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傑作でした。
「歪む文字を幾度も目で追いながら、佐和をどうするのだと思った。」
そうだよ、どうするんだよ!
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予約をしていたこの本が手元に届いた直後に直木賞候補になったと発表になった。
もうちょっと遅かったら順番がなかなか来なかっただろう。ラッキー!
苦手な時代小説である上にテーマは藩札。
藩札とは各藩の領内でのみ流通する紙幣の事。
貧しい国では領内の経済流通を活性化させるために藩札を発行したんですね。
主人公は藩札掛を任命された奥脇抄一郎。
いや、最初は正直つまらなかった。
経済の話をされても良く分からんし、なかなか物語が動かない。
藩札を増刷に反対した抄一郎が国を飛び出し江戸でひっそりと暮らしていた。。
やがて藩札の指南役として北の小藩の経済を立て直すことになる。
お!段々面白くなってきた。
「鬼はもとより」というタイトルだけど、鬼って誰??と思いつつ読む。
鬼は執政である梶原清明だった。
いやー、この清明さんが格好いいのなんの。
命を賭して財政再建に取り組む姿は非道そのもの。
だがその裏の姿を抄一郎は見抜いている。
「誰よりも鬼に向かぬものが、誰よりも厳然と鬼をやっている。顎を震わせながら、鬼をやっている。」
しびれました。
本気で国を変えたいと思ったら、このぐらいの気概がないと。
最後は思わず涙涙になってしまったこの小説、とっても良かった!!
どこぞの国の首相への強烈な皮肉に思えて仕方がなかったのは内緒です(笑)
今回の直木賞、難しいなあ。
この作品も良かったし、大島さんにももちろん受賞してほしい。
今予約中の「サラバ!」も楽しみにしているし。
困りましたね・・・。
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時代ものはあまり得意ではないのだが。
これは経済学的視点で読む価値がある。
フィクションなのだろうが、江戸時代の日本も、多分世界と互角に勝負できるだけの実証的な経済学が発展していたのかと、本筋とは異なるところで腑に落ちながら一気に読んでしまった。
これは教材にも使えるかも知れない。
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直木賞候補作。(直木賞は『サラバ!』)
江戸時代の藩札掛をテーマにしたのは斬新だったが、葉室 麟のような濃厚で芳醇な文章でもなければ、起承転結、紆余曲折もない。
全てが上手くいき過ぎるストーリー。
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江戸中期の貧乏藩の財政立て直しの為に、他藩からの浪人が藩札を運用をするお話。
話の軸はそうなのですが、主題は、物事を推し進める武士としての覚悟。タイトルにある鬼になって突き進む覚悟。そんな不退転の生き様でしょうかね。
さて、主人公の技が藩札の発行・運用なのですが、今でいう、地域通貨/国債みたいなものでしょう。経済の話になるのですが、これがなかなかエンターテイメントとして描かれていて爽快です。
また女性との関わり方も、ぐたぐたしながら、いろんな視点で「女性とは~なものだよ」てな会話がちょくちょくでてきて楽しいです。
そんな感じでとても楽しい小説でありました。
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経済に破綻をきたしそうな藩札のご指南役~といった、時代物でしかも経済小説。どちらかというと苦手なジャンルでしたが、男の生き様をこれほどまでに深く切なく描き出して・・・苦手なジャンルとは言いつつもストーリーの根幹を流れているのは泣ける男の人生なのでした。
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主人公の生い立ちに必然を感じさせられなく、前半は話が散漫になった感じ。後半は悪役の作り込みが足りなく、緊張感が持てなかった。ストーリーは嫌いじゃないけれど、もう少し書き込んで欲しかった。★2。
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「今日より、世間は、梶原殿を鬼と見るでしょう」 「もとより、鬼になるつもりでおります」 藩札板行によって東北の小藩を立て直すという経済小説の体裁だが、内実は武張った武家の物語である。
徳川の治世となって百五十年。太平の世も長くなり武家は存在価値を見失いながら何処の藩も経済が傾き始めていた。
そんな中で武士とは何か?と問い詰めると「死を賭すこと」だった。
二段構えのエピローグ。前段のニンマリする話と、最後の手紙、そしてその手紙に対する問いかけがよかった。
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覚悟。死を懸けた覚悟がいるのだ。鬼とはなれぬ人が、鬼となるには。
日本人は、元々金(かね)についての話を避ける傾向にあると思う。
士農工商という身分制社会に象徴されるように、金を扱う商人は最下層におかれる。
そして、金を儲けることはいやしいものとされ、あぶく銭などともよばれる。それは現代も変わることなく、金に真摯に向き合い獲得した所得は、しばしば不労所得などともいわれる。
他方、金が人々の生活を円滑にするために役立っていることは間違いなく、物と物、物と仕事など異なる性質のモノを交換するために、金は必要不可欠なものとなっている。
本書の主人公は、武士である。お役目は御藩主を間近でお守りする御馬廻り。家柄、武芸に優れた武士の華。その武士が、刃傷沙汰に巻き込まれ、半ば追いやられる形で勘定方藩札係に就くこととなる。
そして、そこで金のもつ意味を知り、その重要性を認識する。
金を扱うということで一見商いに近い行為とみられるが、経済政策を行うということは国の最大の敵貧しさと戦うことだと見切る。そしてそれを成し遂げることができるのは、死を賭して戦う、死と寄り添う武家のみだと知る。
我が国で経済政策を行っているものたちは、自分の責任を認識しているのだろうか?
