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紙の本
文化大革命、林彪失脚の同時代考察が秀逸
2014/11/27 20:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:愚犬転助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の現代中国論、それも1960年代から1980年代の中国論の寄せ集めだが、いまなお古びた感じはしない。むしろ、いまもって刺激的だ。当時、「中国は巨大すぎて、日本人には理解できない」などと逃げ腰のマスコミ論調が多かったなか、明快に中国に斬り込んでいる。著者のさめた見解にようやく日本の一部のマスコミが追いつきつつあるといったところで、著者の世界観、中国観には驚嘆の一言だ。まったく媚びないところが、畏敬に値する。
とくに秀逸だったのは、文化大革命の混乱、林彪墜死事件、とう小平の台頭のあたりを考察したくだりだ。当時、中国で起きた事実をもとに、同時代にあって著者は大胆に推理を試みている。それが間違っているかどうかは、いまだわからない。なにしろ、林彪事件をはじめ文革中の事件は、いまだ秘密のヴェールに覆われているからだ。そんななか、手さぐりながら、中国権力闘争の本質を射抜こうとしているのだ。
とりわけ感嘆したのは、毛沢東の権力さえ失墜寸前であったことだ。毛沢東は軍を掌握できず、林彪に軍掌握を託したが、その林彪も軍を掌握しきれない。そこに軍の実力者とパイプを持った周恩来が、軍をかろうじてつなぎとめることで逆襲、林彪は追い込まれる。権力闘争のなか、一部では、毛沢東批判がはじまり、毛沢東の地位はダモクレスの剣下にあったとは。権力闘争にあって、毛沢東も例外的な超越者ではなかったのだ。
もう一つ、中国の権力闘争は、大国とのパイプが絡んでいるとの話も秀逸。林彪を支えたのは、ソ連のベリヤ、ほう徳懐と太いパイプを持っていたのが、同じくソ連のジューコフ。ベリヤ、ジューコフの失脚が、林彪、ほう徳懐の失脚につながっているという考察は、炯眼としか言いようがない。悪名高い田中角栄訪中も、周恩来、毛沢東の生き残りに重要であった。いかに今世紀、中国が大国化しても、なお大国とのパイプが内部の権力闘争を左右するのだと思う。
また、架空のシンガポール人になりすまし、日本と中国を語るところは、おもしろい。大国を憎むのは小国の権利であり、大国はそんな小国の憎悪にじたばたする必要はないとの見方は、じつに外交の本質をついている。いまなおそれができないのが、日本の問題なのだが。
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