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【図書館本】うすら寒くなることはあったけど、全体的に怖さ控えめで、各話終わりには少しほっこりするような読後だった。
特にお祓いをするわけでもなく。簡単なリフォームで交わっていた人と人でないものの世界が断たれる(意識から外れる)。営繕屋尾端さんの、人と人でないものに対する思いが暖かいと感じたのかも。
連載自体は続いているようなので、続きが楽しみ。
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家にまつわる怪異を営繕屋が解決していくホラー短編6編。ホラーの苦手な俺にとっては「映像じゃなくてよかった」と思わざるを得ない程度には恐かったです。ただ、恐いだけではなくって前向きな結末には救われました。
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2012年、小野不由美さんの久々の新刊が一挙に2作刊行されたのは記憶に新しい。いずれも実録怪談的な怪談作品だったが、本作も怪談の短編集である。
全6編とも舞台は古い家。古い家には、ああ何かいる!何かいるうっ! お祓いでも呼ぶのかと思えば、解決するのは営繕屋の尾端。営繕屋とは、ちょっとした家屋の修繕を手がける商売。まったくの専門外のはずだが…。
「奥庭より」。叔母から受け継いだ家には、箪笥で塞がれた開かずの部屋が…。受け継ぐ前に怪しいと思わなかったのかいっ! 確かに閉めたのに。閉めたのにいぃぃぃぃ! 1編目から正統的な怪談っぽく、語り口に引き込まれる。
「屋根裏に」。タイトル通りです。母が訴える。屋根裏に。屋根裏にぃぃぃぃ! やがて娘にも…。本作の一押し「雨の鈴」。雨の日に現れる、喪服姿の女性。その正体は…。徐々に自宅に迫るが、引っ越す余裕はない。やり過ごす手段とは?
「異形のひと」。父の郷里に突然帰ることになった一家。田舎に馴染めない長女にだけ、それは見えた。悲しい背景に胸が詰まる。「潮満ちの井戸」。井戸でホラーといえばあの作品が思い浮かぶが、関係ありません。合理的な解と非合理な怪の融合はうまい。
最後にやや長い「檻の外」。子連れで郷里に戻ったものの、両親との折り合いが悪く、親戚に借りた古い家に住む女性。ガレージで相次ぐ怪現象の正体とは…。頼れるのはやんちゃしていた頃の仲間。ヤンキーは義理堅い。それにしても酷い両親だな…。
全6編とも、最終的に尾端が古い家に修繕を施す。彼に霊感はなさそうだが、その家の障りを取り除くためにどうすべきかはわかるらしい。怪異は止んだので、住人としてはまあいいかという感じだが、真相はわからず、読者はある意味置いてけぼりである。
結論を言うと、本作は大変面白い。謎が謎のままで終わる怪談の宿命を、いかにマイナスだと感じさせないか。このジャンルはかように難しく、奥が深い。小野不由美さんが優れた怪談の書き手であることは間違いない。
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家に纏わる怪異を、従来とは違った方法で躱していく物語。六篇を通して登場する「営繕かるかや」の尾端も、他の登場人物たちも、その風貌に関しての記述が殆どない。逆に丁寧に描写される怪異が、くっきりと際立つ。
怪異に立ち向かわず、祓わず鎮めもしない。対立しない対し方が嬉しい。淡々と描いて、しっかり怖く、物語として見事に完成している。
中でも「檻の外」が好き。
小泉八雲の「破約」を彷彿とさせられる。が、黒(喪服)と白(死装束)の対比のように、目指すところは対極にある。
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短編集です。ホラーです。
相も変わらずひたひたと異常が日常を侵食していく様が怖いです。
営繕屋という職業は耳慣れないものでしたが、お家の修理屋さんということなのですね。
なので話は全て様々な家が舞台のオムニバス形式になっています。
家とは即ち生活の場です。拠り所です。それが怪異という異物によって歪むということは、安らぎを得られる場所がないということです。逃げ場がない、とも言います。それはとても恐ろしいことです。
しかし怪異が起こるには理由があり、正しい対処を行えばそれは収まる。
どの話もその理由と対処が明確にされており、作中の恐怖は話の最後で必ず解消される。だからこそ途中の恐怖も安心して怖がって読むことができるのです。
恐怖が最後の「ああ、よかった」に変わる瞬間を求めて、私はホラーを読むのかもしれません。
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大好きな小野女史の本。
また新しい作品に逢えて嬉しいです。
障りのある建物を『営繕かるかや』に手直ししてもらうことで悩みを解決するのですが、主体はあくまでも家の住人であり、困っている人達になっています。
