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舞台は無数の殺人事件の起こるニューヨーク。「裸の町には800万の物語があるのです」というテレビ番組の決まり文句をを殺人課刑事が「800万の死にざま」と皮肉る。この「腐りきった」町の中でアル中の私立探偵がコールガールの殺人事件を追う。
ミステリーとしては派手な展開はない。賭けボクシング、場末の酒場、ひも、モーテル、謎の黒人、おかま、タレこみ屋というハードボイル世界の中で、主人公が地味な探偵活動を行い、犯人を探し出してゆく。
この小説は純粋なミステリーというよりも、主人公が欲望を抑え、いかに自らのアルコール中毒に折り合いを付けていくかという過程を描いた一種の教養小説として読むと面白い。主人公が毎晩通うセント・ポール教会でのアル中の集会で主人公が聞いたこと、自分の発言のシーン、禁酒して8日目の出来事は非常に印象的。特に、最後の2段落は長い間、余韻が残った。
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[不条理の交差点で]ある出来事が引き金となりアルコールから抜け出せなくなった私立探偵のスカダーは、コールガールから「ヒモとの縁を切りたい」との依頼を受ける。男との話し合いもつつがなく進み、何事もなく幕が引かれると思ったのだが、男とそのコールガールが面会をした翌日、彼女がとあるホテルの一室で惨殺されたという報がスカダーの下に届き…...アメリカ私立探偵作家クラブのシェイマス賞を1983年に受賞したハードボイルド・ミステリーです。著者は、映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の脚本も手がけているローレンス・ブロック。訳者は、ミステリーの翻訳を主に手がける田口俊樹。
(限りなく良い意味で)小説から漂ってくるすえた雰囲気がたまりません。無関心と不条理に貫き通されたニューヨークという舞台で、これ以上なく渋く、それでいて人間臭く生活を送るスカダーというキャラクターにまずは心を奪われるはずです。ハードボイルドという言葉がなんとも時代遅れに感じられる今日ではありますが、本書中で交わされる会話も含め、この作品にはまさにその形容がピッタリと来ます。
ミステリーの側面でもこれまたお見事。特に後半に至ってグッとアクセルを踏み込んだかのようにグイグイと読者を引き込んでいく様に、「ミステリーにハマっちゃうのってこういうところなんだよね」と思わずにはいられませんでした。書かれた頃からずいぶんと月日が経過していますが、それでも色褪せない、というよりも逆にヴィンテージもののような渋いカッコよさがつきまとう一冊でした。
〜私には彼を許さなければならない義理などない。許すことは神の業だ。私のすることではない。〜
どうやらローレンス・ブロック氏の作品群の中でもこの作品が3本の指に入るようで☆5つ
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マットスカダー五作目。
八百万の死にざま(英題:eight million ways to death)、
というタイトルがまず目を引く。
年々悪化する犯罪に対する警官の愚痴がまた興味深い。
"八百万の死にざま"とは上手く言ったものだと思う
名前のミスリードはちょっと捻っていて面白い。
これはアルファベットだからできると感心。
これまで以上にアルコールに対する
スカダーの葛藤が書かれており、
ファンなら面白く読めると思うが
純粋にミステリとして読むのであれば蛇足と感じるのだろうなぁ。
でもこれが無いとアル中探偵マット・スカダーじゃない。
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800万って、ニューヨークの人口だそう。
東京より暮らしやすそうだよな・・・
タフで優しいのはモチロンだけど、古風で頑固でセンチ。ハードボイルド探偵はこうでなくっちゃ。
(辛いなら新聞を読むのをやめればいいと言われて)
”世の中のことから目をそらすことはできない。
-自分が人間というものに関わっているからだと思う"
ポーランド人街にあるチャンスの隠れ家がいいな。
電話もチャイムもベロなしで。
”ガレージの扉を閉めりゃ、世界と俺とは一切関係がなくなる。何も俺に触れてこない。何もな。”
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久々に魂を打たれた。(あくまで俺の中で)嫌みにならないギリギリのカッコよさの文体。スカダーの独白や、ふとしたセリフが石をうつ水滴のようにゆっくりと心にくる。
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マットスカダーシリーズ第5作。シェイマス賞受賞作とのことだが、何かテンポが悪く、読むのに時間がかかった。
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数年ぶりに再読した。
