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オーストラリア西部の孤島、ヤヌス・ロックの灯台守のトムとその妻イザベルは、ある日漂着した小舟に男と女の赤ちゃんが乗っているのを見つける。
赤ちゃんは生きていたけれど、男は既に亡くなっていた。トムはこのことを報告しようとするが、イザベルはそれを押しとどめ、自分が赤ちゃんの母となって育てるとトムに告げる。赤ちゃんをルーシーと名付けた。
母親はその赤ちゃんを探しているかもしれない、誰にもこの事実を告げずに黙ってルーシーを育てていることに、トムは時に良心の呵責を感じる。
ルーシーが洗礼式を受けるときに、トムとイザベルはルーシーの実母がずっと夫と娘の行方を捜していることを知る。
そして、トムは2回にわたり、ルーシーの実母、ハナにルーシーが生きていることを伝えた手紙を送る。そして、トムとイザベルがルーシー、本当の名前はグレース、を育てていることを当局が知るところとなり、ルーシーはハナの元へと連れて行かれる。でも、ルーシーはハナには懐かず、イザベルとトムのところに帰りたいと泣き叫ぶ。
また、トムは全ては自分が決めたことと、イザベルをかばって逮捕される。
でも、トムもイザベルも許せないハナだったけれど、結局は彼女の口添えのおかげでトムは釈放され、イザベルも罪には問われずにすむ。
それから20数年が経過した最終章で、大人になった、ルーシー(グレース)がトムの前に現れる。
そんなストーリー。途中からは読むのを止められず、引き込まれて一気に最後まで読んだ。最後の方は涙。
イザベルの初めの決断は間違っていた。流産を3回くり返した後だとしても。そのイザベルの思いを結局は受け入れたトム。その時に、もう少し踏み込んで話し合っていたら、イザベルもトムも、そしてハナも、あそこまで苦しまずにすんだと思う。
また、トムの行動は理解出来ないわけではないし、いい人なのは分かるけれど、やってしまったことが中途半端だったと思う。
でも、人って、多分そういうものなだと思う。
その時、その時に、自分にとって「善」と思える行動をとる。
そこに、他者は不在となる。そして、それが時に悲しみや苦しみを生み出してしまう。
それでも、真摯に向き合っていくなら、前を向いて歩いていける。
そんなことを思いました。
それにしても感じるのは、戦争が引き起こす悲しみ。