政治家や役人は、自らを懸けて闘っているのだろうか?
二の矢、三の矢と徒に無駄な矢を射続け、自ら掲げた目標達成期限を、できそうにないから延ばしますと、自らの地位と一緒に延命し続ける者たちは...
また本書は、その責任をとらない者たちを追い詰めない、我々にも手厳しい。
ほんとうに貧しい国では、誰もが人に対して曖昧に、優しくならざるを得ない。相手に攻めを問うな、相手を追い詰めるなというのが習いになると。しかし、経済政策を断行するには、その優しさは仇となる。
自らの退路を断ち、組織の甘えを断ち、他人の命を奪い、自らの命を惜しまぬ。その鬼の心を持つことが、断固たる戦いを成し遂げるのだと。
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たいへんおもしろかった。
サラリと読めるのに、
ドドンとかっこいい。
”佐和をどうするのだと思った。”
最後のこの一文に打たれた。
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藩札を使った藩財政再建の時代小説。
恋愛やチャンバラもあるのですが、あくまで味付けであって、テーマがしっかりしていてブレが無かったので非常に読みやすく面白かったです。
奥脇メソッド最強と思いましたが、推進する人に覚悟が無ければどんないい方法論も実践結果が出せないのは、現代も同じですね。
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時代小説で、経済もの。藩札という仕組みを初めて知りました。
経済に疎くても、十分楽しめます。
壮絶な武士の生き様がきちんと書かれていて、そのうえでなるほど、と思う理論があちこちに出てきます。
「元々、役所の端くれでもあるから、札場に詰める者は”換えてやるぞ”といわんばかりの態度になりがちだ。好きで使っているわけでもないのに、引き換えるたびに偉そうにされたのでは、使ってやろうという気も失せる。その小さな穴から、大きな仕組みが崩れ出すのだ。」(P-33)
女が己の非を認めない事について、”獣(けだもの)”と呼ばれた長坂甚八の言葉。
「あれはな、女の潔さなのだ。」
「母親はなんとしても生き延びねばならんということだ。自分が死ねば、子も死ぬ。とにかく生きることが先決だ。とはいえ、自分一人の身ではない。傍らには常に無力な子がいて、守らねばならず、ひたすら無防備である。そんなときにあっさりと己の非を認めて、いちいち責任を取っていたらどうなる。もしも、そんな母親がいたら、子はまちがいなく野垂れ死にだぞ。だから女は非を非と認めぬようにできている。神様がそう造られたのだから、自分が非を認めぬことに気づくこともない。」
「それに、文句を言う筋合いでもない。どんな手を使おうと、とにかく子だけは守り抜く・・・それこそが、女の潔さなのだ。俺もお前も、母の潔さのお蔭で、いつ死んでもおかしくはない子供時分を乗り切る事ができた。」(P-42)
「女たらしに、退却はないぞ」
「女遊びをする限り、けっして己の好みは持ち込むな」
「いったん誘ったからには、好みに合わんとか、想ったようではないとかいうのは一切なしだ。それでは、なにも得られん。なにひとつとして分からん。好む処がひとつもなくとも、なにか手掛かりを見つけて、きっと、終いまで辿り着け。あれこれ言うなら、その後だ」(P-83)
なるほど、深い。
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藩札の意見の違いから脱藩し浪人となった主人公に東北の貧困藩から経済の立て直しの依頼がもたらされる.家老の大胆な決断(追放、切腹申し付けなど)は鬼そのものであったが、主人公の知恵と経済の新しい波に乗ることとあいまって政策は成功する.現在の会社経営にも通じるようなサクセスストーリー.
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藩の御主法替え,藩札掛などあまり知らない世界を知って,興味深かった.主人公は脱藩して万年青商いをしている奥脇抄一郎だが,彼が指南して助ける藩の梶原清明の鮮烈な生き方に感動した.題名「鬼はもとより」と装丁の美しさも内容とぴったりだった.
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表向きは万年青売り、本業は江戸時代の経営コンサルタント(藩札板行指南)である抄一郎のお話。前半はいまいちでしたが、後半になり「鬼」である清明が登場してから面白くなりました。死を覚悟して、国を立て直そうとした清明。まさに「鬼はもとより」でした。