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明治初期から太平洋戦争までの科学の変遷と科学と社会の関わりをコンパクトにまとめている。
個人的に面白かったのは2つ。5章の明治期の科学者が西洋文明といかに対峙したかと、後半の世界大戦中の世界と日本の科学者と社会との関係性である。
長岡半太郎といった科学者だけでなく、夏目漱石など非科学者の知識人も取り上げている。長岡半太郎も夏目漱石も明治期特有の上昇志向から、西洋人を驚かす世界的な偉業を成し遂げようと決心していたが、2人の歩む道は違った。長岡半太郎は何を学べば世界的な業績を成し遂げられるか1年間歴史を学び、物理学が「コスモポリタン的学問」であり、東洋人でも世界に挑戦できると考えて物理学者になった。一方で、漱石は外国語で文学を書き「西洋人を驚かせやう」と思い英文科に進学したが、英文学が地域性を排除できない学問だと悟り、挫折した。
長岡や南方熊楠が西洋の学問レベルの高さは認めていたが、闘争心を隠すことがなく、田中舘愛橘との手紙で西欧文明が底を浅いと息巻いているのが、いわゆる和魂洋才というものなのだろう。
後半は第1次世界大戦・第2次世界大戦中の科学と社会との関係性。これは後で書こう