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言葉なんて絵画や彫刻といった芸術には敵わないとどこかで私は思っていた。そうじゃなかった。短歌という31文字の世界は無限大の可能性を持っていた。投稿作品の底知れない凄さを見事に抱きしめて打ち返す穂村弘という人の懐の深さに脱帽した。日本語がまた好きになった。
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読者投稿の短歌を、温かい眼差しで掬い上げる著者の眼差しがとても魅力的。よい投稿作品が送られてこなければ成立しないものはずなのに、著者の添える一言ですべての作品が輝いて見える。この歌人さんは、ご自分もすごい歌を作られるけれども、他の人の歌を見る目もとてもすごいと教えられた。
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書き手がいて、読み手がいて、解説者がいて、三者三様の想いがそこにある。
わかりやすく重なることも有れば、言われてそうかと納得することもある。あるいは解説者の取り方に違を唱えたい場合もあるし、こうも読めるよな、と、作者を出し抜いた感覚になるものもある。
それにしても面白いものが沢山ある。特に10代の人たちのものは、こんな風にこんな風に若い時から表現することを意識して入れば、今頃人生変わってたかもな、なんて思わされたりもして、なかなかに魅力的な一冊だった。
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雑誌『ダ・ヴィンチ』の今も続いている長寿連載。
歌人穂村弘がひとり選者の短歌投稿コーナー『短歌ください』2008年5月号から2010年10月号に連載されたものをまとめた単行本を加筆・修正のうえ文庫化したもの。
陣崎草子さんによる装画のパンキッシュな赤鬼蜂娘が素敵。
思えば短歌はことばによる革命だ。
作者の放った三十一文字で一瞬世界の見え方が一変してしまう。
さらに穂村氏による的確なコメントで、歌の可能性が広がる。
こうも読めるんだ、と、読者である私の想像力をも拡充してくれるような気すらする。
俵万智さんの痒いとこにも手が届きそうな、懇切丁寧な解説もいい。
プチ情報ですが
帯にも載っている
「ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる」
という恐ろしくも魅力的な歌を詠んだ冬野きりんさんは、今は女子プロレスラー・ハイパーミサヲとして活躍されているそうです。(短歌雑誌『ねむらない樹』情報)
びっくりしたけれど、じわじわと心を動かされた。
かっこいいです。
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『例えば、「君から電話がこなくてさみしい」という言葉は、次の瞬間に電話がきたら「君から電話がきてうれしい」に簡単にひっくり返ってしまいます。現実の出来事的には勿論それでいいんだけど、歌としてはちょっと困る。
(中略)
「さみしい」や「うれしい」や「こわい」や「むなしい」や「おもしろい」を、五七五七七という定型のなかで宝石のように結晶化させたい。
そうすれば時が流れて現実の状況がどうても、恋が消えても、つくったひとが死んでしまっても、歌の煌めきだけるからです。』
という筆者が選んだ、様々な年代の読者が送った単価を集めた本です。
短歌は教科書で触れて以来でしたが、ほんとうに面白かったです。
⚪︎選ばれた短歌に対する筆者の捉え方やこんな良さ
がある という〝見方〟挟んでくれる
⚪︎定型もありつつ自由型も多く、初心者が入りやすい
⚪︎作者が様々だからどのページを開いても新鮮に面白
い
Twitterとも紙一重の一瞬の感性が、定型や短歌を作るという意識の縛りによって作品になっている感じがしました。
余白があるから何度も読んで、じわじわとたのしかったです。私も短歌をしてみようと思いました!
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本の情報誌「ダ・ヴィンチ」の読者投稿企画「短歌ください」に寄せられた短歌を穂村弘が選び、解説をくわえている。
発想が素晴らしい短歌ばかりで面白く、著者の解説で短歌の魅力がいっそう際立つ。短歌を詠む時にも生かせそうだ。いくつか紹介したい。
コンビニで聞こえた遅刻の言い訳が「尾崎にバイクを盗まれました」
バイキング誰も並ばぬ一品を浮かび上がらすトングの光り
電子レンジは腹に銀河を棲まわせて静かな夜に息をころせり
↑の短歌への著者の解説は“最も日常的なもののなかに宇宙を見出だす鋭さ”
じいちゃんは、白目と黒目の境目が曖昧になった目で座ってる
↑の短歌への著者の解説は“「じいちゃん」の「目」をそこまで精密に見ていることが凄い。一般に云われるような愛よりも、或る意味でもっと深い愛だと思います”
午後28時の人と隣り合い電車に揺られている午前4時
こんなにもしあわせすぎる一日は早く終わって思い出になれ
四年間使い続けたケータイの機種変更はすぐに終わった
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本の情報誌、『ダ・ヴィンチ』の読者投稿企画の連載「短歌ください」を文庫化した一冊。読者から寄せられた短歌の中から、歌人の穂村弘さんが選出し、講評が添えられています。
読者からの投稿とはいえ、どれも日常を鮮やかに切りとった傑作ぞろい。思いもよらない視点、考えたことのない世界を見せてくれます。
穂村さんの講評がまた良くて、短いながらも歌の本質に触れるような優しい誉め方が印象的です。こんな講評を頂けるなら、短歌を投稿してみたい! という気持ちになりそう。
読み進めるにつれ、「常連さん」の名前を憶えてきて、推し歌人みたいなのが出来てくるのも楽しいです。
