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人はそれぞれに痛みを抱えている。心に身体に…時代や国境も越える兄妹の愛、それを描くのみにとどまらず、その兄妹を取り巻く様々な視点から立体的で奥行き深い物語が紡がれていく。
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兄妹の別離で始まった物語の終末は、考えてみれば当たり前とも思えるが、兄妹の再会であった。
だがそれは、妹と同じ名を持つ娘を(実質的に)介してのものだ。
この娘を配したことに作者のさまざまな計算が見て取れるのだが、確かにそれは効果を上げていて、この作品に深い余韻を与えている。
北上次郎の解説で紹介されている「君のためなら千回でも」(「カイト・ランナー」)、「千の輝く太陽」も是非読みたいと思う。
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冒頭に語られたお伽噺の中で、巨人から子供との別れの記憶を無くす水薬を手渡された主人公は悲しみに沈むのを避けられた。翻って、現実で妹と生き別れた兄は父から聞いたそのお伽噺にあった水薬を飲みたいと思いながらももちろん叶えられることはなく、哀しみは六十年近くの歳月に渡り彼を苛み続けた。
主要な登場人物が最後の場面で言うように、忘れることが贅沢であることもあり得るのかと痛切に感じ入り、また考えさせられた。
章ごとに主人公が異なり、本筋の一族の話とどこで関わるのか分かりかねる部分もある。また、関わっているのはわかるけれど、本筋にどのような影響を及ぼすのかがわからない部分もあり。
ただ、読み終えた後に不思議とバラバラの話を読んだという思いはなく、各々の話がステンドグラスのように一片一片独立しながらも、全体では一枚の綺麗で哀しい絵を描いていたのだといった感覚が徐々に湧いてくる。
そんな中、少年少女時代のマルコスとタリアの話は特にお気に入り。子供だからこその葛藤と柔軟さがもどかしく、かつ懐かしく思われ、痛々しい話しながら読後感は暖かな爽やかさがある。
それにしても、兄が生き別れた妹を探す物語、というキャッチコピーであるのに、その兄がメインの章が冒頭にしかないというのに驚いた。構成の妙というか、構成の勝利というか。読み終わってみると、兄がメインの章は読むのがつら過ぎて、冒頭以外には却ってなくてよかった気もする。
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どういう終わり方をするのか、上巻でつかまれただけに、期待と緊張を持って読み進めたが、納得のラストだった。