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いじめを苦に自殺した四辻美紅。主犯達は退学や謹慎の罰を受け、事件は一度終ったかの様に思われた。しかし、いじめを先導した生徒のSNSには死を宣告する書き込みがされ死亡する。呪いだと囁かれる書き込みであったがそれは始まりに過ぎなかった。
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久しぶりの携帯小説ホラー。野いちごや魔法のiらんどとも違う、ピンキー文庫という聞きなれないところから出ている携帯小説である。調べてると、他の携帯小説レーベルの様に多くのホラーは出していないようで、このほかには2冊出ているきりだったのは些か残念である。
さて、こちらの小説は携帯小説だけあって、発刊当時に利用されていたSNSであるツイッターの様なSNSを媒体に繰り広げられる恐怖譚だ。 当時ツイッターを利用していたティーンエイジャーたちにはこの恐怖感が刺さったことだろう。当時の娯楽のアイテムが恐怖の対象に変わるというものは、リングのビデオテープに通じるものがあるが、身近にある何でもない物が命を奪いかねないアイテムに変わることのなんと恐ろしい事か。私は娯楽が恐怖にとってかわるというホラーが好きなので、中々面白い一冊だった。
いじめを苦にした女生徒が自殺をし、その事件の罰を受けるように死んでいく首謀者たち。SNSに書き込まれる死の宣告という分かりやすい形でふりまかれた呪いは、徐々に首謀者やいじめを静観していたクラスメイト達を毒牙にかけていく。呪いを信じていなかったクラスメイト達も忍び寄る死の影を感じ、危機感を覚えて覚えてじわじわと関係性を壊されていく。全てにおいて呪いの拡散者の明確な殺意と復讐心を感じ取ることができゾッとした。 小説の描写や呪いの設定も作りこまれていて、細部までいきわたっており、それが余計に臨場感を生んで読んでいて非常にハラハラした。久しぶりに携帯小説のホラーを読んだが、今まで読んだ中でもかなり面白い話だった。オチ手前はちょっと納得いかないな?と思っていたが、オチと作者のあとがきを読んでやっと腑に落ちた。 最初から呪いの拡散者はそのつもりだったのか分からないが、最初から仕組んでいたのだとしたら用意周到すぎる。 物語も最初から最後まで手のひらの上で踊らされている印象であったので、そうなのかもしれない。
あとがきの前におまけの様にある七不思議の小話も面白かったし、あとがきで最後の恐怖を読者側に植え付けたのも面白かった。 久しぶりに良質な携帯ホラー小説を読めたので満足だった。