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解説ではマンケルの描きたかったのは中国人なのだ、とあるが、2006年の中国の現状を、これは当時マンケルが感じていた中国、ということなのだろうが、ここまで書ききっていいの? とも思った。しかし執筆が2008年、2023年の今、アフリカへの中国の経済進出は知らないうちにどんどん進んでいたようだ。
原題の「KINESEN」は「中国人」で、日本訳はスウェーデン語から訳しているが、題名は英語版の「THE MAN FROM BEIJING」からとったとあった。
単行本表紙も、読み終えて見直すと、寒村の当夜の状況かな、と思いぞくっとする。主人公の一人、裁判官ビルギッタはスウェーデン南部のデンマーク寄りの平地、ヘルシングボリに住んでいる。虐殺の村は設定がストックホルムの少し北部の寒村となっていて、ビルギッタに、北部は森が多い、と言わせている。スウェーデンというとあまり具体的な景色は浮かばないのだが、地図でみると幅が日本の2倍くらいある。面積は日本の総面積プラス北海道くらいとあるがそれがみんなつながっているのだ。ますます北欧へいってみたくなる。
訳者の解説では、マンケルは16歳で高校をやめて船乗りになり、その後パリに1年住んでスウェーデンに戻るが、違和感を覚えてアフリカに移り、2,3の国を経てモザンビークに定住する。これが20代前半。20年近くいくつかのアフリカの国に住んだ後、モザンビークの首都マプートで劇団を立ち上げ、自ら脚本を書き、監督を務め、俳優を養成して、モザンビークに演劇の文化を根付かせた。その後1年の半分をスウェーデンで、半分をモザンビークで過ごすようになり、現在(2014)はスウェーデンの西海岸に住み執筆活動をしている。アフリカはマンケルのアイデンティティの重要な一部となっている。とあった。
2008発表
2014.7.25初版