投稿元:
レビューを見る
人がどのようにしてインセンティブにより動かされていくのか、どうすれば自分たちの思ったとおりに人々に動いてもらえるのか。様々な課題をランダム化比較試験で、実証しながら答えを出していく筆者達のアイデアや行動力に脱帽。
これを読んだから、他人に対するインセンティブの与え方が劇的に向上するわけではないけれども、少なくとも子供には短期的なインセンティブの方が良いのである。更に面白いことにインセンティブが消失してからも良い行動が続く傾向があるというのも大変興味深い結果である。
投稿元:
レビューを見る
対照付きの実地実験で人間の行動を解き明かす。男女の稼ぎの差は社会的なもの。損失回避の方が強力。幼少期からの学習支援が効果的。差別の理由は、悪意より経済的評価の方が大きい。
結果やストーリーは既に別の本で読んだことがあるものが多いのだけれど、この本が最初だったのか?
投稿元:
レビューを見る
人はインセンティヴで動くが、単に与えるだけでなく、どれだけ与えるか、どのような形で与えるかによって、反応の仕方はまるっきり変わってくる。
著者の研究グループでの事例を織り交ぜながら、インセンティヴの掘り下げを行っている。
投稿元:
レビューを見る
子供に勉強のやる気を起こさせるためにはどうしたらよいだろう。
寄付金をより多く集めるにはどうしたらよいだろう。
新車を安く買うためにはどうしたらいいだろうか。
訪問販売でより多く売るためにはどのようにしたらよいだろうか。
社員のパフォーマンスを上げるためにはどうしたらよいだろうか。
こんな疑問は日常生活でもよく考えると思う。
これらに対する回答は、昔ながらの迷信や習慣ではなく、科学ー特に実験に基づく行動経済学ーによって与えることができるし、そうあるべきである。
最近はビッグデータという手法が流行っているが、こちらは非常に大きい(ビッグ!)データ群から相関関係を主とした分析を行う。ここで注目してほしいのは、因果関係ではなく、相関関係であるということだ。
悲しいかな、人間は相関関係と因果関係を混同しやすいらしい。
たとえば、ある広告代理店のCEOが、広告をTVで流した量とその売上げの正の相関を証拠として、「どうだ!広告を流せば流すだけ売り上げが伸びているぞ!」ということができるだろうか。
一方で、夏時期にアイスクリームの売り上げと溺れる子供の量のグラフ(こちらも正の相関だ!)をみて、アイスの売り上げが多い年に、子供にプールに行かせることを禁止する親がいるだろうか?
実は、両者とも本質は全く同じだ。つまり、相関はあるけれども因果関係は必ずしもイコールではない、ということである。
(ネタバレだが前者は、たまたま広告を流した時期がクリスマス的な売り上げが伸びる時期であるため広告と売り上げの因果関係があると錯覚した例で、後者は暑くなるとアイスを買う人とプールや海に行く人が増えるので相関がある、というだけの話だ)
ということもあり、真に因果関係を調べたい場合は、従来のよく整備された実験環境を構築して、対照群と比較して検討する必要があるのだ。
一昔前は、大規模に実験する環境、資金、アイデアがなかったので困難であったが、ここ最近の実証経済学の流行をうけて大規模な社会実験も可能となってきたらしい。
本書に記載されている例として、子供成績を上げたいと思うのはほとんどすべての親御さんの願いであろう。
この場合、どのようにしてやる気を出させるのがもっとも有効であろうか。
物でつる場合と、お金そのものズバリを上げる方法がまず考えられるが、物を上げる場合も本質的にはお金を上げることと等価なので、お金という尺度で実験をしてみる(小さい子供は、お金よりもおもちゃの方が喜ぶだろう!というご指摘はもっともである。これについても本書では研究成果を披露しているので本書参照)
1)何もしない(これがベースとなるので比較対照群)
2)事前に1000円あげておいて、前の成績よりも下がったら1000円を没収する
3)事後に、成績が上がった場合に1000円をすぐにあげる
4)事後に、成績が上がった場合に1000円を少し時間を空けて(1か月等)あげる
この4つのケースで成績があがったのはどのケースでしょうか?
1つだけ劇的に上がったケースがあります。
��しくは本書で。
また社員のパフォーマンスを上げる問題についても同様に実験した結果が披露されている。
こちらは個人でインセンティブを与える場合と、チームとしてインセンティブを与える場合とで結果が異なるという興味深い結果が得られたそうだ。
詳しくは本書で。
というように、このようなテーマは普遍性があり、知っていると意外と役に立つことがあるかもしれない。
お勧めできる一冊である。
投稿元:
レビューを見る
最近の経済学で大流行している比較対象実験(Randomized Control Trial)を用いた研究結果について詳細に記述している良書。
以下に、興味深かった点を挙げておきます。
①子どもの成績を伸ばすためには?
子どもの成績を改善しようと思うのであれば、ご褒美をあげることが何よりも大切である。ご褒美とは、何もお金だけで無い。トロフィーやチョコレートでも良い。努力に対して報酬を与えることで、子どもが勉強をするインセンティブを引き上げることができる。
②女性は男性よりも劣っているのか?
日本においても、管理職に占める女性の割合は男性のそれよりも圧倒的に低い。これは、女性が生まれながらにして、マネジメント能力や経営管理が出来ないからなのだろうか、それとも、会社の雰囲気などの文化的な要因によって影響されているのか。この問題に対して、筆者は、母性社会が強い村と父性社会が強い村を比較して、女性がどのように振る舞うのかについて検証をします。その結果、女性が先天的に経営管理能力が劣っているのではなく、適切な競争条件が整備されているのであれば、女性も自身のキャリアを伸ばすことができることが明らかとなった。
③差別はどのように生じるのか?
