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その孤島の名は、虚 THE WONDERFUL WIZARD OF HERS みんなのレビュー
- 古野 まほろ (著)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:KADOKAWA
- 発売日:2014/10/01
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紙の本
20番目の希望
2014/10/15 01:01
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投稿者:芥川芥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
Twitterの著者広報室によると、長編20作目らしい。
同じく広報室で紹介されていた著者直筆色紙には、
当作品について「読みやすい!」と書いてあった。
確かにこれまでの著者の作品と比べると、やや文体が簡素である。
(例えばガンダム等のネタがないし、外国語のルビもない)
私の乏しい読書歴では、あまりここまで雰囲気が変化する作家もいなかったため、
20作目にしてそれをがらりと変える(今回だけかも知れないが)というのは
作家として大きな挑戦ではないだろうか。
不遜ながら、それひとつとっても、今作は著者渾身の一作だと思う。
現実とはどこか違う、おかしな現象の起こる孤島にワープ?してしまった、女子高吹奏楽部の24人。
物語は、彼女たちが孤島の謎を解き、なんとか現実の世界へ戻ろうとするさまが描かれる。
孤島の謎に翻弄される一方、女子高生たちは理不尽に命を奪われ、
部内の微妙なちから関係もあり、次第に仲間を疑うようになる。
理不尽にひとが死ぬことはそれだけでもしんどいものだが、
極限の状況下で生まれた疑心暗鬼のため、
「お前が殺した」「いやお前のほうが動機がある」などと
お互い憎しみ合い、決裂していく様子は更にしんどかった。
まったく同じ経験をしているわけではないのに、どこか生々しく、こころが痛んだ。
古野まほろの、こういった微妙な心理描写の徹底さは時折おそろしくも感じられる。
ひとの醜さも汚い感情も、逃げずに書いているから、読者も逃げることができない。
島の謎の解明も女子高生たちの絆も、その決着は是非本書を読んで確認して欲しい。
そして、おそらく著者が、デビュー作からずっと根底のテーマとして持っていたもののひとつの答えも。
それは作家自身の希望なのかも知れないし、こうあって欲しいという祈りなのかも知れない。
緻密に練られた物語を通じて、痛切にそれを訴えかけてくる本書は、
確かに20作目にふさわしい大作である。
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