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事件構造をひっくり返す手法を楽しめる短編集
表題作が一番面白い。ある病院の医師が殺される話でその医師に恨みをもつ犯人の視点と事件を操作する警察の視点の二つで描かれている。そしてそれを利用した騙しを一つ仕込んだ上でもう一つ事件動機に騙しを仕込んでいる。短編でここまでやるか!?
逆に「ベイ・シティに死す」が他より一段落ちる。ヤクザとその女、舎弟が絡む話だが登場人物の行動に疑問を抱く。事件の構造が面白いのだがそれを作るために登場人物の動かし方が強引だと思われるところがある。任侠に携わる人の考えなんて理解できないだろうといえばそれまでなんだが。
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連城三紀彦、初なんですよね。
ほんまは戻り川心中を読みたかったんすけど売ってなかったんで、本屋でゴリ推しされてたこれを買いまして読みまして。
おもしろいです。確かにおもしろかったけど、今じゃなかった。ちょっとタイミングが違ったので時間をあけてもう一度読むと思います。
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縁あって二十年来、宝島社の『このミステリーがすごい!』のアンケートに投票させて頂いている。2014年版(即ち2013年の12月発行)の『このミス』で、復刊希望!幻の名作ベストテンの第一位に輝い
たのが本書。
実のところ、『このミス』に投票しながら、ぼくの好みと『このミス』のアンケート集計結果が年々乖離するようになり、いささか居心地が悪くなっている。ぼくが冒険小説やハードボイルドの畑にあるにも関わらず、アンケートの対象となる作品は広義のミステリーで構わないという主旨に多分に甘えさせてもらっていることから、純粋にミステリ・ファンとしての投票者たちとは大きく読むジャンルが異なるという結果
にならざるを得ないのがその結果として表れてしまっているのだ。
ぼくの場合、どうしても謎解き中心のミステリより、選ばれる題材や舞台としての鋭さの方に視点がゆきがちになる。一方、『このミス』上位に食い込むのはどうしてもミステリにこだわった作品が多くなる。ぼくの苦手とする本格推理が好まれ、トリックが斬新であればあるほど上位に行く傾向はなぜか年々高まっているように思う。
もう四半世紀前のことになるが、Niftyで冒険小説フォーラムから推理小説ファンは相容れないので独立しましょうという動きがあり、推理小説フォーラムが分岐してミステリファンはそちらに流出していった。ぼくは相変わらず欧米のハードボイルドや日本冒険小説協会が取り上げる和製作家たちにこだわりを見せていたが、当時でさえ、もう本格推理小説のアイディアはすべて出尽くして枯渇しているので、これからはトリックは主流になるはずがない、と主張する人たちもいたのを覚えている。
しかし実際には推理小説のアイディアは一向に枯渇の様子を見せず、常に新しいひねりを加えたり、謎解きファンを唸らせたりし続けているのである。そしてそういった作品が上位に食い込む傾向は減るどころか逆に追い風に煽られ、ますます増えている様相すら呈しているのである。
2015年版で一位に選ばれた米澤穂信の『満願』にせよ、復刊を望まれた1980年代の短編集である本書にせよ、同じく超絶技巧とまで呼ばれたダブル・ツイスト、トリプル・ツイストとひねりにひねった仕掛けに満ちた短編集である。これでは、ぼくの投票とはニアミスすらしないのは当たり前である。
さて本書。連城三紀彦という作家は、一時期親交を温めさせて頂いていた強面の某文芸評論家の口からよく聞いていたのに一作も勧められることのない作家であった。一方、『恋文』『もどり川』(どちらも神代辰巳監督、萩原健一・松田優作それぞれ主演と、当代の主役を配して極度に印象的な作品として銀幕に映えた名作映画の原作作家であったこともあり、読んでいないのにとても意識してきた作家であった。ただその二作を映画で見た限り、ミステリとは何の関わりもなさそうな恋愛小説の物語であったし、某文芸評論家が全然ぼくに勧めようとしなかったのは、ミステリとは無関係という理由かなと勝手に思っていた。
ところが本書は、ガチガチのミステリではないか。どれも凝りに凝ったアイディア満��の秀作揃い。なる
ほど復刊ベスト1に選ばれるのもむべなるかな、である。
もちろんだからと言ってぼくがこれを楽しめたかというと、そうでもない。やはり、リーグが違う、とし
か言いようがないのだ。日本的にドロドロした心情描写が多いことや、情念や心理の細かな揺らぎだけで書かれる文体であるためにと、ても暗い陰湿な情景が多く、従って描かれる犯罪の後味もよくないこと。それらの生理的にいやな感覚を差っ引いても、なおかつトリック優先という人にはいいのだろう、おそらく。ぼくにはわからないけれども。
