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著者は今も存命でお元気そうなので、1988年版の単なる復刊ではなく、最新事例を加味した改訂版でだしてほしかった。(最低でも第1部の総論はそのままでもいいが、第2部の各論はやはり最新例の方が説得力がある)
というのも、本書の中の「新版まえがき」が結構面白かったというのもあるし、紹介している企業の現在の盛衰なども新しい分析の対象として利用できるはずだし、やはり「バカなる」理論が現在でも立派に通用しうるものだという先見の明の証明にも帰するのではないか。
本書で特に面白かった例は、3Mの事例。(P230)
3M(ミネソタ・マイニング・マニュファクチャリング・カンパニー)がミネソタ・ミステイク・マニュファクチャリング・カンパニーと呼ばれるくらい、失敗に対して寛容な企業文化を説明している内容、具体的には、社内での成功率を10%と低く見積もり、チャレンジして失敗した者の処遇も元の地位と同等のポジションが保証される、撤退(失敗)の基準が明確(3年間の累積赤字が200万ドルを超える)というチャレンジへの意欲をそがない工夫が企業の決まりとしてはっきりしている。
これなどは、失敗しても本来であれば新企画にゴーサインを出した時点で役員の責任も追及されなければおかしいが、結局は発案担当者のみが全責任を負わされ、成功すれば部門長の功績などという馬鹿げた組織力学が幅を利かせていた不条理への優れた解決案だと思う。
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「バカな」と言われるくらい他社と異なる戦略。
「なるほど」と納得のできる合理性。
略して「バカなる」。
単なる思いつきでもなく、緻密に考え込まれた論理的なものが成功する戦略には必ずあるということだろう。
事例は古いが指摘されていることは今でも確かにそうだなと思うものが多い。また、他の経営戦略の本にあったなあと思うものもある。たとえば、人選びとは人づくり。ビジョナリーカンパニーにもそんなこと言われていたような。つまりは普遍性のある事柄がたくさん書かれている。
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楠木建教授の働きかけによる復刻本、ということで期待して読んだ。
初出が1980年代後半だけあって、さすがに挙がっている事例は古いのだけど、当時絶賛された企業が今現在どの程度競争優位を維持しているか確かめられる、という点では、公平に読めた。イビデンとか、ちゃんと高収益のまま生き残っている。
この手の、「エクセレント•カンパニー絶賛」系の本は、選択バイアスが綺麗にかかっていて、上手く行った会社の検証を一生懸命やるけど、同じことをやって上手くいかなかった会社の検証は為されないことが大半で、この本もその点は同様なのだが、著者の代わりに歴史が証明した感じでしょうか。
バブル前、バブル期も、企業は生き残りを賭けて、試行錯誤を繰り返していて、漫然と成長した会社なんてないんだなあ、と、いま成熟産業にいる身としては、勉強になった。
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楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略」の核となる概念の着想は、本書から得たとのこと。1988年に初版が出版されたものだが、「ストーリーとしての競争戦略」の影響もあって復刊となった。
「…成功する戦略には二つの条件がなければならないことを教えている。差別性と合理性である。
差別性とは、多くの企業がとっている常識的な戦略とちがう戦略、つまり非常識な戦略である。平たくいえば、『バカな』といわれるくらい他者とちがう戦略である。
もう一つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たくいえば、『なるほど』と納得のできることである。」
「…『バカな』戦略の場合、模倣がおくれやすい。競争会社は『バカな』『あんなことをしたらおしまいだ』などと思っているから、じっとみている。その間、『バカな』戦略の企業は、足元を固め、創業者利潤を享受できる。やがてそのうちに、他者がその『バカな』戦略の成功に気づく。しかし、どう考えてもおかしいということで、なかなか模倣しようとはしない。」
先日日経新聞の記事で、エア・ウォーターがバイオマス発電所を福島に建設するとの記事があった。インドネシアやマレーシアのパーム油生産工場から出る廃棄物のヤシ殻のほか、東南アジアや北米などから輸入する木質ペレットを燃料に使うとのことで、ちょっと事情を知っている身からすると、これまでだったら、「バカな」で片づけてしまうところだが、何か特別な「なるほど」があるのでは、と考えるようになった。これは収穫である。
