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幻の女 みんなのレビュー

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みんなのレビュー96件

みんなの評価4.1

評価内訳

92 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

このスリルは江戸川乱歩のお墨つき。

2010/06/15 20:01

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

アイリッシュの短編集が好きだ。
サスペンスともミステリーともいうが、
彼の作品には「スリラー」という言葉が
いちばんぴったり来るのではないだろうか。
初めて読んだ長編の本作に対しても
思ったことはおなじだった。

じりじりと死が迫ってくる恐怖を
緊張感を保ちつつ一気に読ませてしまう。
読者は、いったん物語へ足を踏み入れたら、
事件の残酷さに目をおおい、
絡まった人間関係のせつなさにため息をつき、
刻一刻と迫るタイムリミットに焦燥感を抱きながら、
ラストに辿り着くまで
ジェットコースターから降りることができない。

「自動車に乗っているのは、
 もはや、彼ら二人だけではなかった。
 先刻からつづいている沈黙のうちに、
 いつの間にか第三者が乗り込んできて、
 いま、二人のあいだに席を占めていた。
 それは、氷のような経帷子をまとった恐怖であった。」
(本文より引用)
こういった、ひんやりとした表現が独特である。
落ち着いた中にもぞくぞくとした怖さを感じさせる。

本国で書かれたのが50年以上も前なので
もう古典の部類に入るのかもしれない。
携帯電話も、監視カメラもない時代、
冤罪を着せられた男のアリバイを証明するために
彼と一緒に過ごした女の目撃証言を
一軒、一軒、「足で稼ぐ」というストーリーは
まったく「古典的」といえるのかもしれない。

しかし、ここには、
人間の心理といった普遍的なものが丹念に描かれている。
それは、真実ともいえるのかもしれない。
いまなお読み継がれ、その魅力をあらたに発見できる。
そんな本には必ず、真実が書かれている。
それは事実そのものではなくて、そう感じさせる力のことだ。

「幻の女」を読み進んでいくうえで、大きなポイントになるのが、
彼女が被っていた奇妙な帽子。そして、
一緒に過ごした男自身が、彼女の顔を覚えていないこと。
これらが絶妙に作用して、「幻の女」というストーリーを
練り上げていく。わたしは、ジェットコースターを降りるとき、
つまり最後の一行、刑事のせりふに辿り着いたとき、
「なんてしゃれてる!!」と膝を叩きたくなった。
ウィットとかエスプリとは、まさに、このこと。
古い言い方だが、まるでアイリッシュに
ウィンクされたような、「やられた」感があった。

解説によると、江戸川乱歩が絶賛していたという。



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紙の本

恐るべしアメリカ古典ミステリ

2011/04/01 20:10

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る

【友情に年齢制限はない。昔持っていた友情なら、いまだって持っている。もしそうでなかったら、昔だって親友でなかったわけさ】 警部バージェス

本当にこれが1942年に書かれた作品なのか!? 一体何十10年先を行ってるんだ。そりゃあ負けるわ戦争も。ちなみに先日読んだエラリー・クイーンの名作「災厄の町」と同年発表だそうだ。恐るべしアメリカ古典ミステリ。

プロットがすばらしい。そしてトリック・キャラ・リーダビリティ・演出・描写力・文学性・・・どこを取っても非の打ち所がない。しいて言うなら、ちょっと説明がくどい解決編と幻の女の正体ぐらいか。エンディングをもっとスパッと切り刻んでいたら、間違いなく神話になっていただろう。

無実の罪を信じ、メロスの如く東奔西走する献身的な親友ロンバート。そこまで彼を駆り立てる友情の絆とは!?

