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江戸時代の筑後川沿岸の農村の、苦しい農民たちの生活を見ながら育つ大庄屋の次男が主人公。さすがの筆者、重厚で一気に読みきった。登場人物の一部は史実上の人物であったことはあとがきに記されていたが、謙虚に自分の精一杯の奉仕をして生きる人々の生き様は、時代を超えて胸に迫った。
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主人公の庄十郎は大庄屋の次男坊としてうまれ、医師となった。医業を通して、農民はじめ人々の生活に寄り添い見つめた日々を描いた物語。
特に当時の世の中は理不尽で無情なことも多い。しかしその中で奮闘し、“生きる為に生きていく”人々は力強く、想いも強い。
物語では庄十郎の視点で立場の異なる様々な人の生き様を垣間見、胸を打たれた。
全体を通して心情描写は控えめな印象だけれど、それ故にか、事が起こり出来事が蓄積され、それぞれの人生となり、この国の歴史となっていく、そういう感覚を持った。
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久留米有馬家御領を舞台に、井上村大庄屋高松家の次男・庄十郎の生涯を主軸に、圧制に苦しむ領民、百姓と庄屋、大庄屋との確執、かつて一揆を捨て身で食い止めた御家老・稲次因幡の生き方などを、農村の自然溢れる描写と、どこまでも逞しい百姓たちの生き様とともに描く歴史小説。
久留米の土地柄や歴史に疎く、前半はなかなか進まなかったけれど、庄十郎が医師を志し、名医・鎮水の弟子となったあたりからはグイグイ引き込まれて読んだ。
一部表題にもなっている「天に星、地に花、人に慈愛」という家老・稲次が掲げた掛け軸の言葉が作品全体を優しく包む。
遊興の限りを尽くし、領民にその犠牲を強いるばかりの為政者。それを体を張ってでも諫めることのできない側近達。二度目の一揆騒動で不幸だったのは、家中に稲次のようなものがいなかったことだという言葉が胸に沁みる。国を治める者の度量というものをしみじみと思う。
「人間は、お上が気に入らんでも、正かこつなら、せにゃならんこつがある」
一揆の責めにあい多くのものが断罪されたとき、庄十郎がみよに言った言葉が深く胸に刺さる。
昔のことを描きながら全く古びず、今に十分通じる人の在り方というものを深く描いた素晴らしい作品でした。
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医師となった大庄屋の次男の人生を軸に、ばか殿の圧政、農民の暮らしや困窮や怒り、有能な家老、大庄屋、庄屋の姿を描く。久留米藩有馬家領において。慈愛に満ちたまなざし。
描写は凄惨、出産シーンは目に浮かぶよう。
読み応えあり。