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この本を読んで本当によかった。海外に住むものとして、こういう仕事をしてくれる人がいるというのは、とても心強く、全く頭が下がる思いだ。
海外で亡くなった日本人の遺体を祖国で迎え、なるべく生前の姿にして家族の元に届ける。そして日本で亡くなった外国人の遺体を祖国に送り出すという仕事が存在する。映画「おくりびと」や、その元となった「納棺夫日記」で日本でもエンバーミングや葬儀屋のことがようやく知られてきた。
この本は国際霊柩送還士という、耳慣れない職業の人たちの働きぶりや仕事に向かう心構えを描いている。海外から、毎日のようにいろいろな要因で亡くなった日本人の遺体が送られてくるという。病死だけでなく、事故、事件など、遺体の状態も様々らしい。それを自分の家族かのように丁寧に扱い、修復をし、遺族の悲しみに添うという。遺族はその遺体と向き合うことで、心の整理がつきやすくなるそうだ。エアハースという会社の職員達のプロ意識に感動する。
作者は作家としてのキャリアが浅いらしく、必ずしも文章がこなれていないが、そこがまたダイレクトに響いていい。ウェットな世界をなるべく客観的に描こうとする姿勢が見える。自分自身の家族とのあり方、そして身近な人の死にどう向き合うか。誰にとっても遠いが、誰もが経験すること。海外に縁がない人にも、日本人として是非お勧めしたい1冊である。
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読みたかった本が文庫本になったのを
これまたずっと積読のまま。いかんなぁ。
読んでよかった。こういう人がいてくれてよかった。
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遺体を整える仕事に密着したノンフィクション。
「国際霊柩送還士」は国境を跨ぐ遺体の防腐処理(エンバーミング)を専門とする職業である。日本人が外国で死んだ場合や、外国人が日本で死亡した際に、彼らが遺体に防腐処理を行い遺族の元へと送り出している。
国境が陸続きで異国人の移動が頻繁な欧州では、エンバーマーは一般に認知されている職業であるらしいが、海で囲まれた日本では珍しい仕事と言わざるを得ない。訪日観光客が増加し、今まで以上の外国人が日本を訪れている。この観点で、彼らの需要は高まっていると言えよう。
遺体を扱う現場であるため、著者が対面した現場の様子は筆述する以上に、過酷で生々しいものだと察する。
こうした分野にスポットライトが当たり、エンバーマーが存在しているからこそ、遺族が故人と生前の姿で再会できていることを忘れてはならないと感じた。
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2012年の開高健ノンフィクション賞受賞作。2012年11月に単行本で発刊され、2014年11月に文庫化された。
本作品で何より印象的な場面は、海外から運ばれてきた遺体を、それがどんなに傷んでいようとも、故人の生前そのままの姿・表情にするために、何時間もかけて、汗を流しながら一心不乱に処置を施し、最後に「きれいになったよ。家族のもとに帰ろうね。」と声を掛けるエアハース社のメンバーの姿である。
それが、著者が「国際霊柩送還の仕事とは、遺族がきちんと亡くなった人に向き合って存分に泣くことができるように、最後にたった一度の『さよなら』を言うための機会を用意することなのだ」という、彼らの使命・仕事の全てを象徴しているように思う。
作品の前半に、社長の利惠が有望と見込んだ青年を含め何人もの若者が辞めていったことが書かれているが、この仕事は人並の精神力では到底続けていけるとは思えない。メンバーの強さ、使命感に感服する。
現代日本は、死が日常からあまりにも離れすぎていて、それが生の大切さを感じ、考える機会を奪っていると言われるが、死と生について改めて考えさせてくれる作品である。
(2014年12月了)
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こんな仕事があるんですね。日本人が海外で亡くなったら、外国の方が日本で亡くなったら、その後どうなるのでしょうか?それを担う会社があるんですね。是非誰もが一度は読んでおいたほうがいい本だと思いました。
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なかなか表には出てこないが、大事な仕事。
お世話にならないことを祈りたいが、非常に尊い仕事だと思う。
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第10回開高健ノンフィクション賞受賞作品!
らしい!
正直、これには興味はない。
ノンフィクションと聞けば、大概の人は事実のみが書かれ客観性や第三者の意図など無いものだと思うだろう。
でもこれは「佐々涼子」の作品である。
国際霊柩送還士という事実を通した作品だと感じた。
なんだろう、こういうノンフィクションを読んだのは久々な感じ
あとがきに「人はときどき、死について語りたいのだと思う」という一文がある。自分もたまに「死」を考えたくなりこういう作品を手にするのだろうと思った。
ただ、こうした社会に埋没してしまうテーマは時折触れるのは人生にはいいことなのでみなさんも一読してみては!
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できることなら一生お世話になることのないまま終わりたい、そんな場面を職業とする人たちのドキュメント。こういった日常の生活を送る上では見えないことを職業としている人の心強さと力強さを感じられた。
安易な言葉で感想は述べられない。
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タンザニア、コロナ フューネラル社やロシア、そしてエアハース インターナショナル社にお世話になっているかもしれない。通常とは全く違うお客様との接し方。
Angej Freight
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外国で亡くなった人はどうやって祖国に戻ってくるのだろうか?