「業界間の落差を利用して戦略を発送するという方法からすると、遅れた業界の企業は幸せであるということができる。進んだ業界には答えがいくらでもあり、その答えをみながら、遅れた業界のなかにいる自分の会社のために戦略を発想することができるからである。」
「『バカな』といわれるくらいユニークな戦略を考え出すためには、一般には創造的な思考が必要ということができる。しかし、…ユニークな戦略を考えだすためには、かならずしもとびぬけた創造的思考能力が必要なわけではない。外国の答えをみながら、また進んだ業界の答えをみながら、自分の会社のために戦略の答案を書けばよいからである。」
「戦略を伝達する手段として、六つの方法をあげた。(1)口頭、(2)文書、(3)人事、(4)予算、(5)組織、(6)日常の言動の六つである。」
「…企業には既存事業を維持・拡大させようとする強い組織慣性という力があり、その反対に新しい事業など変化にたいして抵抗する力がある。新事業は、そういう変化への抵抗を克服して、ある意味で無理をして実行される。…新事業を育成し、軌道に乗せるためには、この社内の批判派の抵抗や批判に打ち勝たなければならない。そのときにも、社長などのトップのリーダーシップが重要な役割を演じるのである。」
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楠木さんの「ストーリーとしての競争戦略」や
「戦略読書日記」で紹介されていた本。
かなり古い本で、それが再出版されて、でも現時点ではまだ絶版なのか、
中古でしか手に入れることができないんじゃないかと思います。
※ストーリーとしての競争戦略
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4492532706#comment
※戦略読書日記
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4480435913#comment
出版が1988年なので、事例としては相当古い事例しかないのですが、
タイトルが良くできている、、というか出来過ぎている。
本の内容はタイトル通りで、
一見、「バカな!?」と思えるような戦略が
他社が模倣し辛く、持続的に競争優位を保つことができ、
結果的に「ナルホド!」と後から納得できる、という主張。
もう少し、具体的に深く分析した上で、事例を挙げて欲しかったような気もするが、
そういうニーズを持つ人は、「ストーリーとしての競争戦略」の方を読んだ方が良いということかもしれない。
さすがにこの本が出版されたころのビジネス環境は、
生まれてはいるけれどまだまだ子供で全く肌感覚がない。
ネットがない時代だったりして、今とは少し違う環境とは言え、
今と言われていることが大して変わらない、と感じることもある。
それくらい、人や組織は変わること(変革)が難しいということなのかもしれない。。
楠木さんが絶賛されていたが、個人的にちょっと不満だったのは、
主張のロジック構築に関するところ。
確かに、「バカな」と思える施策がその企業のパフォーマンスに結びついている面はあるかもしれないが、
本当にそれが主要要因なのか、それに対する分析が本の中だけだと甘く、
消化不良感が残ります。
(もしかすると、それが楠木さんも
「初見ではあまりこの本の良さに気づかなかった」と
仰っている所以なのかもしれない。)
「バカな」と「なるほど」を真の意味で体感したいのであれば、
やはり「ストーリーとしての競争戦略」に言った方が良いのかもしれない。
(「戦略読書日記」での激賞加減はちょっと言い過ぎかも!?
ただし、逆に楠木さんの書籍から学ぶ吸収力には目を見張るものがあるとも言えそうです。)
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タイトルが秀逸です。非合理の合理が大事だということである。一見バカだなぁと思われるようなことが少し時間が経つとその他の複合要因が絡まって合成して合理的な結果になる。そんなビジネスが真似されず高い参入障壁を構築する上で大事なんだと思う。
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【星:3.0】
タイトルからはわかりづらいが経営学の本である。
そして、この本を読む前に楠木建「ストーリーとしての競争戦略」を読んでからの方がいい。
この本で言っているのは、企業の戦略は「バカな」と思われるような一見して非常識だが、よく考えてみると「なるほど」理にかなっている、というものが良いということである。
何となく当たり前のことを言ってる感じである。
この本がちょっと売れているのは、結構売れている「ストーリーとしての競争戦略」の内容を思いつくきっかけとなった本として楠木健が紹介したからである。
なので前記著書を読んで「良かった」と思う人出ないと感じるところは少ないと思う。