初めて読んだのはまだ高校生か大学生の頃だった。ずっとこのマット・スカダーシリーズを読んできていたからか、ラストシーンで泣いたのを覚えている。
その頃、マットのように「いきつけのバー」で「いつもの席でいつものもの」を頼めるような大人になりたいと思っていた。ちょうど、マットとダニー・ボーイの会話のように。
そして今、マットと同じようにお酒を飲む大人になった。
お酒を飲んでいない時にはわからなかった、マットが酒に浸る気持ちが少しづつ分かり始めている。
キムという娼婦が殺された。
ほんのちょっとすれ違い、ほんのちょっと人生の後押しをしてあげただけの、たったそれだけの関係の女性。だけどマットは彼女の事件を追い続ける。何故なのかは自分でもわかっていないようだ。
ニューヨークの暗い部分を歩き続け、最終的に見つけたキムを殺した犯人。キムが殺された理由。
事件が終わって手にしたバーボンのグラス。11日も禁酒していたのに「鉄くずが磁石に吸いつけられるように」酒を頼んでいた自分に気づいて、そして迎えるラストシーン。
今度は泣かなかった。
胸にこみ上げてくるものがあるのは変わらない。ニューヨークという街とそこに生きる人たちの描写がうまいのは変わっていない。マットがアル中だったことも変わらない。
ただ変わったのは自分がマットと同じお酒に魅せられた人間になっているということだけ。
泣く代わりに、カウンターの上のバーボンを飲んだ。
お酒を飲む人なら、きっとマットの気持ちに近づける。
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NY 旅行に合わせて。アルコール依存症の探偵が娼婦殺しを追うハードボイルド。良くも悪くもハードボイルドらしいまどろっこしさがある。ストーリーよりNY の雰囲気が楽しめた。
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最後のスカダーの台詞で必ず泣く。
読んだのは相当前だけど、ブクログに登録するので、引っ張りだして最後の台詞だけ読んだ。
まぁ、覚えているんだけど。
やっぱり涙が滲んできた。
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アル中の主人公ってのがこの話の芯だった。アル中はアルコールが麻薬になる病気と、テレビで聞いたのを思い出した。
主人公は探偵で依頼を受けるが、殺人の犯人を探すことになる。先が気になって一気に読んだので、犯人がそのひとなのかよく分からなかった。もう一度、ゆっくり読んでみたい。
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イメージとしてのマンハッタン。殺伐として何かが起こりそうな地下鉄とか。クソな大都会でうんざりしながらも生きていく人々。最高。
小説の大部分は、ひたすら聞き込み。地味。それでも読み進めてしまうのは登場人物が生命力があるからなのか。
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代表作。
足を洗いたいのでヒモと話をつけてくれ、というコールガール・キムの依頼は円満に済んだはずだったが、キムはホテルの一室でナタでめった刺しにされて殺害される。元ヒモ・チャンスには強固なアリバイがあったが、彼が人を使ってやったのだろう、と警察もスカダーも考えていた。しかし、チャンスはスカダーに捜査を依頼してきた。
本筋とは全く関係ないが、ヒモって言葉のイメージが違う…こういうのは女衒っていうべきなんじゃ。
スカダーは相変わらずのアル中。
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東西ミステリー100の21位にランキングされている本書は、さすがと思わせる出来栄えです。
ミステリーよりもハードボイルド小説であるのは間違いなく、さらに言えばプロットよりも登場人物たちの生き様や会話の方に本書の魅力が凝縮しています。
特に、ダーキン刑事と依頼人のチャンス、情報屋のダニーの人物造形は素晴らしく、交わされる会話の内容も妙にリアリティがあります。
後半100頁の疾走感、最後の1行でこの小説を不朽の名作たらしめたのは間違いありません。
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1982年出版『Eight Million Ways to Die』。1989年に発明されたWorld Wide Webのない時代、私立探偵は紙の地図を調べ、現場に地下鉄やタクシーで自ら出かけて行く。www
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このシリーズもいつの間にか何冊も読んでいて、前に読んでから間が空いてるのに、読み出すと思い出す。さすがマットさん。
今回もコツコツと地道に仕事を進めて、最後の解決に至るところまで実に地味なわけで。コナンくんみたいに犯人はおまえだ、的なこともなく。なんだけど、このコツコツいく拳の使い手の道のりを辿るのは嫌いじゃないなー。
毎回一緒のような気もするけど、でも時々忘れた頃に読んでみて、読んだあとで、ふぅー、と一息つくのが、なんとも不思議な魅力。