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★2017年6月11日読了『親鸞 完結編(下)』五木寛之著 評価B+
長い90年の人生を生き抜いた親鸞のこの小説も、完結編下 6冊目となりいよいよ完結。
最後の最後まで専修念仏を恐れる既存の宗教界と権力者との葛藤が続く。これに対抗して、親鸞を支える庶民の念仏への思いも熱いものがある。しかし東国では、親鸞の息子である善鸞が東国の念仏集団を四分五裂の危機に追いやる。止むを得ず親鸞は事態収拾の為、善鸞へ絶縁状を送る。
一方、竜夫人は覚蓮坊との戦いに勝利して、念願の遵念寺の建立にこぎつける。彼女は実は、50年前の吉水の草庵で親鸞に会い、安楽坊遵西との子供を産むもその後行方不明となっていた親鸞の妻恵信の妹、鹿野であった。その後彼女は中国へ帰国する。
法然上人の『愚者になりて往生す』を正に地で行く老衰により90年の自分に厳しい生涯を閉じる。
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遂に親鸞、90年の生涯の幕が下りる。
親鸞の生涯は、念仏とは切っても切れない糸で結ばれていたのではないだろうか。
真の念仏とは何か。
その答えは、親鸞しか知り得なかったと思う。
愚直に真摯に念仏と向き合い、法然上人の念仏を自分の念仏として昇華していく。
ひとつのことにひたすら没頭していく人間、親鸞は非常に魅力的だった。
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親鸞三部作の完結編。
親鸞が還暦を過ぎて東国から京に戻り没するまでを描く。前2作でわくわくした冒険小説の要素は多少落ち着きをみせているが、それでも、危機一髪の場面で旧知の同志が切り札として現れるなど、本作で何度か使われるアクション映画のようなシーンが盛り込まれている。
しかしながら、完結編は、むしろ、家族との関係、本意ではない専修念仏の広がり、自らの凡庸さをなどに悩み苦悩する心理描写が多くなる。自身の様々な迷いや心の在り様を素直に受け止め、そのまますぅっとこの世を去る描き方が印象的。
作者もあとがきで述べているように、本作品はあくまで小説、創作であるが、一人の念仏者の人間臭い生きざまを、エンターテイメント性も含めて疑似体験できる読み応えのある作品。
その後の宗派の発展が、このような人間臭さを是とするものであるのか、興味がある。
三部作通じて、とても面白かった!