障りのあるものを力でねじ伏せるように祓う訳ではなく、支障なく共存できるようにする といったスタンスが小野さんらしく、また 障りも身近なものとして捉えている感じがとても良かったです。
ただ単に怖いのではなく、切なさも詰まった作品だと思います。
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2014年12月30日読了。
ひとと、家とのつながりの深さを感じさせる物語が多くて、恐怖よりもじん、としたものを感じました。
素晴らしい。
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短編6編。
どれもゾゾーっとする話し。
なかでも『奥庭より』は古い家の感じと日当たりの悪い部分の雰囲気が出ている。これを実際に体験したらこの家には住めないわ。同居するんだもんね〜。
『幽』という怪談専門誌があるということを初めて知った。
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この家には障りがある―住居にまつわる怪異を、営繕屋・尾端が、鮮やかに修繕する。心ふるわす恐怖と感動の物語。
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家にまつわる怪異、障りとそれを解決する営繕屋の物語。短篇が六つ収録。
具体に何かが「出てくる」パターンよりも、正体がわからないし、何なのかもわからないパターンの方が、ゾクゾクする怖さがある。
怖い話書かせたら、この作者はピカイチ、本書の中では「雨の鈴」が、一番怖かった。
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大好きな小野不由美さんの新刊、ホラーということで、それ以上の先入観なく読んだ。だが、怪異に対して、干渉するというよりは、躱す、なだめすかすという雰囲気で、悪霊シリーズのファンとしては若干物足りなさを感じた。もちろん、様々な視点、立場での話があっていいと思うし、この話には、この話の良さがあるけど。そして、怪異に対する対応がリフォーム。正直、屋根からの足音が気になるなら、緩衝材を、という対応には、目を丸くしてしまった。でも、続きが出たらやっぱり買って読むと思う。
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B++
【読んだ理由】
小野不由美の新刊だから
【あらすじ】
短編集。訳あり物件のホラー。とその原因を推察して、直すかるかやの話
【感想】
かなり面白い。
化け物たちに悪意は無く、決まった現象を起こすだけというもの。それに恐怖するのは人間たちの勝手。わけがわからないということが怖いというメッセージがはっきりしてた。
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敢えて寒い冬の夜に怪談話。怖い話は苦手なのだが,小野不由美さんの新作とあっては読まない訳にはいかない。これは,古い家(建物)にまつわる怪奇現象を描いた短篇集。「残穢」と比べると,比較的ライトではあるが,ところどころで軽くゾワッと鳥肌が立つ。小野さんの文章は,古い家や町並みの描写にぴたりとハマる。そして,何気ない会話を含めた,人の気持ちの描写が細やかで,物語に自然に入り込んで行ってしまう。だから余計に怖く感じる。各作品で,問題の解決を担当する,「営繕かるかや」の尾端は,悪霊を退治したり,何か特殊能力を発揮するスーパーマンではない。ただ現象を適切に読み取って,自然に流すようにして鎮めるのである。大人の怪談,というのがぴったりという印象。個人的には,特に「雨の鈴」が,ミステリー・タッチで気に入った。雑誌「幽」で連載が継続中とのことで,続刊が期待できそう。楽しみである。
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短編集で、それぞれに城下町の趣を感じられ、怪談の恐ろしさだけではない良さがあった。まっすぐしか進めない女幽霊の話は怖かったなあ。
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家にあらわれたり、おとずれたりする怪異と向き合い繕っていくお話し。タイトルの営繕屋は、怪異が起きた時だけふらりと現れ、怪異が収まったと同時にいなくなる。その足取りの軽さと手際の良さに拒絶ではないスタンスと、装画の漆原友紀のせいで蟲師の、いやギンコのイメージが尾端にはまります。
「雨の鈴」が怖さ抜群。ただそうであるべく存在しているものであるからこそ、相容れない。その二つが重なり合ってしまう、逃れられないというのは怖いです。しかも、その瞬間を来ることを知覚してしまう、という。このパターンの怪異譚には安定しておびえてしまいますね。
怪異が発生した時のおそろしさと、解決した時のしんみりした気持ち。救いのあるしんみりではないけど、尾端の対処・態度が救いになることが多いです。
そこもギンコっぽいんだよなぁ。