皆さんはそんな疑問を持ったことがあるだろうか。
この本では、聴きなれない職業である「国際霊柩送還士」という仕事で活躍している、
エアハース・インターナショナル(株)という会社の社員が日々闘い続けている現場を取材した
感動のドキュメントである。
始めに国際霊柩送還士という仕事について書いてみる。
外国で旅行とかビジネスで不慮の事故で亡くなった人は、現地の警察等の身元確認後、
本国に送り返される。
その時に、遺体が腐敗しない状態に処置するのは、「エンバーミング」。
そのあと、書類のやり取り、輸送業者との段取りをする一連の仕事が国際霊柩送還士という仕事。
不思議な仕事であるが、遺族とのお別れの時に、生きていた本人で有ることが
分かって、さらに表情も穏やかになった状態まで修復する技術は読んでいて圧巻。
なぜ、そこまでやるんだろうとエアハースの人たちも思う。
その現場を紹介しよう。
まず、登場するのは、社長の木村理惠。
理惠は東京港区の板金工の娘として生まれた。
父は典型的な職人肌で、親方タイプ。
理惠はそんな父に影響されて、負けん気の強いリーダータイプ。
葬儀業界に入った理惠は全体を把握する能力と気配りは上司にも一目置かれる存在だった。
葬儀会社の現場を仕切ることをすぐ覚えて、エアハースの社長について。
エアハースに入ってから、みんなに心配される位、動き回って遺族のために心遣いをすることが
倒れてしまうのではないかと心配されるほどの行動力。
一方、エアハース設立に関わるもう一人の人物、会長の山科昌美。
理惠より以前から葬儀業界にいた山科は理論派タイプ。
まだ、「国際霊柩送還士」という仕事をどこの会社も専業で行っていないときに
こんなことがあった。
フランスの柔道家が日本で亡くなった。
なんとか遺体の形で本国に帰したい。山科に問合せがあったが、
その手配をするために、色々調べたら専門で行っている業者がいない。
そこで自分で全て書類等の手配を行った結果、無事フランスに送り届けた。
そこで、初めて「国際霊柩送還士」という仕事の重要性を感じた。
と同時に自分がこれを専業としようと決意する。
他にも理惠も息子利幸の二代目の頑張りだったり、他の社員の活躍が
本書には見事に表現されている。
本書で感じる共通点は、遺族は確かに亡くなったことは悲しいが
遠い国でどうなっているのか不安なまま、まったく本人と分からない状態ではなく、
生きていた時の表情で帰ってきたときに発する言葉、
「本当にありがとう、〇〇ちゃんが帰ってきたことが信じられない」という
言葉の数々を発するのが心に浸みてくる。
最後に本書から、心の中に刻まれた言葉を引用して終わりにしたい。
息子の利幸が仕事での心境をこう、語っている。
「ご遺体に対面した時はまるで合戦場に行った時のような感じで���。
アドレナリンがぶわーっと全身を駆け巡って『絶対になんとかする』という気持ちになる。
臨戦態勢っていうのかなあ。その時、頭は真っ白ですね。言葉という言葉は吹き飛んで、
真っ白ろになる。」
会長の山科の言葉。
「親を失うと過去を失う。
配偶者を失うと現在を失う。
子を失うと未来を失う。」
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2012年第10回開高健ノンフィクション受賞作品、友だちにすすめられて手にしました。
「エアハース・インターナショナル」、海外で亡くなった日本人の遺体や遺骨を日本に搬送、日本で亡くなった外国人の遺体や遺骨を祖国に送り届けることを専門にしている会社。そこで働くスタッフを丁寧に追いながら、愛する人を亡くした家族のことや「死」について考える素材を読み手に与えてくれる一冊です。
この本を読むまで、こんな仕事があることは全く知りませんでした。「エンバーミング」という技術にも、大変驚きでした。そして、手を抜かない仕事ぶりと死に向き合い続ける内容は、本当にすごいと思いました。
積み上げられた経験から発せられる彼らの言葉は、とても重いもの。込み上げてくるものを抑えながら読み通すのは正直しんどかったですが、でも向き合わないといけないとも強く感じました。
死と生について改めて考えさせられた感じです。
みなさん、ぜひお読み下さい。
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欲得ではなく、こういう人々がいて、世の中は成り立っていくのか。確かに、文章はつたない部分があるようにも感じたが、それ以上の作者のねついをかんじる。
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海外から日本へ、また日本から海外へ遺体を搬送する国際霊柩送還士の話。たいへん興味深く読んだ。ただし、ちょっと感傷的な表現が多いと感じました。
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『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』に続き読んだ著者の作品。在外邦人の遺体を日本へ送り返す、在邦外国人の遺体を本国へ送り戻すという、国際化した現代が必要とする職業である国際霊柩送還士を初めて知り、時折涙が溢れそうになりながら読了。24時間体制で到着する遺体を受け入れ、想像を絶するような状態の遺体を処置する彼らには頭の下がる思いだ。自分自身は葬式など不要と考えていたが、死者との離別に区切りをつける意味での葬儀は「泣きぬき、悲しみぬく」ことで再び生きるために必要なのだと思えるようになった。
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亡くなった後も一個人として、一人の人として最後まで思いやりと信念を持ってご遺体に向き合ってくれる人々の話。
自分あるいは家族が海外で万が一不幸に見舞われた折りには、この会社の方々にお世話になりたいと思えた‼