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第36回すばる文学賞受賞作である本書、内容は不動産会社へ勤める主人公が、売れない営業マンからある切っ掛けで売れるようになり、しかし本来の仕事の意義は何なのか。これは物語であるが、不動産会社のブラックさは群を抜いていると言う印象。実際にこのような会社が有るかは不明ですが、もしかしてと思わせるストーリーも読み手を引き込む一つではないでしょうか。テンポよく書かれている内容は良いのですが、完結が今一つしっくりこない形で締めくくってある辺りが、少し消化不良な気分になります。その先がどうなのかと読み手に想像させる形です。
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前半のブラック企業部分の真に迫る感じ、作者の実体験か何かが反映されているとしか思えない。
しかし家が売れてからの後半の方がむしろ主人公が人間性を喪失して虚しさが増していく。不動産業界は闇。
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初読みの作家さん。
1営業マン密着のドキュメンタリーを見ているようで、小説を読んでいるという感じがしなかった。不動産の営業は本当にきついと聞くので、半フィクションなのかもしれない。読んでいて心臓が縮みあがった。半分以上読んでからようやく明るい兆しが見えてきて心底ほっとしたのだが…引き換えに人間性が…。
最後の1行、これってどういう意味だ?怖すぎる。
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不動産仲介の世界に入り、業界を知るためにこの本を手に取った。書いてある内容は非常にリアルで厳しいが、感情移入してしまいあっという間に読んでしまった。
最初は不動産を売ることができず、罵倒されて日々悩む営業マンの苦悩の日々、後半はある先輩に出会い主人公が変わっていく姿が描かれる。業界用語にも詳しくなると思います。
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(01)
家族とその象徴である家の話でもある.その家を商品として売るための手筈についての物語が本書である.そこで売られようとしているのは,近代的な家族像でもあった.
興味深いのは,ここで買い手側として登場する家族は,現代的で近代的な家族ではないし,売り手側の主人公の両親兄弟といった家族も見えてこない.どうも売り手側の不動産の営業マンの多くが家族を喪失しているようでもある.
家を売るものが家にあるべき生活(*02)を失っているというテーマも読み取ることができるかもしれないし,主人公の恋愛の渇きにもその傾向がみられる.
(02)
ここに問い直されるべきは,家で営まれるべき家族の生活のほうである.近現代の核家族が既に幻覚であって,本書はそこから醒めている.醒めることで売ること(殺すこと)ができるのであり,狭小をネガとして邸宅をポジとして営まれるべき家族を求めてさまよう購入希望者たちは,やはり幻覚に苛まれているのだろうと感じさせる.
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むかし、友達のコンサートのために降りた駅前で、何の気なしに不動産のサンドイッチマンからチラシを貰ったら、ものすごい勢いで追い縋られたのを思い出した。
家なんて一生に一回の買い物だけど、ちょっとした小技や営業のトークなので判断力を失わせて、あっという間に買わせる、お客にとっても不幸だけれど、それを商売にしている人にとっても、なかなか辛く厳しい業界なのだなと思った。
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新卒で不動産会社に就職した『松尾』。まったく物件が売れないことから、上司からパワハラを受け、それでも何となく営業を続ける日々。異動先でも退職を促されながら、何とか不人気の狭小住宅を売ることができた。その日を境に、上司からの手ほどきもあり不動産営業にどっぷりと浸かる。
一方で大切なものを失い、言いようのない不安に駆られながら、今日も車を走らせる。
とにかくのっけからパワハラの描写がひどくて、読んでいるこちらまで心臓がドキドキする。不動産営業は売ってなんぼ。「殺してこい!」。物件を売ることをそう呼び、押して引いてのテクニックでお客をその気にさせる。『松尾』がどんどん不安定になっていく状況は、もう見ていられません。ああ、こういう仕事、わたしには無理だ。強靭なメンタルが必要だ。
なんでこの作品を読んだかというと、日大のアメフト問題だったかでどなたかのブログで紹介されていたからなのですが、こういった特殊な環境で追い込まれると、人間、変わってしまうものですね。その本人には為す術がありませんから、周囲がきちんとケアしていかなければいけませんね。
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ストーリー
学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった…。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。第36回すばる文学賞受賞作。
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前半は読むのを止めたいくらいの暴力の場面。
不動産会社の営業マンってこんななの?それとも小説だから誇張してるのか?
とにかくこんな会社イヤだ、早く辞めちゃえばいいのにとの思いでかろうじて読む。
少し家が売れるようになってからは、主人公がこういう営業マンとしての在り方を管理職として改革してくれないかなとずっと思ってた。そういう小説だったらいいなと。
でもなんだかだんだん染まっていくような感じがしだし、最後はなんだかよくわからない終わり方。
楽しいお仕事小説ではなかった。
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ただノルマを達成することだけにコミットして結果を出さない奴には人権がない。営業の世界は数字が出てきてしまうからそうなるのだろう。ただ、主人公が営業成績を上げていく過程では気合やコミュ力だけでなく道を覚えることや客の落とし方など面白いと思える部分もあった。
最後は結果を出すことにコミットした主人公が蔑まれる場面があるがその気持ちは結果を出す人にしか分からない。戦う舞台に立ち続けなければ見えない景色がある。それを見てからでないと戦う舞台からは降りられそうにないだろう。
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タイトルから不動産に特筆しているのかなと期待したが、それよりは現代人の労働に対する意識に重点を置いている印象の作品。
主人公が勤める企業はとにかくブラック。それにも関わらず、主人公は退職という選択肢を選ぼうとしない。何かにしがみつくように働き続ける姿からは狂気が感じられ、理解の範疇を超えた気味の悪さを感じた。
筆者のデビュー作ということも関係しているのか、結論がはっきりとしないぼんやり感のあるクライマックスで少し不満に思った。もっと分かりやすいメッセージを残してくれたらよかったのにな。
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2019/02/03
しょっぱなから手に嫌な汗をかくブラック企業描写。
仲介販売会社をモデルにした。
よく調査されたないよう。
とてもおもしろかった。
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主人公は元エリートといえる経歴ながら、レールを外れ不動産屋となる。どうしようもなくブラックで卑しい仕事に身が入らないが、土壇場で、とある成功体験からどんどん興奮状態になる。しかし仕事へのどこか覚めた態度は目先の成功を積み上げても払しょくできず、結局は「ここではないどこか」の周りをぐるぐる回っているようにも見える。
レールを外れても別のレールに乗っかっているだけで、本質が変わらないことへの不安を暗示するラストかなと思った。
あと、不動産屋の営業のしかたがちょっとわかった気になれる。
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営業って何だろう。人は何のために働くのだろう。
身を削って不動産営業に励む主人公。
幸せって何だろう。
やりたい仕事に出会えることか、
お金がたくさんあることか、
大切や友人や家族がいることか。
働くことを通して、幸せについて考えさせられた。
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映画関係の仕事に就きたかった
OB訪問やボランティアも経験したが、新卒で採用されることはなかった。
大学を卒業して、アルバイトとして業界に潜り込んだ。
楽しかったけれど、働いていた先輩たちは疲弊していた。
好きなことを仕事にしても、時間もなければお金もない。
そうか、自分が金持ちになって映画関連の仕事を始めればいいんだ。
知恵のない僕がない知恵を絞って考えた真理だった。
そして僕は学のない人間が稼ぐ最後の砦の1つ、不動産屋の扉を開けた。
この小説は、僕が建売を売っていた時代の話だ。