紙の本
孤独という自由は安楽か、苦痛か。
2016/02/23 19:57
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『無縁社会』に代表されるように、「絆」が大事とかいう風潮はあるけど、孤独ってそんなにいけないことなの?それって「絆の肥満」じゃないの?って常識と言われるものに、田舎で悠々自適の生活を送る筆者の問いです。孤独に悩む人の肩の荷を少し降ろしたい、と述べます。
人は他人に合わなくても生活の基盤を築けています。群れから離れたら即生命の危険というわけでもない。そう考えると孤独に寂しさを感じるのは本能からくるものかもしれないし「寂しいよぉ」って感覚は個人差があるとも言えます。
「孤独に対しての閾値は人それぞれ」と私は思っているのですが、孤独の人が世帯に占める割合がこんなに増えているのに、孤独死をはじめとし、婚活もそうですが、なんか「孤独はいけないもんなんだよ」って空気が強いです。
孤独からくる思考は没頭できる思考でもあり、他者を必要としない幸せなんてのは、人に伝えるのってやっぱ難しいよね?と森さんは問いかけます。
かつては一人で過ごす時間ってのは贅沢で貴重なものでした。でも家事が楽になります。こうした贅沢は忘れ去られ、自由な時間が広がります。洗濯板で毎日洗濯したり薪を割るみたいな生活していたら、私は孤独を強く希求するでしょう。
とはいえ、森さんは極めて常識的な立場から「社会とは、大勢の人間の協調で成り立つものだ」というバランス感覚を失わない筆致に努めています。チームプレイも大切だけど、考える時には一人静かに考えた方がいいんじゃない?他人と一緒になる本能よりも、私たちの歴史って、思考重視で非自然な積み重ねでここまで来て、こういう生活になっています。
介護をはじめ、案外、対人サービスはお金で解決することが増えています。孤独じゃない方が幸せなんだよっていう「人の幸せ」ってやつは、婚活した人の離婚率の高さとかメッキがはがれかけています。
自由な生活を求めたライフスタイルの副産物は孤独であり、それはトレードオフなのかもしれない。人は多少なりとも他人に迷惑をかけながら生きています。
森さんは、あとがきでこんな言葉を紡ぎ出します。「生きているだけで、誰もが少なからず他人に迷惑をかけている。だからこそ、他者から受ける多少の迷惑を我慢し、自分がかけた迷惑分は、なんらかのお返しをする必要がある」
友情や愛情もまずは「欲しい」と願い求めるものではなく、自分から提供しないと相手も提供してくれない。「感動をありがとう」とかネタ動画で心を満たされる私たちですが、感動はそもそも頂き物じゃなく、自分から感じるものだったっていう歴史があります。
ツイッターのようなSNSは確かに世界が広がったように思いますが、属人性が強く、自分にとって心地よい情報のマッサージを受けているとも解釈できます。
このレビューを読んでいるあなたは、どうでしょうか?本好きって孤独の世界に浸る時間を持っています。単にベストセラーだから買います的なことがなくて、ベストセラーは買わない集団が一定数いるので、多様性が担保された世界とも言えます。
孤独がいいとか、悪いとかじゃなくて、相手の言い分も聞いてみましょうよってスタンスが一番なのかもしれません。ここまで読んでも婚活や孤独死というワードにやっぱ不安を感じるわぁ、ってあなたにぜひ本書を。
電子書籍
大切な本
2017/01/10 12:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バリスタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
孤独というものを恐れていました。たまに苦しく孤独という文字から逃げたくなっていました。
森さんの考え方と表現はとても面白い。
こんな孤独の考え方の本、初めてよみました。
孤独って、良いものというか、私という存在があるためには子供が必要なんだ(!)と心にどんっときました。
私のような方、さみしさからは逃げなきゃいけないとおもっているかたは読まれたらいいかとおもいます。
考え方がかわります。
大切な本当です。
電子書籍
意外と万人向け
2015/11/07 09:43
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投稿者:黒井ノテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
・イマドキの若い人の考え方がわからない
・ステレオタイプに疑問を感じる
といった人におすすめ。
書かれているのは作者の「個人的な観察と思考」とのことですが、逆に胡散臭さが無くて良い。但し、ファン以外の方は、読む前に作者がどういう人物かは調べておいた方が良いです。
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孤独を極めていると言っても過言ではない森博嗣が孤独について論じたエッセイ。
そもそも「孤独」は悪いことなのか?という問題がありますが、そこはメディア批判に絡めて語られています。
「繋がる」ということに縛られすぎなのではないかということは、最近個人でも薄々疑問に思っていることだったので、ウンウン頷きながら読みました。(こうやって感想をSNSに書き込むのもまた…)
しっかり思考して、自分の美意識をもって孤独に生きることの楽しさを教えてくれます。
どこか先生のような、一見そっけないけれど実は暖かい若者へのまなざしが見え隠れしていました。
決して周りを拒絶しているのではなく、自己を見つめることで、愛する他者との関係もつくれるんだなと、身も蓋もないことばかり書かれているのに最後は暖かい気持ちになれました。