筆者は、差別の中でも経済的差別に関して言及している。経済的差別とは、統計的に平均値が低いもしくは高い集団に対して、差別的な感情を抱くことである。例えば、黒人と白人を比較すれば、前者の方が明らかに犯罪率が高い。それゆえに、黒人は暴力的であるという差別意識を抱きがちである。
投稿元:
レビューを見る
行動経済学という学問をご存じだろうか?
これまでの「経済学」は定性的で曖昧なことが多かった。でも、最近は「統計学」も駆使して、定量的に経済を分析することが当たり前になってきた。
そんな基礎を作ったのが2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン。これまでに著書も何冊か読みましたが、小難しい。。。笑
でも、この本は「ネットフリックス」など身近な事例から「行動経済学」を語っているので面白い。その中でも一番「なるほど!」と思ったのは、「子供の教育に対するインセンティブ」。
「子供に勉強をさせるのに、インセンティブとしてお金を渡すのはダメ」と思われているけど、それはあくまでも感覚的な意見でしかない。それをちゃんと定量的に実証したらどうなったか?
気になった方は是非ご一読ください。笑
投稿元:
レビューを見る
翻訳者の望月衛さんが訳した他の本が面白かったので、こちらも読んでみました。
「経済学」というよりも、「何かわからないことがあったら、とにかく実験してみよう」というのが、この本の主旨だと思います。
もちろん、実験したからといって、思い通りの結果が得られるわけではありませんが、実験をすることで、何が有効で、何が無効かは見えてくるわけで、見えてきた有効なものを、実際に展開していけばいい、ということが、繰り返し語られています。
こういう感覚って、わかる人にはわかると思うのですが、わからない人にわかってもらうのは相当難しいような気がします。
単純な話だと思うんですけどね。
投稿元:
レビューを見る
行動経済学に基づくインセンティブについて書かれた本。実地の実験から得られた知見を豊富に盛り込んである。寄付の秘訣とか、学校を改革する話とか、面白いエピソードが満載。読み物としても面白いと思う。
投稿元:
レビューを見る
人の行動がインセンティブ設計でどのように変化するか多様な実地実験から解き明かす本。
行動経済学や消費者心理については別の本を読んだほうが良い。
だけど、社会科学実験の実施について、これだけ多様なバリエーションを、しかもわかりやすく説明してくれる本は他にあまり無いと思う。
実験の背景には、高度な理論があるはずなのだけど、それはさておいても興味を引く実験結果が並んでいる。
面白すぎて結果だけが先歩きさせないように統計学的と実験のリミテーションにも注意したいところ。
投稿元:
レビューを見る
良い本。くだけた感じの翻訳で読みやすい。好き嫌いはあるかもしれないけど。
行動経済学の本だけど、どちらかというと実地実験をすることが大事!ということを伝えている本。ナッジとかは少し触れられる程度。
著者の行ってきた実地実験をなぞるように進んでいく、ちょっとドキュメンタリーな部分もあって面白い。
全般的に行動を起こす、または改める前には実験をやってからの方がいいし、実地実験をやっていけば世界も変えられるかもよ!っていうノリ。
その見方は楽観的過ぎるかもしれないけど、それでも感化されて自分もやってみたくなる。
投稿元:
レビューを見る
経済学のことを勉強しようと思ったが、実際には実用的に実験を行う事の大切さを教わった。
例えば、会社で物を売る値段を決定する時でも、試験的に値段に幅を利かせて売ってみて、どの値段の時が最も利益が上がるが試してみるなど、実験が必要な場面は往々として存在する。
面倒と思わず、実験を行うことが利益をあげることがわかった。
投稿元:
レビューを見る
永国寺図書館
寄付は、これっきりにしてくれ、という意思表示ができるようにするとたくさん集まる。
言い値で売る、ほうがたくさん支払う。
割り勘は負の外部性が発生する。
西洋社会では、女性は競争をしたがらない、その結果管理職が少ないのではないか。女性は男性ほど負けず嫌いではない。
マサイ族は男系社会なので、西洋と同じだが、カーン族は女系社会で、女性は競争が好き。生まれつきではなく、文化的な環境によるもの。
p78
投稿元:
レビューを見る
人が何で動くか(=インセンティブ)を理解できれば、狙った結果につなげられると実地実験を通して示している。根拠が薄いと感じる箇所もあるが、観点として面白い。
ただ、せっかくエッセイ的な砕けた文なのに直訳感があり、誤植もあったのが残念だった。
勉強しない子やその親に、適切なインセンティブ(お金やモノ)を渡せば子の成績が上がる。いいインセンティブがあれば寄付金の額も上がる。
実際に導入となると、気持ちをお金で動かすことに不満の声が上がるだろうと容易に想像できる。その視点も必要ではあるが、お金を使えば中退も逮捕もされず過ごせる子が増え、寄付で助かる人も増えるという視点も持てる思考でありつづけたいと思う。
『「慈善組織は販売ってことばが嫌いなんだ」とブライアン。「でもぼくは大好きだな」』
投稿元:
レビューを見る
【読書前メモ】
行動経済学分野の本書。経済学の「インセンティブ」の問題に焦点を当てる。「インセンティブ」という点では「ヤバい経済学」とも通じる部分があるかも。