同じトリック優先であっても、西洋文学であれば、ジェフリー・ディーヴァーやらローレンス・ブロックやらのように、読んだ後味はとてもよい。そういった作者と読者の共感がとことん与えられないのはなぜであろう。同じことは『満願』でも感じられたのだが、これはきっと日本作家の風土ではないだろうか。怨念とか、陰湿な隠された情念といった小説風土から生まれたものではないだろうか。
からっと乾いて痛快と思えるような世界レベルの娯楽と言える作品を編み出す日本作家も現代小説では沢山いるだけに、ぼくにはこの手の趣味が少し不思議でならない。短編世界ではむしろ情念よりも人間の悲喜劇や闘争精神を、端的にからっと描く作家は沢山いるように思う。香納諒一、横山秀雄、矢作俊彦、稲見一良、高城高、等々。1980年代の作品群としては少し古臭く感じるのは、そんな粘性の強さが鼻に着くからではなかろうか。
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よかった編
・「奇妙な依頼」…傍観者だったはずの探偵が夫、妻、夫へと寝返る中で、気づくと背後に拳銃を突きつけられていたような怖さがあった。タイピンを落としたのは悪意か否か、アクセサリを女にやったのも報告されてたんじゃと勘繰りたくなるような、いやいや偶然が偶然を呼んだ出来事だったのか。
・「夜よ鼠たちのために」…リンクしないはずの医者を殺す理由と孤児院の同輩を殺す理由が"鼠"で重ねられている所が、男の狂気と孤独とを感じさせる。「虎の尾を踏むなかれ」。こういう人間の大事にしているものにうっかり手を出すと恐ろしい事になるなと思う。
・「ベイ・シティに死す」
裏切られた男の喪失の話であり倦んだ女の終わりの話であり。彼と彼女に何があったのか、語られる言葉の裏の語られない思いが井戸の底のように暗い。納得はできないけど悲しさというか虚しさが煙草の煙みたいに残る。
良くなかった編
・「ひらかれた闇」…こいつらの仲間関係って何だったんだろうと思う希薄さ。赤川次郎の「えっ、そうだったんですか?」的な読者置いてけぼり感。何でこれが傑作選に入っちゃったんだろう?
・「化石の鍵」
家族ドラマと推理トリックの二兎を追って失敗しちゃった感じ。鍵トリックなんてもう珍しくもないし、犯人の意図に他者の意図が被さって複雑になる話も読んだ事あるなあという構図。子どもを厄介払いしようとした親がきちんと化石の家庭を取り戻せるかどうかも甚だ疑問。
それなりの編
・「二つの顔」…映画とかにすれば(いい役者が狂気と狼狽の兄をすれば)いいモノになりそう。でも東野作品の加賀刑事にはあっという間に露見そうなレベル。昭和だからかもしれないが科学捜査舐めてるし。
・「過去からの声」
刑事が独白する事件の真相、という点では「満願」の「夜警」と似た感じがする。こっちの方がライトですが。これも映像化したら(いい役者が刑事の後ろめたさと覚悟の演技をすれば)傑作になりそうな。面白いのだけど心理戦としては回想ということもあってやや弱。
・「二重生活」
牧子の立ち位置がどんでん返しを呼ぶ執着の物語。芒のごとく揺れ立つだめんず修造の姿が目に浮かぶよう。でも、世間に苦しみを訴えてみせるより、絶対別れて別の人生を漕ぎだした方が牧子はよかった気がするんだけどな。
・「代役」…鏡の中の鏡みたいな。覗き込むうちどれが実像なのかクラクラする錯覚がある。上手いんだけど女たちが皆重複してるのって凝り過ぎじゃなかろうか。あと「顔が似ている」と「別人である」とは全く別なのでちょっと物証突いたら崩れそうなもろさが。
総評
初連城三紀彦。どっぷり昭和。後から映画好きで映像化もたくさんされてた作家だと知るも納得。でも一度にたくさん読むと疲れるので、ちょっと余裕のある時に他の本も読んでみようかと思う。
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どの短編もものすごい。
僕は、技巧的なのが好きなタイプではないけど、良かった。
どれも締まっている。
「ベイ・シティに死す」に妙に艶を感じた。
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短編でどんどん物語が変わって読める
時々昭和だからなって思うことはあるけど致し方なしか
こんなに物語があるとは思ってなかった
値段よりお得感あり
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初めてこの作家の作品を読むがどの作品もどんでん返しのようなまさかの展開があって素直に驚かされる。なかにはそんな設定無理があるやろ、と突っ込んでしまいそうだが良作揃いだと思う。
