並。むかし大失恋したことがあるらしい。
【本格推理小説作家】《どれほど不思議な出来事も奇怪な謎も、すべては論理的に解決されるはずであり、そうあらねば困るのである。》p.23
【ミスター外戸】深泥丘魔術団のメンバー。
【深泥丘魔術団】「会長」が主催する奇術愛好者たちの集まり。
【ヤッちゃん】妻の友人。猫目島出身で岡山在住。
【六山】五山の送り火はたまに六山になるらしい。
【*****】名前を正確に発音するのが難しい水妖の一種らしい。うっかり真の名を発音できてしまうと取り憑かれるらしい。
【*******】火妖らしい。水と仲が悪い。
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本当に本当に幻想小説!(作者さんは怪奇談と仰ってます)
この世(作中)は現か幻か、と感じました。
綾辻さんがもっと好きになりました!
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新本格ミステリーの代表格である綾辻行人氏のもうひとつの顔ともいうべき怪奇幻想趣味がふんだんに詰め込まれた連作短編集。推理作家である「私」が深泥丘病院に行き始めて様々な怪異に見舞われるが、その正体が分からない、ということが延々と続いていく。怪異の正体が分からないまま終わるというのが妙に説得力があって良かった。