紙の本
粒ぞろいではあるけれど…
2015/08/23 09:45
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投稿者:sin - この投稿者のレビュー一覧を見る
勿体ぶった“序文”から胡散臭いと思った通り、この本に登場するモンスター達は何れも比喩的な意味でのそれであって文学にしゃぶりつくされた存在でしかない。作品としての質は悪くないがモンスターに対する愛は感じられない。それは序文で編者がビッグフット愛好家に向ける観察者の眼差しに似て…作者たちが描きたいものは他に在って、そのため描かれたモンスター達は表現のツールとして存在しているに過ぎない((T_T))とはいえ粒ぞろいの作品であることに間違いはない。
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『モンスター』をテーマに編纂されたアンソロジー。『訳者あとがき』にもあるが、中小の版元から出版された、どちらかというと地味な本だったようだ。
確かにベストセラーになるような本とは違っているが、これを読んで楽しむ読者は確実にいるだろうと思わせる、味のある短編が並んでいる。テーマである『モンスター』も、ビッグフットのようなUMAから、フランケンシュタイン、吸血鬼などの有名人(?)まで幅広い。なんとゴジラ(!)まで登場するが、ゴジラは『モンスター』の範疇に含まれるのだろうか? 日本人の感覚からすると、横文字の『モンスター』と、ゴジラやモスラのような『怪獣』とは、何か違う概念のような気がするのだがw
『プリティ・モンスターズ』所収の、ケリー・リンクの短編がこちらにも収録されているのがちょっと嬉しいw
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題名通りモンスターたちをモチーフにした短篇ばかりのアンソロジー。出版社も作家の名前も有名とはいえない。編集者が「モンスター」という共通項を頼りに探し当てた既存の作品や、これと見込んだ作家に依頼して新たに寄稿してもらった作品を集めたものである。ネームヴァリューや宣伝の差で、批評家の眼に留まることもなかったのか、本国でも評判にならなかった現代アメリカ作家の競作が日本語で読めるのは、翻訳者の目に留まったからだとか。作家たちにとって、日本の読者にとって幸運なことであった。拾い物である。
作者の創作による馴染みのない怪物もいるが、大方の素材となっているのは、フランケンシュタインの怪物や吸血鬼、ミイラ男といった面々。家庭が舞台の作品が多いからか、小説ではなく映画やテレビ・シリーズ物に登場するキャラクターたちが中心だ。自分がモンスターだと思い込んでいる少年や、自分の子がモンスターだとしか思えない母親、またモンスターを演じる俳優といった人たち。短篇ということもあり、真っ向勝負というよりは変化球主体の構成。ウィットともユーモアというのともちがう、サタイア或はアイロニーの色あいが強いのも特徴である。
実際のところ、フランケンシュタイン一つを例にとって見ても、モンスター物には、何故か悲哀が漂う。よくよく考えてみるまでもなく、そこにあるのは少数者ゆえの悲劇というものだろう。その生まれゆえの絶対的な孤独感、それに加えて、外貌の醜悪さや奇怪さ。心許せる仲間とてなく、圧倒的多数者の前に放り出され、自分の心情は考慮されることなく、はじめから異端者として迫害される運命。だからこそ、モンスターに心寄せるものは、彼らにシンパシーを抱くのだ。編集者の意図もその辺にあるのだろう、モンスター物であるのに、ホラー臭はさほど感じない。
むしろ、モンスターを世に入れられることのない単独者の隠喩であると見るのが正しいのかもしれない。着ぐるみやメイクアップ、仮装が重要なモチーフになっているように、仮面をかぶることでしか、ふつうの人々の間にいることができない、他に理解されない哀しさ辛さを噛みしめる孤独な人たち。彼らの内心をモンスターに託して描いてみせる作品が多いのは、むしろ不思議でもなんでもないのかもしれない。それだけ、家族や友人たちの無理解に苦しむ人が多いということなのだ。だからこそ、生きていることを実感したときの歓喜は素晴らしい感動を呼ぶ。
巻頭のジョン・マクナリー作「クリーチャー・フィーチャー」は、除け者意識を抱き、自分をモンスターに重ね合わせる少年の、母の妊娠に由来する焦慮や不安定な心理を描いた佳篇。母の出産の知らせを聞き、雨に打たれながら「生きているんだ!」と歓喜の叫びをあげる少年とフランケンシュタイン博士を二重写しにした構成が見事。オースティン・バンの「瓶詰め仔猫」は、交通事故で顔に火傷を負い、モンスターの顔になった少年のハロウィンの夜を舞台とする復讐劇。事故の原因を作った相手の少年は死んでいた。未来に希望のもてない少年は事故死した少年の妹を復讐相手に選び、クスリで眠らせ自分の思いを遂げようとする。眠り込む前の少女の告白が���年に過去を許させ、未来を拓く。
上質の白い紙に色刷りの挿絵入りで横書き印刷された雑誌に載りそうな、しゃれた短篇が多い中、しっかりした文学的な読み応えを感じさせてくれる長めの作品もある。俳優になるために家を出たジーンは、仕事にあぶれての帰り道、北カリフォルニアでビッグフット役のアルバイトをすることになる。着ぐるみをきて、客を脅かす仕事が終わるとバンガローに帰る日々。引っ越した日に隣に住むジミーと仲良くなる。青年は肺を病んでいた。モンスターとの関連は着ぐるみだけだが、周囲との交わりを絶たれ、森に隠れ住む孤独な姿はビッグフットを偲ばせる。家族から離れて暮らす二人の心の底にしみいるような孤独が胸に迫るローラ・ヴァンデンバーグ作「わたしたちがいるべき場所」。
ロックが好きな「モスマン」(蚊人間)を主人公にしたジェレミー・テンダーのロック好きなら涙なくして読めないマンガをいれて十六篇。ファンタジーはもとより、ショ-ト・ショートあり、純然たるホラーあり、とどれも面白い。ジョニー・デップ主演の『エド・ウッド』でベラ・ルゴシを演じるマーティン・ランドーの演技に涙した人には絶対にお勧めの掘り出し物。あと少ししたら、この中の何人かの単行本が読める日が来るにちがいない。編集の妙味を見せるアンソロジーの佳作である。
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すっっっっっっっごくおもしろかった!
いろいろ忘れられない話はあるけど、個人的には「コング・ガール」が一番心に残った。
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「モンスター」というタイトルとキュートな表紙につられてモンスターもののブラック・コメディだろうと勝手に思って読んでみたところ、あれま、ひとつひとつのお話が読後にじんわり心に訴えかけてくるものばかり。どうりで帯の推薦文が岸本佐知子さんだったわけだということが解せました。個人的には「モスマン」「受け継がれたもの」「泥人間」が心に残りました。ちょっぴり切なく、心温まるモンスター・アンソロジーです。
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いくらジャガイモが好きでも、ジャガイモ料理フルコースを出されたらどうだろう。もくもくもそもそ。あんまり好きじゃなくてもキュウリやレタス、魚など、違った歯触りの食品が食べたくなるだろう。そんな感じだ!お互いが相殺しあってるんだ!どれも同じに感じられて見分けがつかない!
他のオムニバスで知ったアリッサ・ナッティングが書いた本はないんかね、と捜したら、一編だけ入っていたのよ。「現代アメリカ傑作短編集」とあるが、傑作ではないだろう!そこそこや!最後のモスマンの漫画が一番良かったです。
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[出典]
https://twitter.com/dempow/status/1161965783569747968