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将来小説家になりたいと夢見る人はもちろんのこと、ただ単に小説が好きな人でさらにいうと新人賞受賞作はとりあえず読んでるって人は、ノウハウ的なの抜きにして楽しめると思う。事実読んでいて魅力が詰まりすぎていてでくらくらした。あの作家のデビュー前の選考秘話的なのもあり。とくに中原中也賞受賞した川上未映子さんのエピソードと、ペンネームのインパクトの山崎ナオコーラさん、さらに完成度が高すぎた故に優秀賞となった島本理生さん、村田沙耶香さんの箇所は強く印象に残った
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高橋ファンなので期待はしてたけど、それをはるかに超える読み応え。著者の経験を交えて小説新人賞の選考について書きつつ、広く「読む/書く」とはどういうことか、みたいなところにまで射程が伸びていく。愛情あふれる文芸批評だと思った。
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小説の新人賞という物がある。これは日本独自のもののようで、欧米では新人も出版社に直接作品を送るか、エージェントを雇うかするそうで、随分日本の方が門戸が開かれているようではある。
とはいえそれが狭き門であるのも確かで、毎年たくさんの新人候補が涙をのんでいることに変わりはない。
作家高橋源一郎が、新人文学賞の選考委員の目から、新人達をどのように迎えようとしているか、厳しくも温かいまなざしが見て取れる。
小説を書く。
そもそも一篇の小説を書き上げること自体が、遥か遠い夢のような、難しいものに感じる僕にとっては、どんな酷い小説であってもそれを書き上げただけで、既に選ばれた人なのではないかと思ってしまう。
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要約
1章まずは、新人文学賞選考会について知ろう
・新人文学賞は日本独自のシステム
・作家たちのギルドへの招待
・完成度より可能性を重視する
・新鮮さ独創性をてらうのならむしろジャンルを超えた新人賞に応募するのも意表を突ける
2章つづいて、選考委員について知ろう
・文学史の地図を片手に持って読んでいる人もいる
・名も無き怪物を求めて冒険に高い評価をつける
・幻の作品を読む人種
・読むことにフェアであるように
・「分からない」のススメ;選考会場で話し合う
3章いよいよ、新人作家の条件を考えよう
・「読む他者」を書き手自身の中に持つ;自分の中に「書く他者」「読む他者」両方必要。
・高度な恥じらい;「人間は皆自分のことしか考えていない」など、金言やアフォリズム、分かっているのに普段口に出して言わないことをわざわざ書く。書く方だって本当は恥ずかしい。わざわざ言うまでも無い無粋なことを敢えて書く恥じらいをもって、小説が面白くなる。恥じらいをふくんで敢えて書く。いい小説は少し過剰。少し言い過ぎる。それをのびのび発揮できるのがデビュー作です。限界を超えて自分を解放して良いのです。
・ただしい暴走「小説という概念を拡張しようとする無謀な挑戦」として何にも臆せず誰の顔色も伺わず、妙な目配せなんか覚えなくていい。どうしようもなく作ってしまう、という情熱によって「暴走」を何度か繰り返して漸く形になっていく。それで良い。
・ブレイクスルーする;暴走を何度か繰り返してただしい暴走にたどり着けたとき、訪れる。これを迎えていないと作家になるのは難しい。でも完成度が高ければあるいは後からこれがついてくる。
・「生きているうちに、見つけてくれて、ありがとう」
4章2000年以降、全選評;ここが大変参考になるが、書の約半分を割いており、字が細かいのでボリュームがある。「評価する他者」の視線をつぶさに感じられる。
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基礎の基礎は修了し、ブレイクスルーの壁を前にしている人向けと感じた。小説、とは何かを考える一助になるだろう。しかし肝心のブレイクスルー、正しい暴走、言い換えれば作家独自の確固たる個性の確立(固定観念から脱却し思考を自由に保ちながら、文章日本語としての法則を自分のものにできている状態)へ具体的にどうやって到達するかは、当然書かれていない。まあ当たり前だけど。小手先じゃ無くて本質で勝負してよ、が新人賞の特徴なのかなと思った。
選考委員の厳しくて暖かいまなざしを知ることが出来る一冊。
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日本の作家の新人賞の制度は欧米にはないようです。欧米では直接出版社に作品を送って読んでもらうか、作家が所属するエージェントをとおして出版社と交渉するとか。出版社からの不採用通知ばかりを集めた本があるようなので読んでみたいです。書かれたものと書かれるはずだったもの。選考委員は書かれるはずだったものの痕跡を探す仕事をしている。小説という世界を拡張しようともがいていた跡を探している。それは同業者の小説家には見付けられるもののようです。
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・選考委員や編集者はこれまでの小説とは違う新しい小説を読みたい。だから応募する新人賞は、究極的にはどれでもいい。現実的には、あなたの触手が動いたものでいい。ただし次の2点に気をつける。1つは、流行を追わず、自分のテーマを追う。流行を追うのは、流行から自由ではない。2つは、賞の傾向が見えたら、真逆に突っ走るくらい反抗する。賞の傾向に寄せるのは、傾向から自由でない。