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孤独をテーマにした一冊。孤独と言うイメージは「暗い」と捉えられる人が多いかもしれないが、その思考の過程は色々な情報からの思い込みも。著者自らが、世間と隔離した様な生活を送りながら、実際に孤独と言う物がどうなのかと様々な視点から分析しています。
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最近ではミステリ作家とは言えなくなってきた感のある森博嗣氏が、「孤独」をキーワードに、現代社会に蔓延する虚構、思考停止状態のおかしな価値観を快刀乱麻を断つごとく明快に切り捨て、「孤独は人間にとって実に大切で、価値のある状態だ」とその必要性を説きます。ものを発想する、創作するためには、孤独が絶対に必要であり、翻って、孤独の対処として、短歌でも俳句でも現代詩でも何でもよいから創作に身を置くことを勧める。「苛めが起こる心理には、苛める側の「絆」がある。誰かを犠牲者にすることで、苛めっ子のグループは結束を確かめる」という言葉が心に刺さる。孤独を恐れる心から苛めは起きるのか?孤独必要論。「孤独」をキーワードにして、現代社会に蔓延る虚構、思考停止状態のおかしな価値観を快刀乱麻を断つごとく明快に切り捨てます。ものを発想する、創作するという作業には、「孤独」が絶対に必要であり、翻って、孤独の対処として、短歌でも俳句でも現代詩でも何でもよいから身を置くことを勧めています。胸の内にわだかまる思いをそういう形で吐露することにより、安らぎが得られるということでしょうか。
「苛めが起こる心理には、苛める側の「絆」がある。誰かを犠牲者にすることで、苛めっ子のグループは結束を確かめる」という言葉が心に残った。孤独を恐れることから苛めは起きるのだろうか・・・。
いつもは所々引っかかりながら読むことが多いのですが、今回の森氏の主張は腑に落ちましたww
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孤独との向き合い方、孤独と感じるメカニズムの解説に感心した。
身近な物を具体例に出し、著者の考え、物事の捉え方を紹介している。極端ではあるが感じていることをズバズバ言われているようで、裸にされた気分に陥る。
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たまに飲み込みにくいけど、久しぶりに心が動揺した。
一次会であっさりと帰ることができるのは、この虚構の楽しさよりも、自分の時間、自分の家、自分の家族など、現実の楽しさを持っている人である。
相手に何を知らせるのか、情報をどこまで共有するのか、ということを考えて選択することが、本当の優しさであり、綺麗な心だと僕は感じている。
無駄なものに価値を見出すことが、その本質であり、そこにこそ人間だけが到達できる精神がある。孤独が教えてくれるものとは、この価値なのだ。それは、まぎれもなく、貧しさとは正反対のものであり、豊かさの中でしか見つけられない。
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吉本隆明の『ひきこもれ』と基本的に主張は似ている。少し理性の力を信じ過ぎな気もするが、「普通」とか「リア充」といった単なる諸観念に本能的に振り回されがちな現代人にはバランスを取る意味で良い本だと思う。
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孤独は寂しい、寂しいのは悪いこと。という価値観にさせられるような環境にいるけど、孤独にも良いことあるよ、と教えてくれる本。
ただ、やっぱり著者だからこそ出来ることもあるだろうし、おまえらもがんばれよ的な感じにも受け取れる。
個人的には、著者の主張する孤独の価値は分かるような気がするし、そういう方向を目指していきたいと思う。
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自分の孤独について、あるいは、それの素晴らしさ、利点、などが書かれているが、やはり、筆者は、昔、そのようなことが原因となることがあったのではと思ってしまう。それでも、仕事をしたことがあるのであるから、筆者がねたみ、恨みを持ったことはないと思うが、
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半隠居ともいえる著者が孤独を考察するエッセイというよりは論文に近いかもです。
こんなこと考えているなんてヒマだなあと思いつつもそれを読んでいる自分もヒマ人です。
ただ、このようなニヒリズムは個人的に好きですね。
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基本的に1人でいることが苦痛ではないので、元々作者よりの考え方に寄っていると思う。
まぁ詩を書くことはないけど、自分の楽しいと思う事をやっていこうと思う。
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孤独、の概念から説く一冊。人間だから感情も含めて相対的なものだというところから始まるのだけど、きちんと理に叶っていてやっぱり森さんは理系だな。
商業的ないろいろに乗った孤独=悪を別の見方で説明。自分自身と子どもに当てはめても肯くことばかり。
単なる自己啓発マニュアルではない良書。
真理を突きすぎていると思うし、ぼんやり浮かぶ事柄がきちんと明文化されている。
思考停止せず、きちんと自分のやりたいことを突き詰めて考えることが必要だと痛感。
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孤独について。
孤独の意味。
孤独が私たちに与えてくれるもの。
孤独の価値。
著者の言う「孤独」はいいな、と思いました。
年末に読めてよかったです。