私は現代歌人に詳しくないのでわからなかったのですが、解説の俵万智さんによると「投稿者のなかには、その後、歌集を出版したり、歌壇で活躍している人の名前が散見する」らしく、そういった意味でも楽しい一冊なのではないかと思います。
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皆さんご存知の雑誌「ダ・ヴィンチ」の読者投稿企画「短歌ください」。穂村弘さんが選んで講評するこの企画は、2008年から始まり現在も続いており、書籍化も第5弾になっているとのこと。本書は、その記念すべき第1弾です。
私は、これから本格的に短歌を‥などと、入門書的に高尚な発想をしたのではなく、一般の方々の感性に触れ、選者であるプロがそれにどうコメントするか、に興味がありました。
意外にも(?)、20代・30代の方の投稿が多い印象ですね。うんうん、おぉ、へーっ、そーきたか、いいねぇ、私の琴線に触れるもの、ちょっと意味不明でも講評(穂村さんは常に温かい!)の妙に感心するもの等々、興味深く読み進められました。
自分の歌を採り上げてほしい、穂村さんに講評してほしいなど、15年も続いている関心の高さが伝わってきます。
じゃあ私も! と触発されたかというと、一歩を踏み出せないんですよ。面倒くさがりやなのと、やっぱり言葉を扱うプロのいいものを鑑賞する側でありたい‥、と立派な言い訳で「忍法お茶濁し」。
例えば、解説の俵万智さん。昔からのファンですが、最も好きな歌の一つ(穂村さんには失礼)
「散るという 飛翔のかたち
花びらは ふと微笑んで 枝を離れる」
こんな美しい短歌を詠まれると、「参りました!」としか言えないんです‥。
終わりではなく再生の歌、花弁を擬人化し、自ら旅立つイメージは、3月の卒業シーズンにぴったりで、中高生への贐として最高級の言葉の贈り物と思いますが、どうでしょう?
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かまわないでかまわないわよかまってよ(フリルのついた鎌振り下ろす)
これはもうデビューしてもいいくらい輝いてる
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この本は一回出たときに単行本で買ってるんです。
例によって穂村さんの講座に出席する予習として。
でも家のどこを探してもなかったんです。
ブックオフに持って行った覚えは絶対ないし。
でも最初の巻から読みたかったので、泣く泣く買い直しました。
この本はご存知の方も多いと思いますが本の情報誌『ダ・ヴィンチ』の読者投稿企画「短歌ください」に寄せられた短歌の中から穂村弘さんが傑作を選出して、講評をつけた歌集の第一弾です。
俵万智さんの解説より引用
「歌は言葉だけでできてるから、原理的には、平凡なことをいくらでも面白く表現できる筈なんだよね。にも拘わらず、実際に難しいのは、自分自身の意識の網の目がその言葉を通してくれないため。だから、網の目がゆるいひとの方が有利な面があります。」「世界には目に見える現実のルールとは別に運命の蜘蛛の巣がきらきらと張り巡らされているんじゃないか。現実のルールにチューニングが合わないひとほど、それを感じ取ることができるようです」
こんな言葉に乗せられて、網の目をゆるく、チューニングずらして、詠まれた作品集が本書だとも言える。共感ということについても、次のような指摘があって、これはとても大事なことだ。
「どんなテーマでも、最初から『だよね』と思われるのは困る。それは予め知っていることを云われた読者が同意しただけで、本当の共感とはちがいます。まず読者が思ってもみなかった切り口を提示して、そこから真の共感を獲得したい。」
以上引用。
以下、私が好きだと思った歌。
<コンビニで聞こえた遅刻の言い訳が「尾崎にバイクを盗まれました」> チョビ・男・25歳
「盗んだバイクで走りだす」という尾崎豊の歌詞の意表をつく本歌取り。くすっと笑わせつつ、微妙に切なさが残るところがいい。(穂村弘)
<ロート胸、1月生まれ、汚れた血、共通点を見つけるたびに運命かもと思う> くみ・女・33歳
<総務課の田中は夢をつかみ次第戻る予定となっております> 辻井竜一・男・29歳
<最後だし「う」まできちんと発音するね ありがとう さようなら> ゆず・女・18歳
<ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる> 冬野きりん・女・18歳
<世の中に見捨てられたと思ってただけど便座は暖かかった> 蛙・女・29歳
<この空を覚えていようと誓った日そのことだけを覚えている> ウルル・女・22歳
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『恋愛』『色』『数』『音』…などテーマに沿って投稿された短歌。
テーマはシンプルに設定してあるけれど、それをどう料理するかは読み手次第。
『癖』というテーマに恋愛絡みの歌が集まったり、『異性』というテーマはあまり恋愛絡みではなかったとか、の意外性も楽しい。
毎回出てくる次回の作品募集の定型句「意外な作品に出会えることを期待しています」を見事に体現した一冊。
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短歌には疎いものの、穂村さんのコメントがわかりやすく面白い。
以前、世田谷文学館で講義を聴いて著者のファンになった(もちろん今までに何冊か読んでいたから講義に参加したのだけれども)。
その講義で本書に登場するユニコーンの短歌を詠んだ「冬野きりん」と最近対談したそうだ(彼女は現在、女子プロレスラー)。
最初、あまりにも字余りな句が多く気持ち悪さを覚えていたら、穂村さんが「もうちょっと(定型を)意識しようね」みたいな指摘をされていて、にんまりした。