こういう作品を読むとどういう発想すれば書けるのだろうか、といつも思う。
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2015/2/15読了。
やっぱりすごいなあ、と感嘆。短篇はあまり好きではないし、しかもミステリーで短篇なんて読み応えなくてイヤ、と思っていたけれど、連城作品が好きなのであえて手にとった一冊。期待を裏切らない。
初めて出会った連城作品も短篇集で、ミステリーではなかったが、とにかく上手いと思ったものだった。上手いだなんて私が言うのもおこがましいが。
ちなみに、一昔前にたしかTBS系列で放映されていたドラマ『恋文〜私たちが愛した男』がとにかく良くて、今でも印象に残っているのだが、この原作となった短篇が連城作品だったことがきっかけで出会った作家。
しばらく連城作品を掘り下げて読んでいこうかと思案中。
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初出は1981年というから、かれこれ30年以上前に書かれた作品ばかり。一昨年亡くなった作者の短編集で、私がかつて読んだのは以前の文庫版であるから、やはり30年振りということになる。
一時期夢中になって読んだ作者への懐かしさと、読みながら遠い記憶がよみがえるおぼろ気な既読感と、特別な思いが交錯しながらの再読となった。
作品自体が時代を重ねてレトロな部分もあり、さらに私自身がそれなりに年齢と読書経験を重ねたため、今となっては新鮮な驚きとまでははいかないまでも、薄暗い情念の世界はやはりこの作者ならではの魅力であり、力量のある人だと思う。
現代のように同性愛がオープンでなく、ましてやBLなどという言葉もなかった時代に、ひっそりと妖しく美しく、しかも品のある作品として描ける作家は、赤江瀑と連城氏くらいだったのではないだろうか。トリッキーな要素も去ることながら、私が何よりも魅了されたのはその部分だったのだなと、改めて感じた。
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すべて最後に「やられた!」と思う短編集。
しかし、ボリュームがありすぎてやや食傷気味になってしまうのもいたしかたない。
通勤などで一本ずつ読むべし。
表題作はたぶん叙述ものだとはぴんと来るんだけれど、動機が凄い。
鼠とラブラブの出だしが、ちょっとグリーンマイル思い出したけどな!
奥さんとのなれ初めとかもきゅんきゅんくる書き方していてやはりそのあたり連城三紀彦いいなぁと思う。
最後に収録されている教師の話も動機がなかなかすごかったけど、「そっちかよ!」とつっこみをいれたくなった。最後主人公が皆に号令をかけるところが、青春物ぽい感じがする。
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残念ながら、私が苦手なほうの連城三紀彦であった。前半はいいとして、後半の作品が特に。
30年以上前の作品なので古さは仕方ないのであるが、まず名前やあだ名がひどく古くさく、男女の関係も、若さの捉え方も、情念も、古さばかりが目立つ。石原裕次郎や浅丘ルリ子あたりが出て来そうなドラマのようで、そういうのが好きな向きにはいいかと思うけれど。
中年のオジさんが通勤で読むような感じ。
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連城三紀彦の復刻短編集。
“絶対に読み逃してはならない”とか“最高傑作”とか、少し広告に騙された感じ。
確かに、著者らしさがある雰囲気とバリエーションは楽しめる。ただし、個人的には良くも悪くも、といった感じ。
連城作品は、のめり込める作品とそうでないものとの差が激しい。今回は、期待しすぎた為に後者となってしまった。
情景描写の耽美さと、心情描写の生々しさが好きなのだが、特に情景のほうはイマイチだった。
読み逃し厳禁作品は、やはり『恋文』や花葬シリーズだと思う。
2
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人間のダメさと切なさと哀しさに溢れたミステリー。緩く流れる時間と、薄暗い灯りと、見事な描写で、読めば読むほどいいようのない虚しさが募るような作品。
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特に表題作の「夜よ〜」は短編にしてしまうのが勿体無い。長編としても傑作に出来ただろうに。そう意味ではとても贅沢な一冊。
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時代なのかな…?
携帯もないし、当然ボイスレコーダーも登場しないが
でも、何故かしっくりくる推理小説。