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今まで出てきた登場人物のつながりが徐々に明らかになっていく。偽札の真相も明らかに。ただ、上巻も含めて所々読み返さないと、こんがらがってしまう。でも、上下巻一気に読ませる筆力はさすがだ。同じ主人公が同著者の別の作品にも登場しているとのことなので、そちらも読んでみたくなった。
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まぁ「カラスの親指」よりちょっと面白い程度かなと思った。しかしと言うことは比較論としてあの道尾君の大ヒットを超えているのでありやはり佐藤正午は只者ではないと言う結論に達する。
それはあの江國さんや角田さんが絶賛していることからも間違いはない。
真面目に評価させてもらえばこの人は正統派の純愛路線もハードボイルドも容易く書ける作家である、が敢えて小娘に日銭を無心し居候先のスナックのママにどやされるうだつの上がらない男を描き続けることを譲らない文壇でも孤高の存在。
だから一度ファンとなると心を掴んで離さない。そう私もその一人と自負している
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下巻に入って、津田伸一の成り行き任せのいい加減さよりも情けなさの方が目立ってきます。地方都市での偽札騒動から逃れて東京は中野ふれあいロードでバーテンをしながら巻き込まれた事件についての小説を書いて暮らす津田伸一に、更に、様々な出来事がふってわきます。上巻同様に、津田の一人称形式と津田の創作による小説形式が混在しており、しかも一人称形式の箇所では、小説形式の箇所の推敲めいた表現が多々あり、なんともいえないねじれた雰囲気が醸し出されています。津田の解釈による事件の大まかな全容が示されますが、それに対して「ほえ」と返事しそうになりました。
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おもしろかった。
でも、言うほどの驚きはあまり感じず。
あのお金はここを回ってあそこに行ってここに来たのかぁ~そっかぁ~・・・という感想。
あと、イライラした。
主人公に、妊娠した妻に、晴山くんに、秀吉に。
とにかくイライラした。
おもしろかった。
おもしろくなかったわけでは全くない。
おもしろかった。
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読みにくくて、途中で何度か挫折しそうになったけど、レビュー評価が高いので、最後まで、がんばって読みとおした・・・が、
う~~~ん、最後で「うわ~!そうきたか!」などと言うことはなく、「それだけですか・・・」って感じです。
ワタシの読み込みが足りないと言われれば、それまでですが、すべてがスッキリとしないところがモヤモヤしたまま。
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ひねくれている。まだるっこしくてめんどくさい。そのくせ川の流れに押し流されるようにページを繰る手が止まらず、軽妙な会話に乗せられてしまう。行き着く先がどこなのか、そもそもこの小説は何なのか、まるでわからないままいきなり目隠しされて拉致された気分です。
とにもかくにも人を喰ったような小説。過去何作かの佐藤さんの本に、さらに輪をかけて人を喰っています。はっきりいって面白いです。至福の読書タイムです。
ただし、読み終わった今、飛来するのは必ずしも好ましい気分だけではありません。
とにかく伏線だらけ、というかこの本自体が何かの伏線なのではないかと思うくらいに至るところがつながりまくりです。それを目くらましする軽妙な文章も一流のテクニックです。ただ、ただ、ただし。ただし、です。「本の筋書きだけ追って得意技の一気読みをして、泣きましたとか言いたがる」読者ではないつもりの僕でさえも、そもそもこのお話の「肝」はなんなの?って思ってしまいました。
すでに別次元へ行ってしまっているといっていい佐藤さんの小説テクニックは確かにこれでもかと言わんばかりに堪能できます。それ自体がこの本のテーマなのだとも思います。でも、その自己主張以上に読者に訴えてくる物語性をこの本は持っていないような気がします。
「男の愚かさ」だったり、「女の逞しさ」だったり、という読後に残るものを感じ取ることができませんでした。
それだけが、ただただ残念です。
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+++
「このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。おれたちというのは、床屋のまえだとおれ、それにもちろん津田さんの三人組のことだ。だけど厳密にやばいのはあんただよ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ」いきなり退職金を手渡された津田伸一にいよいよ決断の機会が訪れる―忽然と姿を消した家族、郵便局員の失踪、裏社会の蠢き、疑惑つきの大金…たった一日の交錯が多くのひとの人生を思わぬ方向へと導いてゆく。