・現代の小説は、小説の歴史、小説の地図から自由になった。小説には守るべきものがない。
・新人文学賞で選考委員が読んでいるのは、作者が書いたものではなく、作者が書きたかったもの。あるいは、書かれるはずであったもの、これから書かれるものを読んでいる。
・わからなくていい。わからなくても、面白いのがいい。わかるものばかり摂取している人が書く小説は、わかりやすくて楽な小説になる。小説は詠めなくていい、わからなくていい。選考委員は、わからないものについて延々議論するから。
・ブレイクスルーのは、暴走できた時。正しい暴走ができると、ブレイクスルーする。
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具体的な方法論と言うより、「最終選考まで残った作品のどこを選考委員はみているのか」という話。
この中では、特に自分の作品を読者としてみる目の大切さは「確かに…」と思いました。自作小説の他にPBWのゲームマスターもしているおかげで、その種の客観性は身についてきたように感じています。
しかし、一番悩ましいのは、「暗い情熱」どころか怨念のこもった小説を今必死で書いているのですが、オリジナルではなく二次創作なので、文学賞に応募できないということなのですよね…。それでもどうしても書き上げたいという衝動の強さに引きずられて頑張っているのですが(とほほ…)。
とにかく、書き上げてしまわないと安心して死ねません。既に10万字オーバーで、これが文学賞に応募できたらなぁ…と涙ながらに書いています。
デビューできたところで後が続くとは限らないのがこの世界の厳しいところですが。
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文学賞からのアプローチで,新人賞に応募する際の小説の書き方(書くことに対するイメージ)と高橋源一郎の文学賞選評をまとめている.各文学賞についてや,小説を書くことについて完全に無知な僕には非常に興味深かったし,小説を読む上で違う目線で読む面白さに気づくことができた.「小説になりうるには何かが足りない」といった曖昧な選評が多く(これはしょうがないことだし,作者が考えるべきことだと思う),シビアな世界だと改めて感じた..
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なぜこの本を手に取ったのか。小説になりたいのか。確かに、表現する側になれればいいなあと思う。でも、強くなりたいと思っているわけじゃない。あるいは、そんなふうに思い込もうとしているのかもしれない。
「書く他者」と「読む他者」を育てる。書くことにつきまとう、恥じらいを意識する。「ただしい暴走」をする。
まだ、これらの言葉に「なるほど」と頷けるほどの人間ではない。でもいつか役に立つ日が来たらいいなあ。
最近、読めば読むほど、「わからない」ものが増えてきて、もどかしさがあった。
数々の新人文学賞の審査委員を務めていらっしゃる、著者である高橋源一郎氏は、片手には「地図」を持っているという。
地図。そうか。私は地図がほしかったのか。
歴史と地理がマッピングされた、文学史の地図。だから文学を学び、日々私の頭の中の地図に書き込んでる。
わからないことに悩むなんて、なんて傲慢やったんや。わからないのは当たり前。わからなくても考えることが大事。
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あまり書き手の自由を奪うこと無く書くことをそそのかしつつそう言いつつも実際の選考ではどうなのかをも併録してあり、この人が選考している文学賞の雰囲気を知るのにはいいかもしれない。戸惑うかもしれないけれど、本来、書くことはそういうところからだと思う。
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著者の新人賞を楽しみにしている姿勢が伝わって大変よかった。
小説を通史的に知っている人なので批評は一々的確。
楽しく読んだし、小説を書こうと思ったらまずは著者のその手の本は全部読むべきだと思う。
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琉球大学附属図書館OPAC
http://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB18471992
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本書を読んで良かったと思うと同時に、私は一生作家にはなれないとわかってしまいました。
小説は、常に「新しい人」、「新しい作品」を探しています。ですが、私の作品はどこかで聞いたことがあったり、読んだことのある話ばかりです。そういった作品は、どれだけ文章が上手くても、オリジナリティ、ぶっ飛んでいる部分がないと、ただの真似事になってしまう。
最近、ちょうど自分の才能の無さを痛感していたので、作家になる夢を諦めるいい機会になったと思います。ただ、どれだけ平凡でも、物語を作る楽しさはわかったので、ぼちぼち趣味でネットにUPしてゆるく楽しもうと思います