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トマス・アクィナスが、人間の持つ様々な感情をいくつかの補助線を引きながら分類していく。その手際は見事で、分類や体系化が好きなアリストテレス哲学との類似性を思い起こさずとも、それ自体が十分に興味深い。そしてそれらの分析によって、「人間の心は本来的に、常に肯定的な方向に変化するようにできている」ことを説き明かしていく。著者はこうした事柄を、おそらくは読むのに忍耐を必要とする『神学大全』から読みとり、我々読者にわかりやすく示してくれている。最後近くでキリスト教の三元徳をギリシア的な人間の魂のあり方に位置づけていくくだりもおもしろかった。
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神の愛によって人間に対するキリストの愛が喚起され、その愛を受けた人間が他の人間に愛をもたらしていく。そのような「愛による共鳴」が、トマス・アクィナスのテクストの丹念な解読によって明らかにされている。
私自身、トマスについては教科書的な知識、それも敵(かたき)のように見る改革派神学の立場でしか知らなかった。この本で知れるのはトマスの、そして『神学大全』のホンの一部に過ぎないだろう。しかし、愛や喜び、怒りなどの「感情」という身近な視点が扱われており、私にとっては良きトマス入門となった。
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一章二章はただ読み進めただけに等しい。
神学に触れる部分から興味を持ち、成る程と思う所もあった。
何度か読んで理解できてくる…そんな書かも知れない。
預言者は神の言葉を預かる者で先の将来を予言するものとは違う。深い!
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前半の綿密な感情の分析が、後半の「神の感情」、そして「キリストの受難」を描くための見事な序奏になっているという仕掛けに唸らされました。神について語ることがネガのように人間のありようを炙り出す。やられた。