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現実の津田伸一の身に起こったことと、彼が書いている小説が、行きつ戻りつして、一体いま自分はどこにいるのだろうかとときどき迷う。鳩の意味も判り、でも撃退法が見つかったとは思えないし、撃退できたとも思えない。それは於くとしても、もつれたり絡まったりしながら、ぐるぐるめぐる二月二十八日だったということだけは間違いない事実だろう。翻弄されてあちこち連れまわされたような面白さの一冊である。
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途中で後味悪い話だとやだな~という思いが頭をよぎりましたが、大丈夫(^^)
途中からもう本を閉じたくない勢いで読み進みました。
石井桃子訳のピーターパンのお言葉が深くていい味。
コクテンキョウリ、辞書引いて覚えました。
小説の中と現実の時間軸が交わるところの不思議な感覚は「夢と現実のハイブリッド」(ってCMがありましたが)いろんなことがうまく収まり、いい読後感で大満足です。
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佐藤正午「鳩の撃退法」http://www.shogakukan.co.jp/books/09386389 読んだ。おーもしろかった。この人特有のくどくどした文章で、無数の断片的なエピソードやどこに進んでいるのか判らない場面が何度かバージョン違いで提示されるのが、終盤で一気に、人間関係も出来事も結びつく(つづく
終始だらだらしているのに不思議と読める。終盤で断片が結合しつつある時もデジャブのような場面があり、主人公の創作と実体験とが渾然となって話は進む、いや戻る。戻るのがポイント。ところで編集者が力説する売れる小説のテンプレが全く面白くない。こうやって駄作が作られていくのか。。(おわり
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お金もなく困ったときには側にいる女性を頼り、デリへルの運転手やらバーテンダーやらをやりながら、流されるままに生きている元作家が、主人公。
身近に起きた大小の事件を元に、推理や妄想を交えながら小説を書いている、という設定で話は進む。
何しろ、だらりんとした主人公の書く作品として話が進むため、時間も出来事もあっちこっちに飛んで、しかもこれでもかと言うくらい寄り道だらけの文章。もちろん、それは作者の狙いであり計算なのだろうけれど、確かに最後はすべてをうまくまとめあげてはいるけれど、そこに至るまでの遠回りが、私にはつらかった。
主人公も、ダメ男なりの魅力があればいいのだが…。なので、すべてがつながったことのおもしろさを感じるよりも、どうにもうんざり感のほうが勝ってしまい、読後はやっと終わったという感じ。
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語りのうまさが際立ったミステリー。主人公が作家であり、彼が経験を一部忠実に、一部脚色しながら紡いでいくメタな構造が、一部劇的に功を奏しているところもあるが、一部ではかなりの冗長さを醸しているとこも多々。「違うところであっていれば、こんなことにはならなかった」という小説の帯のコピー。であれば、作家はあらかじめ別の場所で二人をあわせるべきではないのか。このスタンスの忠実さが、作家の目の前に起こる事実にも反映されていく。とすれば、何が事実で、何が小説なのか。思い返せばとても深い、気がするが、時間軸が飛びに飛びまくるので、一気に読まないと全貌が見渡せない。他のものも読んでみたい。
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作中の現実を元に作中の作家が小説を書くのですが、その時の加工具合が面白い。
でも、メタな話って、これもそうですが読みづらいですねえ。
タイトルはうまいなあ。
面白いというよりすごい話。でも、読むのしんどいよ。
これ、書くのがしんどそう。作者志望の人の感想が聞きたい。
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玄人筋からは絶賛の嵐である。
「小説家が小説を書きながら謎を解く小説」という試みは小説技巧的に極めて難しいらしい。
プロット自体は単純だ。
ただ、時点が行ったり来たりするし、(小説内の)事実と主人公である小説家の創作が錯綜するので、全体像は最後までわからない。
飽きさせない小説であることは確かだ。
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ぐるぐる回って,また元のところへ戻る.そしてストーリーは現実と虚構が入り混じり,あったかもしれない現実が,事実を侵食していく.なんとも不思議な味わいの小説で,主人公津田のいい加減さにほとほと嫌気がさしながらも,小説の構造が面白かった.
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最後まで気を抜けずに楽しみながら読了。
主人公、津田という直木賞作家(架空)が虚構と現実の狭間を法螺を吹きながら人を煙にまきながら行きつ戻りつする話。登場人物(とはいってもこの小説の中か、それとも津田氏の書いている小説の中の人物か紛らわしいけれど)の会話一つとってもついつい引き込まれてしまう味のあるもので、当世風でもあったりして笑える。
お金もこれだけ大きくなると現実味も減るかと思えば・・・
やっぱり、津田氏と一緒になって溜息しか出てこない(笑)
引用してあるピーターパン同様、読者を本の世界に引きずり込む力は大きい。本の持つ力はまだまだ大丈夫だと確信できた。