こういうのを普遍というのだろう。衝撃に年代制限はない。昔持っていた衝撃なら、いまだって持っている。もしそうでなかったら、昔だって名作でなかったわけさ。

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紙の本

徹夜必至のジェットコースターサスペンス

2002/02/06 18:00

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る

 妻とのちょっとした口喧嘩がもとで、ひとり夜の街にさまよい出た主人公。彼はたまたま立ち寄った酒場で、ひとりの見ず知らずの女と出遭う。ふたりは一夜限りの友人として食事をし、ショウを見物するという取り決めで、行動をともにする。女と別れ、自宅に戻った彼を待ち構えていたのは、無惨に殺害された妻の死体と、彼に疑いの目を向ける刑事たちだった…。
 主人公のアリバイを証明するのは、あの見ず知らずの女性だけ。しかし、いくら捜しても彼女の姿は見つからない。しかも、ふたりを目撃しているはずのバーテン、タクシー運転手、ボーイ、劇場の支配人など、ことごとくの人間が、その女の存在を否定するのだ。「いいえ、お客さんはおひとりで、お連れの方はいらっしゃいませんでした」。
 “幻の女”の謎をめぐる強烈なサスペンス。“夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった” という有名な書き出しに象徴されるような濃密なムード。チクタクと音が聞こえてきそうな、迫り来るタイムリミットの緊迫感。読み始めたらやめられないジェットコースター小説の古典的傑作といえるだろう。
 ただ、謎の不可能性を高めるために、解決の論理性やリアリティをかなり犠牲にせざるを得なかった部分もある。しかしまあ、これだけハラハラドキドキ楽しませてくれたんだから文句は言えないだろう。

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紙の本

かくれんぼではないかくれんぼ

2015/11/30 15:56

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

初めて読んだ時、幻のように消えた女のことを、私は、まるで、太宰治の『人間失格』の主人公のようだ、と思ったものだ。その男の写真を見ても、何も記憶に残らない。写真を伏せると、もう、忘れてしまう、という。

これは、不運にも、殺人事件のアリバイを証言できる人が、神隠しになってしまったため、死刑を宣告されてしまった男の救出劇だ。

二十三の章が立てられ、各章は、死刑執行前、何日、という題になっている。

百五十日、百四十九日、九十一、九十と来て、八十七日で、死刑を宣告され、その次の章が、二十一日、となっている。そのあとはまた、十八、十七、十五、十四、というぐあいになっていくので、なんで、八十七日と二十一日の間だけ、二か月もあいているの?と思う。

監房の囚人スコット・ヘンダースンも、バージェス刑事に向かって、なんで今になってやって来たのか、と尋ねる。

そこでバージェス刑事がなんやらかんやら巧みに説いて、ヘンダースンは、親友のジョン・ロンバードを呼び寄せて助けを求めることを承知させられる。事件当日に南米に行ったので到底無理だと、初めから当てにしていなかったものを。

もうひとり、ヘンダースンの恋人のキャロル・リッチマンも、ヘンダースンの無実の証明のために奔走する。

ジョン・ロンバードも、キャロル・リッチマンも、それぞれ、別個に、バージェス刑事と連絡を取り合っていて、このふたりが手を組むことはない。

キャロルの、ひたすら見つめ続けることでひとりの人物を追い詰めていく手法は、この作品より後に作られた、日本や海外の刑事ドラマやサスペンスドラマで、何度も、目にしている。

いくら顔が印象に残らなくても、その女が被っていた、特大鮮烈カボチャそっくり帽子が、誰の記憶にも残っていないはずがないのだ。劇場ドアマンがびっくりまなこの「眼玉芝居」で見送ったり、劇中、プリマドンナがまったく同じ帽子を被っているのがわかって、客席と舞台の対決に観衆がざわついたりしたのだから。

にもかかわらず、誰も目撃証言をしないというのは、何者かの意志が働いているのだ、買収されているということだ。

ロンバードも、リッチマンも、行く先々で、もう少しというところで、相手が、事故死や自殺を遂げる。

とうとう、死刑執行当日になってしまう。

それでも、ロンバードは、最後の賭けに出た。ヘンダーソンには、「指いたずら」の癖があり、プログラムのページの右上隅を全部折っていた。それを記念にと、あのカボチャ帽子の女は持って帰った。そいつを釣り上げるのだ……。

日本でもドラマ化されたことがあるが、あらすじは似ていても、原作とは別物である。別の世界のものである。なんといっても原作の魅力は、最初の一行にある。

>夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

そして軽快にして哀愁のにじむ筆で描かれていく、都会の華やかさと寂しさ、自由と悪徳、豊かさと貧しさ、若さと老い。

>「ほら、ここにわたしの名前がでておりましょう。……(中略)……この最後の場面では、わたし、“青春の精”の役をやったのでしたが――」
>“時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ。ロンバードはそんなふうに思った。“時”こそ、けっして罰せられることのない殺人者なのだ。

物語が終わってみれば、バージェス刑事が、実にりっぱな刑事であったことに感心する。八十七日の章と二十一日の章の間があいていた理由も含めて。そして、「幻の女」の姿が、心の隅に残って、忘れ去ることができなくなる。

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2005/02/15 09:38

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2005/10/10 15:48

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2005/10/30 17:05

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2005/11/02 16:58

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2006/01/25 17:46

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2006/05/21 23:26

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2006/09/29 15:50

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2007/09/18 16:34

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2008/10/28 05:28

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2009/10/09 15:04

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2011/04/30 12:12

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